第185話『隠し部屋』
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『あんたは……ルキウス!?』
あまりにも自然に、まるで自分の家のように普通に入ってきたので、ここの大家か何かかと一瞬思ってしまった。しかも、やたら可愛いエプロンを着て、おかゆが入った鍋を持って来ているので尚更だ。
『やっと目が覚めたようだな』
俺は敵襲だと思い、身構えて、魔法を放つ準備をする。勝ち目があるかよりも、ブロンズちゃん達をどうやって逃がすかを優先に考えた。
『なぜあんたがここにいる……?』
『そうだな、順を追って説明しよう。だがその前に、腹減ってないか?』
『え?』
空腹を自覚させるかのように、タイミングよく、グゥゥゥゥ~という、なんとも情けない音が、俺の腹から豪快に鳴った。
『あ……』
真面目な場面なのに、なんてタイミングで腹鳴ってんだよ……いつぞやの魔王と同じ過ちを犯してしまったよ……。
『とりあえず、これでも食べてくれ』
ルキウスが、俺におかゆを差し出した。匂いだけで、胃袋が飢餓状態の獣のように唸り始める。
ルキウスは敵のはずだが、敵だとしても、そんな事をする奴には見えないが、念のために慧眼魔法でおかゆを見てみると、特に毒が入ってるわけでもなく、しかも栄養満点! という文字と、その横に親指を立てたグッドマークと、笑顔マークまで出ていた。ちょっと待て、そんなSNSみたいな機能あったのか。
『あ……じゃあ頂きます』
俺は、ルキウスの厚意に甘え、おかゆを頂くことにした。
『美味い!』
『そうか。それは良かった』
いや本当にめちゃくちゃ美味い。ゴールドちゃん達の料理も美味いけど、ルキウスのも相当レベルが高い。
やべえ! めちゃくちゃ箸が進む! 持ってるのはスプーンだけど。
俺は、あまりの美味さに、大食い選手の如く、おかゆを平らげ、膨らんだ腹に手を当てた。
『ごちそうさまでした!』
『食欲はあるようで、安心した』
まさかイケメンってだけじゃなくて、料理まで美味いとは……なにそれ、違う意味でも勝ち目ないじゃん。
『うん、自分の立場を理解してて偉いわ♪』
ブロンズちゃんは、いつの間に泣き止んだと思ったら、満面の笑みで、俺の繊細なガラスのハートに止めを刺してきた。
今度は、俺が泣いていいか?
『どうしたんだ? ダスト? 具合でも悪いのか?』
『いや……大丈夫だ。心の傷が深くついただけだから』
『それは大丈夫じゃないんじゃ……?』
『大丈夫です!』
『だが……』
『ホントにホントに大丈夫です! てか、それよりも、大事な話をしようよ! 今のこの状況について!』
俺がそう言うと、わちゃわちゃした空気が、シリアスな方へと一変し、この場にいる全員、真面目な顔つきに変わった。ゴールドちゃんだけは、まだ許せないのか、俺を睨み続けているけど……。
『分かった話そう。実は――』
ルキウスの話によると、ここはどうやら、誰かが作った地下牢にある隠し部屋で、ある日、ルキウスとガラードが、地下牢の見回りに出ているところを、たまたまホントに偶然見つけたそうだ。なぜこんな地下牢があるかは不明。当時、ルキウスとガラードが隈無く調べ尽くしたが、何も手がかりがなかったようだ。
最初は、ペンドラゴン王に、この隠し部屋の事を報告しようと思ったが、元々、正義教団の異常性に、疑問を抱いていたルキウスは、ここを同志達の秘密の集いにしようと提案し、今も他の誰かにバレる事なく、こうして残っているというわけだ。
次に、なぜ俺達がここにいるかだが、俺が体調不良で倒れた時、ブロンズちゃん達が、これからどうしようかと話し合っていたところで、想定外のタフさだったルキウスが早くも起き上がり、また戦うのかと思いきや、ルキウスは、俺達の強さを肌で味わった事で、何か可能性を感じたようで、ガラードを担ぎながら、ブロンズちゃん達を、この隠し部屋まで案内したようだ。ちなみに、最初に倒された29人の部下達は、ルキウス達がいなくなった後に医療チームに丁寧に運ばせたらしい。
『ちなみにお前達の事は、戦闘中に逃げられたと報告し、俺は奴らを隅から隅まで追うと言ってある』
『なるほど……つまり、アンタは……ルキウスは、正義教団のやり方に疑問を持っていて、隠れレジスタンス的な立ち位置にいて、今、俺達を味方につけて、この国を変えようとしている……という解釈であってるか?』
『ああ、概ね合っている。ダストは要領が良いのだな』
『え……そうか?』
『そうだ。これだけの情報量を、わずかな時間の間で噛み砕いて解釈できるなんて、なかなかできることではない』
ルキウスがそう俺を褒めると、なぜかブロンズちゃんが、うんうんと、得意気に頷いた。ブロンズちゃんも、そう思ってくれていたということかな?
それに、こんな風に褒められたなんて生まれて初めてかもしれない。なんか俺の存在が認められた感じがして、とても良い気分だ。
『お、おう。なんかありがとな』
このまま良い気分に浸りたいところだが、まだまだ聞きたい事がある。
『なあ、あと聞きたいんだが、ルキウスの他には、同じ意志を持った奴はいるのか?』
『俺の他には4人いる。その内の1人はガラードだ。お前達が倒した看守長だ』
あいつも味方だったのか……。まあ煽られるとキレるだけで、悪い奴では無さそうなのは分かる。
『2人目は?』
『2人目はエレックという元騎士だ。元々あまり素行のよい奴ではなく、入隊後も問題ばかり起こした問題児だったが、誰よりも芯が強く、こんな国でも自分の意志は決して曲げなかった』
『ほう』
『3人目はガレスという、元見習いの女騎士だ。方向音痴な所もあったが、それ以外は、何事も器用にこなせる有能な奴だった』
『ほうほう』
『最後の4人目はレッドという、こいつも元見習いの騎士だ。戦闘面では申し分ないが、性格に難があってな……』
『ほうほうほう』
これだけ聞くと、なかなか個性的なメンツっぽいな。
『その3人って今、どこにいる?』
『今、レッドはどこかに行ってるが、エレックとガレスは、300年以上前に、この国から出ていってしまったんだ』
『ほうほうほうほ……って300年前!?』
『ああ、300年前だが?』
『いやいやいや、300年前って……』
『? 何をそんなに驚いているんだ?』
『いやだって、普通の人間は、300年なんて生きられないだろ?』
よくよく考えると、俺、300歳越えてるがな。
『何を言っているんだ?』
『え?』
『普通なら300年どころか500年は生きれるぞ?』
『……は?』
なんだそれ……普通じゃない……なんて言葉は使いたくはないが、それ以外の言葉が出てこない。
だからと言って、ルキウスが、こんな時に嘘をつく人間にも見えない。だからこそ本当の事であり、至って常識的な事を言ったつもりなのだろう。
まあ、ぼっちの俺には、誰かと、まともに会話したことなんてほとんどないから、嘘をつく人間の特徴なんて本当は分かりゃしないけどな。
じゃあ何で、ルキウスが嘘をついていないって、分かったかって? ほら、よく言うだろ? これがニュータイ(ry
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次回は、10日(土)か11日(日)に投稿予定です。
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