第178話『大切なもの』
お待たせしました。
第178話の執筆が完了しました。
ギリギリですみません。
宜しくお願い致します。
それから俺達は、地下牢の内装に見飽きながら、ひたすらに歩き続けると、ついにアミさんの牢にたどり着き、さっきと同様の手口で鍵を開け、再会を喜んだ。
『ダスト君も助けに来てくれてありがとう! 大変だったろう?』
『い、いえ……』
『あれ? どうしたの? ダスト君?』
『な、なんでもないです!』
『?』
『それより早く行きましょう! 時間が無いですからね!』
危ない危ない……。記憶上の話とはいえ、この世界とは何も関係ないし、そもそも俺の話でもない。それに……覚えてるはずも無いだろう。
『そうだね、あと5分だ……急ごう!』
次に、みどりちゃんの牢までたどり着いた。しかし……。
『あれ?』
その牢の中にみどりちゃんはおらず、代わりに大変色艶の良い緑色の髪が特徴の巨乳美女が全裸で地面に横たわっていた。
『え……? 誰? みどりちゃんは?』
ここにはみどりちゃんなんて居ない、何かの間違いじゃないか? とそう思ったのだが、ゴールドちゃんとブロンズちゃんの反応を見ると、そうでもないらしい。
『みどりちゃん!』
『みどり!』
2人には、みどりちゃんが居るように見えているのか、みどりちゃんを呼び続けている。
『みどりちゃん……とりあえず無事で良かった……』
アミさんまで、汗のように涙を流している。
『えっと……みどりちゃん居なくない?』
俺がそう言うと、2人は猛烈に俺を睨んでこう言った。
『『ここにいるでしょ(だろ)!!!』』
『ええ……』
そう言われてもな……そこにいるのは緑色の髪の美女しか……。
『あ、そっか、お兄ちゃんはみどりちゃんの人間の姿を見たことなかったんだっけ』
『え? 人間の姿? まさかあの美女がみどりちゃんだと?』
『ええ、そうよ』
『マジかよ……』
確かに、みどりちゃんは過去に、自分は美女など巨乳なんだと言ってたけど……てっきり自信過剰の痛い娘なのかと思ってた……マジだったのか……。
周りにいる美女にも劣らない美女に、俺は思わず見惚れてしまった。
『お兄ちゃん!!』
『はっ! な、何?』
『こんな時に何見惚れてるの!』
『え? いや見惚れてたわけじゃ……』
『嘘、心読んだんだからね』
『あ、はい、そうでした……ごめんなさい』
『もう……』
ブロンズちゃんは、それからずっと不機嫌なままだった。
みどりちゃんは全裸であるため、男の俺は牢の外で見張り、鍵だけブロンズちゃんに渡し、みどりちゃんを解放した。
『皆さん!!』
みどりちゃんはブロンズちゃん達の無事と再会に滂沱の涙を流した。
そんなみどりちゃんを見て、ああ、この美女はみどりちゃんだなと確信を得た。
『ってあれ? ダストさん!? どうしてここに!? それに……そこの綺麗な方達はどちら様ですかぁ?』
まあ当然気になるよな。ケールさんもマーリンも異様なオーラを持ってるし。
『詳しくは後で説明するよ』
とにかく早くここから脱出したい。
『そうね。シルバー姉とアリスちゃんもすぐに助けに行かなきゃ』
『あ、その2人は地下牢にはいないらしいよ』
『え? そうなの?』
『うん。看守達の話では――』
《囚人番号6861のマーリンが脱獄した。見つけ次第拘束せよ。繰り返す。囚人番号6861のマーリンが脱獄した。見つけ次第拘束せよ》
騒々しいサイレンが、緊張感と恐怖を撒き散らす。
看守達も武器を持って、ドタバタとマーリンを探して、そこら中を東奔西走している。
どうやら、マーリンが最初にかけた幻覚魔法が解けてしまったようだ。
とはいえ、こちら側全員に透明魔法に無音魔法をかけてある。すぐに看守の目に映ることはないだろう。
『さて、みんな……ここから脱出だー!』
だが……。
