第184話『心の傷跡』
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ゴールドちゃん、アミさん、マーリンによって、なんとか強敵ルキウスを倒した。
本来なら、みんなでハイタッチしたり、この戦いのMVPを胴上げしたりと、限りない喜びを表現するはずだったが、それは自分の流儀に反しないやり方で勝つことと、皆が無事であることが前提だ。
今回の戦いでは、そのいずれも当てはまっていない。
勝って生き延びる為とはいえ、卑劣な手を使って、一方的に攻撃をしてしまい、そのいじめのような光景に、俺は、昔のトラウマを思い出してしまい、そのせいで、自律神経は激しく乱れてしまい、頭痛や吐き気と、まるで風邪でも引いたのかと思うくらいの体調不良となってしまった。
そんな俺は今、ブロンズちゃんの膝を枕に横になっている。
美少女の膝枕最高! ……なんて思っていられる程の精神的余裕もない。
俺の頭の中には、あの時の記憶が、映画館の大きいスクリーンで絶賛公開中なのだ。
――短編映画「俺の中学時代」――
あれは、俺が中学生の時の事だ。
俺はクラスメートの不良グループの奴らに、いじめのターゲットにされていた。
毎日、学校に来ては殴られ、机はひっくり返され、ロッカーの中はゴミだらけになっていた等、絵に描いたようないじめを受けていた。
もちろん、他のクラスメートは見て見ぬフリをしている。
いやいや、なんで見て見ぬフリなんかするんだよ! 助けてやれよ! と思う者もいるかもしれないが、不良グループの連中は、全員、とにかく腕っぷしが強い。そんな奴らに目をつけられれば、容赦のない暴力が待っているだけでは済まない。その後も、その時の俺のように、いじめを受け続ける事になる。
平和な学園生活を送りたい者が、偶然同じ空間に居ただけの俺なんかの為に、地獄の学校生活を送りたいと思うだろうか。正義感が強すぎる奴か、よほどの狂人でもない限り、思うわけがない。
なので、大抵の人間は、悪いなと思いつつ、見て見ぬフリをするのだ。そこに正義も悪もない。ただの一個人の判断に過ぎないのだ。
まあ、俺は元々他人に期待しないタイプだから、俺を助けてくれる英雄なんて居ないだろうと思っていたがな。
『おい、■■。今日もお前の机を掃除してやったぜ。感謝しろよ。はははははは!』
『……』
何が掃除だよカスが。
『あ? 何か言いたそうだな? 文句でもあるのか?』
めちゃくちゃあるよ。でも――。
『な、なんでも……な、ないよ』
言えなかった。だって文句なんか言ったら、もっととんでもない事をされそうで怖かった。
我ながらなんて情けない……。
『へっ、文句がないなら、また明日以降も掃除していいよな?』
『……う、うん』
良いわけあるかよ。ふざけんな。
『ははっ、今こいついじめても良いって言ったよな!! おいてめえら! 今からこいつフルボッコにしてやろうぜ』
『え……そこまで……言ってな――うっ!』
俺は、そいつに腹を殴られ、気を失った。
その後、1人の教師がたまたまそのタイミングで、教室を覗いていたので、何をしているのかと言われたが、突然、具合が悪いって言うんで、保健室連れていくわと、まるで自分達が善人のように振る舞った。そいつが、そう言うと、教師は、まんまとその嘘に騙され、そいつらを褒め出した。
そうして、そいつらが俺を抱えて、着いた場所は、当然、保健室なんかではなく、今の時間 (朝のHRが始まる前)なら、ほとんど誰も来なさそうな寂れた体育倉庫だった。しかも扉も壊れているため、強い力さえあれば、鍵なしでも簡単に入れてしまう状態である。
そして、そのあと何をされたかは話したくもない。これまでにないくらい酷い目に遭ったとだけ言っておく。
今回の事で、さすがに我慢の限界を感じた俺は、あいつらの目を盗み、こっそりと職員室に行き、今までの事を担任の教師に告発してみたのだが……。
『は? お前ら、ただ遊んでるだけだろ?』
『違いますよ! 俺いじめられてるんですよ!』
そう訴えても、教師の表情は変わらず、それどころか、とんでもない事を言い出した。
『はぁ……お前さぁ……被害妄想もいい加減にしろよ』
『は? 被害妄想……?』
そう言われた瞬間、俺の中の怒りと悲しみがぐちゃぐちゃに混ざり合い、何かが壊れた音がした。
『ああそうだ。被害妄想だ』
『ち、違――』
その教師は、話の途中にも関わらず、突然立ち上がり、俺の耳元で教師として最低最悪な事を耳打ちした。
『あんまり職員室で、いじめいじめ言うなよ。俺の評価が下がるだろ?』
『は……?』
理解ができなかった。
評価?
