第171話『“壊れた歯車を発動せよ”』
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逃げ惑う住人達は、大体避難できたのか、悲鳴が聞こえなくなった。代わりに聞こえてくるのは、少し遠くで、兵士達が“誰か”と戦っている音……つまりそれは剣と剣が交わる時だったり、魔法が飛び交う時だったり。
俺は既に、その“誰か”の正体を神様から聞いている。その名前を聞いた時、俺は驚いたのと同時に困惑を覚えた。知り合いだからというのもあるが、なぜここにいるのかと疑問を感じた。その疑問についても、神様が詳しく話してくれた。
かなり気になる内容ではあったが、今はそれどころではない。
寄り道せずに目的地へ進もう。その事については、目的を達成してからでいいだろう。
俺達は、敵と鉢合わせにならないように慎重に慎重を重ねながら、国の中心部にある城へと向かう。
そこには当然国王がいる。すると絶対に兵士の数も多いだろうと思った。だからより一層警戒していたのだが……。
『あれ? 人がいない……?』
意外にも兵士が1人もいなかった。やはり国民も1人残らずいなくなっているので、まるでここは過疎化した町のように殺風景だ。
中央部について神様に聞いてみようと思ったが、どうやら神の居城から、下界にテレパシーを届けるのは、思ったよりも、システムに負荷をかけてしまうことが判明し、極力控えなければならなくなった。まあ、といっても、ある程度間を空けてからなら、またテレパシーを送っても問題ないそうだ。要は間髪入れずにテレパシーはするなということだ。
『うーん……、気になる事ばかりですが、とりあえず城へ進みましょうか』
『そうだね~』
ケールさんは、特に意見は言わない方針にしたのか、さっきから俺の指示通りに動いてくれる。正直不安だが、戦闘面ではケールさんほど頼りになる人を知らない。戦闘力の高さならあの赤髪ちゃんやケイデスを越えるらしいし、さっきのトリスタンとかいう超すばしっこい騎士に、見事に弾を命中させたほどだ。そんな人が味方として共に行動しているってだけでも安心感が強い。
『そろそろ城の近くまで来ましたが……全然兵士がいないですね』
そう言った瞬間、城の方から爆発音が聞こえた。
『爆発!?』
『どうやら、城の中が大変な事になってるみたいだね~』
『行ってみましょう!』
俺達は、城の入り口まで駆けつけた。
『マジかよ……』
城の入り口が既に何者かに破壊されていた。そこにはあまりにも大量の兵士が血を流して倒れている。なるほどな。どうやら、さっきの町に兵士が1人もいなかったのは、ここに“誰か”が正面突破してきたから、その対応をするためにってことか。
その“誰か”は俺達が来る前に襲撃した2人の内の1人のようだ。そして、そいつは誰よりもブロンズちゃん達の事を家族のように思い、今は助けられなかった事を悔やみ続けている。そう……あの魔王だ。
『これやったの多分、マーブルちゃんだよね~?』
『ええ……神様の情報を元に考えるなら、そうでしょうね』
本来魔王は、身体が回復するまで待機ということになっていたが、ブロンズちゃん達の事を思ったら、いても立ってもいられなくなったんだろうな。とはいえあいつの身体は重症なはずだ。あいつが治癒魔法なんて使えてたかどうかは忘れちまったが、もし一切手当てせずに無理して動いているのだとしたら……。
このままじゃ、あいつは危ないかもしれないな。
だけど、ブロンズちゃん達の事も放っておけない。
『どうする~?』
『……ブロンズちゃん達を優先にしましょう』
『分かった~』
魔王、俺はアンタの強さを信じる。それにまだアンタに聞きたい事がいっぱいあるんだ。絶対死ぬんじゃねえぞ。
俺達は、魔王を後回しにし、ブロンズちゃん達の救護を優先した。
俺達は、神様から聞いた情報を元に、ブロンズちゃん達が収監されている地下室へ向かう。
地下室に行くには、登り階段付近の専用のエレベーターを使うか、下り階段を下って行くかの2択ある。エレベーターの方にはハッキング対策として結界が張られているようだ。結界を破壊してから使ってもいいが、こういう緊急事態の時のエレベーターはとても危険だ。下手をすれば奴らに感づかれて、エレベーターを停止させられ、閉じ込められる恐れがある。そうなれば余計に時間がかかることになる。つまり最初から下り階段しか選択肢に無いということだ。
