第164話『約束』
お待たせしました。
第164話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※矛盾してる箇所があったので、修正しました。
※2024/09/03改稿しました。
――時を同じくして、赤髪ちゃん達は。
『赤髪ちゃん、そっちはどう?』
『残念ながら、こちらにも居ませんでした』
『そっか……』
『あおい……ダスト様も、どこに行ってしまったのでしょうか……』
赤髪ちゃん、バレス、ケイデス、ヒナの4人は、昨日から一睡もせずに、突如行方不明となったダストとあおいちゃんを探し続けていたのだが、一向に見つかる気配がない。
『なあ、もっと捜索範囲を広げた方が良いんじゃないか?』
『そんなことしたら、あの化物に遭遇するかもしれません……複数人で行動すればまだしも、もし単独で遭遇してしまえば、最悪は免れません』
『うーむ、確かにそうだなぁ……何か良いアイディアはないか……?』
『うーん……』
頭を悩ませてる赤髪ちゃん達の元に、トウカと村長が、剣を持った謎の少女を引き連れてきた。
『お姉ちゃん達!』
トウカは謎の少女と、仲睦まじく手を繋いでいる。村長はその付き添いだ。
『トウカさん? 村長さんまでどうされました?』
『あんたたちにお客様だ』
『お客様……?』
謎の少女は一歩前に出ると一回頭を下げてから、自己紹介を始めた。
『初めまして。私の名前はキリカ。勇者よ』
『私の名前はマゼンダです。赤髪ちゃんと呼んでくだ……って勇者……!?』
勇者の存在に驚愕を隠せない一同。この世界では、確かに勇者は存在すると誰もが認識している。だが、実際に会ったことがある者は極めて少ない。なので、まさかこうして対面するとは、誰も思うはずもない。
『なぜ、勇者がここに……?』
『私は、ある偉い方から、命令され、ここに馳せ参じました』
『偉い方? 命令?』
『はい……マーブルさん率いる魔王軍及びその仲間達を助けろと』
『!?』
赤髪ちゃん達はまたしても驚愕した。マーブルの存在だけではなく、隠していたはずの自分達の素性や、その魔王軍の協力者の存在までもが、キリカに知り渡っているということに……。
一体どこから自分達の事を聞いたのかと疑問を抱かずにはいられない赤髪ちゃんだが、決して、家族や仲間を疑っているわけではない。敵である誰かが、どうやって情報を盗んだのか……と、またしても頭を悩ませている。
だが、今はそれよりも、今すぐ対応しなければならない重大な問題が発生した。それは……。
『赤髪ちゃんが魔王軍の幹部……? おい、どういうことだ?』
ケイデスとトウカと村長は、赤髪ちゃん達は、冒険者で通っていたが、今、キリカが喋ってしまったせいで、素性が露呈しそうになっている。
しかし、赤髪ちゃんは慌てている姿を見せず、まずは冷静にケイデス達に頭を下げた。
『申し訳ございません。私達は……冒険者ではなく、魔王軍の幹部なのです』
情報漏洩に細心の注意を払っていたとはいえ、いつかはバレてしまうのは分かっていたので、その覚悟はとうに出来ていた。
彼らとは短い付き合いとはいえ、自分達の素性を偽って騙していたのだ。最悪、この町の人達と敵対するか、良くてこの村から追放されるだろうと、赤髪ちゃんは覚悟した。
『そうか……だが、それがどうした?』
『え……?』
村長から意外な言葉が飛び出し、赤髪ちゃんは、キョトンとする。
『あんたたちが何者であろうと、この町を助けてくれたのは事実だ。村人達も、みんなあんたたちに感謝している。町を救ってくれた英雄って言ってな』
『……!』
非難どころか、感謝をされたことに、赤髪ちゃんも込み上がるものがあった。もう頭を上げてもいいはずなのに、まだ頭が下がったままだ。
そんな赤髪ちゃんを見て、ケイデスはこう言った。
『そんなの気にすることなんてねえよ。それに、お前みたいなクソ真面目な奴が、魔王軍の幹部だなんて、何か訳があるんだなと思うぜ』
