第166話『神様の提案』
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第166話の執筆が完了しました。
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※2024/09/08改稿しました。
――その頃、神の居城では。
先ほど、ブロンズちゃん達が正義教団の連中にさらわれたとマーブルから連絡があった。
もちろん、俺は助けに行こうと思っているが、神様は難しい顔をしている。
『ダスト君は、ブロンズちゃん達を助けたい……よね……?』
『ああ、もちろんだ』
『でも、分かるよね? 今の君が助けに行ったところで返り討ちに遇うだけだって』
残酷な事実をはっきりと伝える神様。
反論はない。魔王ですら助けられなかったのに、俺ごときが正義教団に潜入して、ブロンズちゃんを助けるなんて、妄想ですら考えにくい。
そんな事は分かってる。けど、だからといって、このままブロンズちゃん達を見捨てられるわけがない。
『そうだよね。それなら君に提案があるんだ』
『提案?』
神様からの提案なら安心して受けられるが……どんな内容なんだ……?
『それはね、君自身が強くなることだ』
なんというシンプルな提案。もし赤髪ちゃんのような脳筋がそんな提案をしてきたら、時間の無駄だと吐き捨てるところだが、神様が言うのなら何か意図があるのだろう。
『俺が……?』
でも、俺が今更強くなるなんてそんなことできるのか? 最弱王の称号をほしいままにしているこの俺が?
『できるよ』
神様は冗談で言っているわけではなく、顔は真剣そのものだ。
『でも、どうやって?』
まさか、かの有名な金髪になる戦闘民族みたいな修行でもするのか……?
なんだか不安だな……。
『そんな、かの有名なバトル漫画みたいな修行はしないよ』
『そうなのか?』
良かった……まあ、そりゃそうだよな。あれはあくまで漫画の中の世界だもんな。
『ただ、君に“ダスト”としての記憶を思い出してもらうだけだよ』
『ダストとしての記憶を俺に……?』
『うん。確かに君はダスト本人ではないけど、一応、データ上ではダストという人物なんだ』
『なるほど』
つまり、今の俺は他人のアカウントを乗っ取って、好き放題動かしている状態というわけか。
いや、それ犯罪じゃねえか……。
『仕方ないよ。そうさせたのは私なんだし……君が気に病む必要はない』
だとしても、犯罪の片棒を担いでいるのは確かなんだよな……。
あ、でも、そうか。このゲームはあくまで向こうの世界のもので、別世界から来て、しかも巻き込まれた俺には関係なかったわ。
そう考えると気楽になってきた……のか?
まあ、今更そんなこと言ってもしょうがないか。これもブロンズちゃん達を救うためだ。
『悪い。話が脱線した。えーと、今の話をまとめると、今ここにいる俺はデータ上ではダスト。ということは必然的に、俺にはダストの記憶が眠ってるはずだから、それを掘り起こすことで、俺を強くすることができるということだろ?』
『うん。その通り。そして私が君の記憶を解放すれば……無数の並行世界のダストの魔法を全て覚えることができる』
『す、全て!?』
並行世界のダストの魔法……そういえば、前に何かの夢を見た後、まるで当たり前のように強い魔法を使えるようになってたな。未来予知とか空中浮遊とか。もしかしてそれか?
『ああ、それはアースの仕業だね』
『アースの仕業だと?』
『うん。目的は分からないけど、あらかじめ君の部屋に魔法をかけて、ダストの記憶を少しずつ蘇らせようとしたようだよ』
『へぇ……?』
なぜそんな事を……? アクタか時の女神の指示か?
『……それと全く同じ方法で、君には夢を見てもらう』
『夢? 一回寝ろと?』
『あ、もしかしてあまり寝付けないタイプとか?』
『いや、そういうわけじゃない……ただ……』
『ああ、一刻も早くブロンズちゃん達を助けたいから、寝てる暇なんてないとか?』
『……ああ、その通りだ』
こうしている間にも、ブロンズちゃん達は俺の想像以上に酷い目にあってるかもしれない。そう考えると、到底気楽に眠ることなんてできない。
『君は優しいんだね』
『いや、そんなことはない。ただ俺が困るだけだ』
やっぱりブロンズちゃんに謝りたいし、料理だって、また作ってもらいたい。そして何より魔王城で、またあいつらと一緒に過ごしたい。ブロンズちゃんにあんなこと言ってしまった俺を許してもらえたらの話だけどな。
その為にも……神様の言う通り、俺自身が強くならなくてはならない。不安で寝付けないなんて言ってる場合じゃないよな……。
『分かった。アンタの提案に乗ろう』
『ダスト君……分かったよ。ありがとね』
ブロンズちゃん……みんな……必ず助けに行くからな。それまで、どうか無事で居てくれ!
『君があまりプレッシャーにならないように、これだけは言っておくよ』
『何だ?』
『君の他にも、既にブロンズちゃん達を助けに向かってる者達がいる』
『達ってことは、マーブルだけじゃないのか』
『うん。君もよく知ってる者達も、私が派遣した勇者もいるし、自分がやらなきゃなんて思わなくていいからね』
そう言われると安心感を得ると同時に、少し気が緩んでしまいそうだが、それでも俺は俺のやることをやるだけだ。
『神様~、ダスト君さえ良ければ、私もついて行きますよ~』
さっきから全く会話に入ってこなかったケールさんが、突然手を上げて、胸をぷるんと揺らしながら、そんな事を言い出した。
ついてくるの? 看護婦だから回復役を担ってくれるのか? その気持ちは非常にありがたいけど、戦場になるかもしれない場所に非戦闘員をつれていくのは気が引けるな…… 。
というか、その胸元どうにかならないのか?
ガチ潜入にその胸が視界に入ると集中できなくて困るんだが……。
『ああ、ちょうどケールにダスト君の同伴を頼もうとかと思ってたんだ。ダスト君のこと頼んだよ』
『了解です~』
え? 本当にケールさんもついて来るの?
『ああ、こう見えてケールは戦闘能力は高いんだ』
へえ~、意外だな……と思ったけど、俺を引っ張った時のゴリラの如く力強さと、まるでバトル漫画の主人公のような食べっぷりを見ていると……うん、めっちゃしっくりくる!
『なんか失礼な事考えてる~?』
何!? ケールさんも俺の心が読めるのか!?
『いやいや、全然カンガエテナイデスヨ』
精一杯の反論。
『ま~た棒読みして~~絶対考えてたでしょ~~むぅ~』
あの無表情のケールさんが眉間にしわを寄せながら、頬を膨らませた。めっちゃ可愛い。
『ケールさんの怒った顔、初めて見ました……怒った顔も可愛いですね……!』
ここは褒めて機嫌を治してもらおう。実際、可愛いし。
『褒めたってダメだよ~~私の繊細でピュアな乙女心をどうしてくれるの~~?』
デフォルトで胸元を露出している人が繊細でピュアな乙女心って言ってもな……。
そんなやり取りを見て、神様は微笑ましい顔をする。
『もう~神様まで笑って~』
『ごめんごめん。それじゃダスト君、早速きみを夢の世界へご招待するね』
洒落た言い方で俺に眠れと言ってきた。
『あ、はい』
神様は俺の目の前に立ち、指をパチンと鳴らす。
『ん……あ……あれ……なんだか……ねむ……』
俺は突然の眠気に襲われ、そのまま夢の世界へログインした。
――そして、俺が次に目覚めた時、次の戦いの火蓋が切られるのだった。
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次回は、19日(金)か20日(土)に投稿予定です。
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