『行きましょう!』
『うん』
見張りの兵士がいない今の内に、駆け足で下り階段を下ることにした。
もうすぐ、ブロンズちゃん達を解放できる……そう思ったその時――。
『フハハハハ! まさかお前がここに来るとはな! 黒崎イイイ!』
真上から図体のでかい男が、俺達を踏み潰すくらいの勢いで降りてきた。
俺とケールさんは咄嗟に後ろに回避した。
『な、なんだ!?』
今、俺の事を黒崎と呼んだってことは……。
『よお、黒崎……久しぶりだなぁ? 俺様の腕を引きちぎった時以来だなぁ! この葛木様がお前をめちゃくちゃのぐちゃぐちゃに引き裂いてやるぜえ!!! アハハハハハハハハハ!!!!!』
葛木……神様の情報通りだ。こいつはどうやら、正義教団に実力を買われて、正義教団幹部補佐としてここに所属しているらしい。何が正義教団だ。こんな悪を極めたような奴を幹部補佐にするなんてバカげた話だ。
こいつは俺を黒崎と呼んでいるが、俺は黒崎でもダストでもない。本来ならお前とは全く無関係の男だが、俺は一応お前には恨みがある。
今はもう懐かしい話だが、こいつと初めて会ったのは、ベンリ街に初めて行った時だ。その時、俺はこいつに痛めつけられた。その記憶は今でも鮮明に残っている。そしてその後、確か……俺が……オレガ? オレガオレガオレガオレガオレガ――。
……。
……。
……。
――ア、アアアアアアアAAAAAAAaaaaaaaaa――
――――。
……ダレダ……オレハダレダオレハダレダオレハ――。
――――。
――――。
――――。
――エラーが発生しました。記憶を修復しますか?――
YES。
――――。
――――。
――――。
――エラーが発生しました。記憶の修復には、管理者D様の承認が必要です――
……。
――管理者D様からの要望があります――
……?
――“壊れた歯車を発動せよ”――
……。
――壊れた歯車を発動しますか?――
……YES。
――壊れた歯車システム起動中……――
しスてム……?
――壊れた歯車システム起動準備完了――
……。
――壊れた歯車システム起動しますか?――
……。
――壊れた歯車システム起動しますか?――
……YE――。
『ダメだよ~NOだよ~』
――え。
けーる……さん……なんで……?
『神様の魔法だよ~いいから早く帰ってこい~』
俺……今まで……。
『今は目の前の敵に集中して~』
目の前の……敵……?
あぁ、そうだった……俺は……俺は――。
――――。
――――。
――――。
『――はっ!』
目を開けると、ケールさんが、葛木に銃を撃ちまくって牽制している光景が移った。どうやら意識を失っていた俺を守ってくれたようだ。いや正確には、葛木を俺に倒させるために、俺を待っていたという感じだろうか。
『ダスト君、目が覚めた~』
『すみません……』
『大丈夫?』
『……大丈夫です』
本当は大丈夫じゃない。最悪だ。思い出したくもない事を思い出してしまったからな。
管理者D……お前か……お前が……俺をあんな化物に……。
だが、今それを気にしたところで仕方がない。
ケールさんの言う通り、目の前の敵に集中だ。
俺は立ち上がり、戦闘体勢を整える。それと同時にケールさんは銃を下げ、葛木への射撃をやめた。
『っはあ……あんのクソアマ……この俺様で遊びやがって……許さねえ! 黒崎をぐちゃぐちゃにぶっ殺した後、めちゃくちゃに犯してから、ぶっ壊してやる……!』
葛木は、自分が舐められたと思って屈辱的に思ったのか、血眼になりながらそう言った。まあ舐められなくてもそうするつもりだったんだろうがな。俺は知っている。お前が過去にどれだけの罪を重ねたのかを……。
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次回は、5日(金)か6日(土)に投稿予定です。
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