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第165話『壊れた水の国は300年経っても美しいままだった』

お待たせしました。

第165話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2024/09/03改稿しました。

 ――その頃、時の女神の旅館では……。


 フラン達三兄妹は、時の女神から重大な話があると言われ、緊張感を持ちながらその話に耳を傾けた。


『ゴールド達が……正義教団にさらわれただと!?』


 情報通の時の女神はコクッと頷く。


『そんな……』


『マジかよ……』


 正義教団の悪評はフラン三兄妹も知れ渡っていた。そんな集団にさらわれるということが、どれだけ危険かも理解している。


 黙っていられなくなったフランは血相を変えて、飛び出そうとする。


『兄貴! どこ行くんだ!』


『決まってるだろ! 正義教団の所だ! 今すぐ、ゴールド達を助けに行かねえと……!』


 そう言って、ドアノブを引こうとしたその時。


『待って』


 時の女神はフランを止めるように、前に立ちはだかる。


『なんで止めるんだよ!』


『正義教団……彼らは強い……今のフラン達では、とても太刀打ちできない』


 そう断言されたフランは、まるで俺が弱いと言われているように捉えてしまい、傷つけられたプライドを燃料に怒りを(あらわ)にしてしまう。


『ふざけんな!!! 俺は強い! さっさと助けに行くぞ!』


 フランは時の女神の言うことを無視し、ゴールド達を助けに行こうと、再び飛び出そうとする。


『フラン。私は助けに行かないとは言ってない』


 時の女神がそう言うと、フランはドアノブを引く寸前で、ピタッと止まった。


『それなら……いつ行くんだよ?』


『作戦がある。でも、それにはみんなの力が必要』


『みんなって誰だ?』


『水の女神アクア。霧の女神ミスト。幻の女神ファントム。そして風の女神のウィンちゃん』


『ちょっと待て、霧の女神と幻の女神って……前に、ここを襲ってきた奴だよな?』


『うん』


『そんな奴らと協力なんてできるわけねえだろ!』


 霧の女神ミストと幻の女神ファントムは、今から約298年前、アクタ達を霧と幻覚で惑わせた敵だ。だが始末に失敗し、一度撤退した。


 そして、それ以降アクタ達を襲ってくることはなかった。


 どういう目的でアクタ達を襲撃したのかは不明だが、ここを襲ってきた時点で、彼女達は少なくとも敵である。そんな彼女達が協力してくれるわけがないと思うのはごもっともな考えだ。


『フランの言うことも分かる。だけどこの作戦には、どうしても彼女達の力が必要。だから、私が交渉する』


『交渉……?』


『うん、大丈夫。私に任せて。フラン達はみんなを助けに行く準備だけして』


『……分かった』


『私も準備が出来たら、また呼ぶね。じゃあ』


 時の女神はそう言って、ぱっと姿が消えた。


『……』


 フランは握りこぶしを握りつつ、今すぐ助けに行きたい気持ちを堪えて、黙々と準備をし始めた。そんなフランにつられて、ケンとシュタインも無言で準備をする。


 少し沈黙が続いた後、ケンが口を開いた。


『兄貴』


『何だ?』


『絶対、ゴールドさん達を助け出そうな』


『ああ……もちろんだ』


 シュタインは、そんな兄達のやり取りを見て、私も頑張らなきゃと気合いを入れる。



――――――――――



 ――その頃、廃墟と化した水の国では……。


 かつて水の国は水面に浮かぶ綺麗な国として、人々を魅了し、経済を活性化させ、国の発展を進めていた。300年前までは……。


 この約300年の間……この水の国に入った者は、たまたま近くまで来た冒険者を含めても僅かしかいない。


 それも仕方なし。そもそもこの世界そのものが退化しており、ここももはや廃墟の国。だが、ここは未だに、300年前の美しさを保ち続けている。それは、奇跡でも偶然でもない。なぜなら……そうここには――