『あ、そういえばアタシのハンマー無いじゃん!』
と、ゴールドちゃんは自分の武器が手元にない事に今更ながら気がついた。
まあそりゃ、囚人に武器を持たせる監獄なんて無いだろうな。ハンマーで牢をぶっ壊されたら収監なんてできやしない。
『ああ、それなら多分、武器庫にあるけど……』
『武器庫?』
その武器庫は囚人から押収した武器を保管する部屋がここの地下に存在するようだ。その場所もマーリンは把握している。だが……。
『武器庫に行きたい!』
『いや……武器を取り戻したい気持ちは分かるけど……警報が鳴っている以上、ここに居続けるのは危険だよ?』
『分かってるよ……でもよ……』
ゴールドちゃんは、どうしても武器を取り戻したいのか、1歩も引く気がないようだ。
『ゴールドちゃん、武器ならまた作ってあげるから今は逃げよ?』
アミさんはそう説得するが、それでもゴールドちゃんはどうしても納得がいかず、声を荒げてこう言った。
『嫌だ!』
『何で?』
『だって……だって……あれは、アミっちが心を込めて作った……世界でたった1つの武器なんだ……そんな大切なものを、この腐りきった国に置いていきたくない!』
大切なものってわりには、さっきまで手元にないのに気づかなかったよな……とツッコむのはやめておくか。
『ゴールドちゃん……』
まあ気持ちは分からないことはない。思い出のある物なら取り返したいと思うのは当然だ。もし俺の大切にしている美少女フィギュアが奪われたら、なんとしても取り返したくなる。
ここはゴールドちゃんの肩を持とう。
『分かった。行こう武器庫へ』
『ダスト君!?』
『分かってます。でもゴールドちゃんはとても頑固なので、武器を取りに行くまでは動かないと思います。それならちゃっちゃと武器庫に行っちゃいましょう』
それにダストの記憶で見てきた武器と比べても、アミさんが作った武器は、完成度が高かった。そんな武器を正義教団に置いておけば、その武器を自分達の物にしないとも限らない。それは相手の戦力増強を許すということと同義だ。それは出来れば避けたいところでもある。
『分かったよ。それなら早く行こう』
アミさんも、これ以上の説得は無駄だと思ったのか、早々に武器庫へ行こうと促す。
『仕方ない。私も付き合うよ。武器庫の場所も私しか知らないだろうし』
マーリンは、そう言って嬉しそうに俺達についていく。
『ありがとう』
ありがたい事だが、なぜそんなに楽しそうにしているんだ。まるでゲームでもやっているみたいじゃないか。
ん? ゲーム?
……いや、まさかな。考えすぎだ。
はぁ……なんだか頭が痛くなってきた――――。
鳴り止まないサイレンと看守達の慌てふためく声を聞き流しながら、少し早いペースで歩いていると、牢と牢の間になんとも不自然で存在感の強い強固な扉の前に着いた。どうやらここが武器庫らしい。
俺はてっきり武器庫はもっと奥深くにあるものだと思っていたが、こんな中途半端な所にあるとは思わなかった。
『さあ早く入りましょう』
鍵を作って扉を開けると、そこには……。
『やっと来たか』
『!?』
甲冑を纏った金髪の美女が、まるで俺達を待っていたかのように、既に剣と盾を持ち構えていた。
『私はこの地下牢の看守長であり幹部でもある、ガラードという者だ。残念ながらお前達は脱走の罪で、ここで処する事が決定した』
ガラードから溢れんばかりの殺意が、生命の危機を感じさせる。
『これより正義の名の元に脱走者及び侵入者の処刑を始める!』
『来るぞ!』
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次回は、21日(日)~23(火)に投稿予定です。
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