生徒の事よりも、自分の評価が心配ってか。
なんだそれ。
じゃあ何か? お前なんかの評価を守るために、俺は毎日我慢して、いじめられなくちゃいけないのか?
ふざけんなよ。
『……もういい』
俺がそう言い捨てて、立ち去ろうとすると、そのクズ教師は、俺の肩を掴んでこう言った。
『おい■■、何だその態度は? 俺はな、わざわざお前の為に、時間割いてやってるんだぞ? せめて敬語は使えよ』
誰がてめえなんかに敬語なんて使うかよ。
『何でだよ?』
俺はクズ教師を睨み付けた。すると、クズ教師は激昂し、俺の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。
『俺は先生だぞ? 俺の方が偉いんだぞ!! それなのに何だその態度は! ああ?』
こうなると、さすがに職員室はざわざわし始め、他の教師達が、止めに入った――。
……いやもうダメだ。
これ以上は思い出したくない……。
痛い――。
辛い――。
助けて――。
あれ? 他人に期待しないタイプのはずが、いつの間に助けてと言うようになったのは……いつの事だっけな……?
――――――。
――――――。
――――――。
目を開けると、そこには、またしても見知らぬ天井があった。
ん? あれ? ここは……? 何で俺、ベッドの上に居るんだ?
『お兄ちゃん! 目が覚めたのね!』
『ブロンズちゃん……』
そうか、俺、体調悪くなって、いつの間に寝てしまったのか……。
でも、それで何で、こんな地下にある秘密基地感ある絶妙に狭い部屋にいるんだ?
『ん?』
ブロンズちゃんは、今にも泣きそうになりながら、俺を見ている。
『どうしたの?』
『だって……だって……私、ずっとお兄ちゃんの心読んでたの……』
『どういうこと?』
『お兄ちゃんが、その……いじめられていた時の事を思い出してたよね……』
『うん』
『その時のお兄ちゃんの心がね……泣いていて……痛いって……辛いって……』
『ブロンズちゃん……』
そっか……ブロンズちゃんは、俺の過去を見て、一緒に悲しんでくれているんだね。本当に可愛くて優しい娘なんだよな。ブロンズちゃん、ありがとうな。君の存在が愛おしいよ。
俺がそう思ったからなのか、ブロンズちゃんは涙を抑えきれなくなり、ポタポタと流れるようになっていき、ついには子供のように号泣してしまった。
『う、うわあああああああああああん!!!!!』
『え? ちょ、ブロンズちゃん!?』
俺はブロンズちゃんに、泣かないで、と言おうとする前に、ドアがバンッ!!! と勢いよく開いた。
今度は何だと思ったら、闇のオーラのようなものを纏った、鬼の形相をしたゴールドちゃんが入ってきたのだ。
『ゴールドちゃん!?』
ゴールドちゃんは、溢れんばかりの殺意を俺に向けて、こう言った。
『おい、ダスト……アタシ言ったよな……? 次、ブロンズを泣かしたら、またぶん殴ってやるって……』
『ちょ、ちょっと待て! 俺がブロンズちゃんを泣かしたわけじゃないぞ!』
まあ、実質、俺が泣かしたようなものだけど。
『じゃあ、何でブロンズは泣いてるんだ……? この部屋にはブロンズとダストしかいないよな……? だったら、ダスト以外に誰が泣かしたって言うんだ……?』
『いや、そうじゃなくてだな……ブロンズちゃんからも何か言ってよ!』
そう声をかけても、号泣したまま反応してくれなかった。
『やっぱ、ダストしかいねえよな……覚悟は出来てるんだろうな……!』
ゴールドちゃんは、そう言って、ハンマーを構えた。
くそっ、これだから脳筋は……!
『誰が脳筋だああああああ!!』
心読まれてるーーー!?
やべぇ……こりゃ殴られるじゃ済まねえ!
『ひ、ひええええええええ!』
俺はベッドから降りて、なんとか逃げだそうとするも、ドアは1つしかなく、そのドアも、ゴールドちゃんによって塞がれているので、逃げ出せない。
あぁ……もはや今の俺は袋のネズミ……万事休すか……!
『覚悟し――』
『待てゴールド』
ハンマーが、俺の脳天に直撃する寸前で、意外な人物が入ってきた。
『あ、あんたは……!?』
第184話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、8日(木)に投稿予定ですが、場合によっては9日(金)になるかもしれません。
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