 水の女神が住んでいるからだ。


『……』


 そして今日も水の女神は、ただ一人。ただ歩き回る。


『……』


 水の女神は、空を見つめる。


『……』


 辺りを見渡す。


『……』


 水流を見る。同時にその水に映る自分を見る。


『……』


 崩れた瓦礫の山を見つめる。


『……』


 その逆、未だ形を保ち続けている建物を見る。


『……』


 その建物の中に入る。


『……』


 静かに建物から出る。


『……』


 目から涙が出る。


『……っ!』


 水の女神は気が狂いそうになり、それを紛らわすために、水の中に飛び込もうとした。


『待って』


 そんな水の女神の元に、突然現れた可憐で華奢な少女……時の女神が声をかけた。


『あなた……時の女神……』


『久しぶり』


『え、ええ、そうね』


『……』


『……』


 それから沈黙が続くと、時の女神は口を開いた。


『ここで何をしてたの?』


『別に……何もしてないわ』


 水の女神はそう言いながら、急いで涙を拭く。


『そう』


『ええ……』


『……』


『……』


 また沈黙が続くと、今度は水の女神が、先に口を開いた。


『何か用なの?』


『協力してほしい事がある』

 

 早く言いなさいよ、と心の中でツッコんだ。


『協力? 具体的には?』


 水の女神がそう聞くと、時の女神は今の状況を話す。


『なるほどね……いいわ。協力してあげる』


『ありがとう』


『いいわよ。別に』


 水の女神は表情には出さないが、どこか嬉しそうだ。


『……』


『……』


 またしても、沈黙が続く。


『……まだ何か用なの?』


『寂しい?』


『別に……』


 水の女神は顔を赤くして、そっぽを向く。


『そう』


『……』


『分かった』


 時の女神は、そう言って踵を返し、立ち去ろうとする。


『……あ』


 水の女神は、時の女神の後ろ姿を、寂しそうに見つめる。


 すると、時の女神は突然歩みを止め、振り返る。


『な、何よ?』


『寂しい?』


『さ、寂しくないって言ってるでしょ!』


 水の女神は本当は寂しがり屋で、常に一緒に誰かと居たいという思いはあるが、言葉に出すのが恥ずかしいのか、またそっぽを向いて、思ってもない事を口走る。


『……』


『さ、さっきから何なのよ!』


『……本当は?』


『もう! うるさいうるさいうるさーーーーい! 一体何なのよ!』


 あまりにもしつこいので、とうとう怒鳴り始めたが、時の女神は微動だにせず、水の女神を見つめ続ける。


『……』


『えぇ……もう何なのよ……アナタ……』


 水の女神は、呆れて怒鳴るのをやめた。


 次に時の女神は突然こんな事を言った。


『ねえ、私の家来る?』


 そう言った瞬間、水の女神の表情が一瞬だけ明るくなったが、すぐに無愛想な表情に戻った。


『は? 何で?』


『今、私の家子供達がいる』


『子供達? うん。それで?』


『私はこれから、霧の女神と幻の女神に会いに行くから、それまで子供達の相手をしてほしい』


『なにそれ……100歩譲って、子供達の相手をしてほしいのは分かるけど……よりによって霧の女神と幻の女神に会いに行くって……』


『何か問題?』


『問題ありまくりよ! だって、あいつら、ずっと前にあの闇の女神とつるんでたヤバい女神達よ? ()()()()()()()()()()、あいつらだって噂よ』


『そう』


『そうって……あぁ、そうね。アナタはそういう女神(やつ)だったわ』


 時の女神は、そもそも噂を気にしないタイプだ。だが、その噂に関しては真実を知っている。当然、誰が光の女神を殺したのかも知っている。


『まだ答え聞いてない。来るの? 来ないの?』


『……行くわよ』


『ありがとう』


 時の女神は、笑顔でお礼を言った。


『か、勘違いしないで! べ、別にアナタの為なんかじゃないんだからね! あくまで子供達のため! そう子供達のためよ! つまりこの世界のためでもあるのよ!』


 水の女神は顔全体を真っ赤にしながら、必死に、時の女神のためじゃないと否定する。


『分かってる』


『わ、分かればいいのよ』


『それじゃ、アクアちゃんを私の家まで送るね』


 時の女神は、世界の時を止め、水の女神を時の女神の家まで送り届けた。


 ちなみに、水の女神は炎の女神や風の女神とは違って、人間に対して好意的なので、フラン達とは、すぐに仲良くなったのであった。


 時の女神はその様子を見つめながら、次の場所へと向かった。


『さて……次は、ミストちゃんとファントムちゃんの所へ……』


 それから時の女神は霧の女神と幻の女神の元へ、()()()()を持ち掛け、無事に協力を得る事ができたのであった。


 その後、風の女神とも合流し、必要な戦力を揃え、みんなで正義教団の国へと足を運んだのであった。


第165話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、16日(火)か17日(水)に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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