『……カイオスさん……ありがとうございます』
『おう』
村長とケイデスが話している所を見て、トウカも何かを思ったのか、こんな事を話した。
『ねえ、お姉ちゃん……私はね、まおうぐん? が悪い人達ばかりとは思わないよ』
『トウカさん……』
『だって、お姉さんみたいな人がいるから!』
そう言われ、赤髪ちゃんは感極まり、トウカを抱きしめる。
『トウカさん……ありがとうございます』
自分が世界の反逆者という立場だと分かっても受け入れてくれる人達。世界の秩序を考えるのなら本来なら非難されなければいけない存在だ。だけど、彼らは知っている。正義なんて言葉を振りかざす偽善者よりも、人の心を暖かくする者の方が、最も信頼に値すると……。
『コホン。あ、あの、感動的な雰囲気なところ、非常に申し訳ないんですが……今は、一刻を争う事態なので、続きを話してもよろしいでしょうか?』
『あ、はい。すみません……』
すっかりと存在を忘れていたキリカに、心の底から申し訳ないと思った赤髪ちゃん達であった。
『実はですね――』
キリカは赤髪ちゃん達が懸念していた、あの化物が全滅した事、ダストの居場所、そして先ほど、ブロンズちゃん達がさらわれた事まで、全てを説明した。
『そんな……ゴールドさん達が……!?』
『正義教団……!』
赤髪ちゃんもバレスも正義教団の国の出身だ。彼らが犯した悪行の数々を嫌という程、目にしている。当然正義教団への嫌悪感も尋常ではない。もうニ度と関わらないようにしたかったが、ゴールドちゃん達がさらわれたとなれば話は別だ。
『……分かりました。あおいの事も気がかりですが、ゴールドさん達を救出する方を優先します。すぐに正義教団の国へ向かいましょう。ゴールドさん達に……もう、あんな思いは、させたくありません……』
赤髪ちゃんはゴールド達が、過去に正義教団に何をされたかを知っている。それを想像しただけで、燃えたぎるような怒りが湧いてくる。
『許せません……正義教団!』
『はい。私もとても看過できる集団ではないと思ってます。ただ……マゼンダさんは――』
『赤髪ちゃんです』
(こんな時まで、呼び方に拘るなよ……)
『は、はい。失礼しました。赤髪さ……ちゃん。ここからは、正義教団の国へ進みながら説明します。そろそろ、ゴールドさん達を助けないと……』
『そうですね、行きましょう。バレス、カイオスさん』
『うん』
『ああ』
四人で街を出ようとすると、不死鳥の女神ヒナが声をかけてきた。
『お待ち下さい』
『ヒナ……さん?』
『私も連れていってくれませんか?』
『ヒナさんもですか……でもヒナさん、戦闘は苦手なんじゃ?』
『ええ、確かに戦闘は苦手ですが、皆さんが受けた傷を回復することはできます。お役に立てますよ』
『……分かりました。そういうことなら……でも無茶はしないで下さいね? もし危なくなったら自分だけでも逃げるのですよ?』
『分かりました』
こうして赤髪ちゃん、バレス、ケイデス、ヒナ、キリカの5人は村人達に事情を説明し、正義教団の国へ向かうべく、町を出ようとする。
『お姉ちゃん!』
トウカは、赤髪ちゃん達と別れるのが寂しいのか、赤髪ちゃんに抱きついてきた。
『トウカさん……』
だが、トウカも先ほどの話を聞いているので、ここで赤髪ちゃん達を止めても迷惑なのは理解している。ただ一回だけ、赤髪ちゃんの家族のような温もりを抱きしめたかったのだ。
『分かってる……必ず戻ってきてね?』
『トウカさん……分かりました、必ず戻ってきます! 約束です』
『うん! 約束だよ!』
こうしてニ人は約束を交わし、トウカは村で待ち、赤髪ちゃん達は正義教団の国へと向かった。
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次回は、13日(土)~15日(月)に投稿予定です。
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