第187話『自由時間』
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俺達は今日の戦いの傷を癒すため、ここで夜を過ごす事になった。
先ほど、皆で楽しい楽しい夕飯と入浴を各々済ませ、後は自由時間となり、それぞれの部屋へ散っていった。
さっきまで、ここは狭い基地なのかと勘違いしていたが、実は食堂や風呂、大会議室もあって、個人部屋は10部屋もある。さすがに魔王城程では無くとも、充分な広さだ。隠し部屋ってレベルじゃねえぞ!
『……うーん、暇だな』
さっきも言ったが、今は自由時間となっている。といっても特にやることはない。魔王城みたいに娯楽施設でもあれば、そこで暇を潰せたかもしれないが、どちらにせよ今はそんな気分じゃない。これからどうするかを考える為にも、今起きている状況を、ベッドに上で横たわりながら、頭の中で整理することにした。
まず、今現在、助ける事ができたメンバーは、ブロンズちゃん、ゴールドちゃん、アミさん、みどりちゃんの4人。
まだ助けてないのは、シルバーちゃん、アリスの2人。ルキウスの話しによると、どうやらこの2人は地下牢には送られず、なぜか王妃ネヴィアに指名され、王妃の部屋に居るらしい。その理由はルキウスにも誰にも分からないようだ。
次に、俺らが正義教団の国に潜入する前に、襲撃した2人についてだ。その内の1人は、あいつだ。なんで先に国を襲撃したかは定かではないが、今はこの国にはおらず、どこかへ消え去ったそうだ。目的は不明だが、少なくとも俺達の邪魔をする気は無さそうだ。
そして、もう1人は魔王だ。神様から待機するように言われたにも関わらず、傷だらけのまま、襲撃した大馬鹿野郎だ。
ルキウスから聞いた話だと、魔王は、城へ襲撃して大暴れしたところを、幹部3人がかりで取り押さえられて、2時間前に、地下牢に収監されたようだ。
早くまーちゃんを救いたいというゴールドちゃんとブロンズちゃんの願いと、魔王は幹部1人にも劣らない実力を持ち、確実に即戦力になるというアミさんの意見を聞き、ルキウスも、そういうことなら……と納得し、今すぐ助けに行くことにした。
でも、どうやって助けるのかと頭を悩ませることになるかと思ったが、看守長であるガラードの手助けがあれば、かなりスムーズに助け出せるということで、1時間前に、ガラードは地下牢に戻り、看守長としての責務をこなしつつ、魔王を助けに来たもう1人を、こっそり手助けをした。
そのもう1人とは、通信魔法が使えて尚且、魔王を身体に乗せられる程の身体を持っていて、更に速く動けるというのに、影が薄い残念な猪……そう、皆のアイドルみどりちゃんだ。
30分前に、作戦通り、みどりちゃんは、ガラードの協力もあって、誰にも見つからずに、魔王を乗せて無事にここまで帰って来た。ガラードはというと、今はまだ自身の裏切りが悟られないように、そのまま看守室に残ることにしたそうだ。
みどりちゃん、ガラードさん、本当にありがとう! ゴールドちゃんも、ブロンズちゃんも、魔王の姿を見て、泣いて感謝をしていたな。
次に、俺達の後に、襲撃してきたフランと女神達一行は、今どうしてるかは分からない。ルキウスの話だと、偶然、騎士達が何回か目撃したらしいのだが、どれも捕まえようとすると決まって霧に紛れて消えていったそうだ。もしかすると、ゴールドちゃん達を助け出す為に、身を隠しつつ、そこら中を無駄に回っているのかもしれない。俺達と違って情報が無いからな。
俺にとっては、フラン達は、アクタ側の人間……つまり敵だ。たとえ利害が一致してようと、協力できるわけがない。なので、フラン達がここに来ている事は、ゴールドちゃん達には話していない。話すと合流したいと言われる可能性があるからな。そうなると、俺はゴールドちゃん達とは別行動を取らざるを得なくなる。出来れば離れたくない。
最後に、正義教団の情勢についてだ。
まず今日の戦闘により負傷し、謎の光に飲み込まれたのは、ガウェイン、トリスタン、葛木 (突然消えたので、おそらく)の3人だ。
トリスタンと葛木が倒れたのは、知っているので分かるが、ガウェインは、どうやら私怨を持った魔王に、集中狙いされ、こっぴどくやられたそうだ。ざまあみろ。俺はお前がブロンズちゃん達に何をしたかを知っている! もし次、俺と会ったら、もっと痛めつけてやる。ガハハハ!
……はい以上。今日の出来事でしたと。
『……』
まだ全然眠れそうにないし、少し部屋の外に出てみようかな。
といっても、もちろんガチの外ではなく、建物内の範囲しか動けないけどな。
……あ、そうだ。良いこと考えた。
よし、まずは――――。
俺は、ブロンズちゃんの部屋のドアを、コンコンとノックする。
『はーい』
ドアの向こうで、可愛い声と共に、可愛い足音が近づいてくる。
『誰……って、なんだお兄ちゃんか』
銅色の美しい髪の匂いに、鼻腔と心をくすぐられながら、俺はブロンズちゃんに釘付けになる。
『え、何どうしたの? ただでさえ気持ち悪かったのに、今のお兄ちゃんは、これまでに無いくらい気持ち悪いわよ?』
容赦のないディス。だけど、それは俺への愛情の裏返しだって知ってるよ☆
その時――。
事件が発生する――。
『うっ……!』
ブロンズちゃんは、突然口を押さえて、苦しみだした。
『え? どうしたの? ブロンズちゃん!?』
おいおい……嘘だろ……なんだこの展開は……!?
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次回は、16日(金)に投稿予定です。
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