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第8話『思わぬ来訪者』

お待たせしました。

第8話できましたので、宜しくお願い致します。


※改稿しました。ストーリーやキャラは変わってません。

※文字数かなり多めです。


※2022年1月10日改稿しました。

※2025/07/21少し改稿しました。


『へぇ、ここがスーパーグレートベンリ街か~。ネーミングセンスはともかく綺麗な街ですね~』


 この街には、他の街にはない多種多様な店がたくさんあるため、住人はもちろん冒険者や勇者、王国の騎士まで、とにかくたくさんの人が訪れている。


『はい、この街は特に人の出入りも店も多いので、常に清潔感を心がけ、まず店の外装から、お客さんを魅了させる事を強く意識しています』


 確かにあの店もこの店もお洒落を極めたような外装で、それだけで思わず入りたくなる。


『これは一日中居ても飽きないですね』


『はい、私もここに来るとつい散財しちゃって……よくおね……赤髪ちゃんに叱られます』


 あおいちゃんは少し照れくさそうにそう言った。


 もう普通にお姉ちゃんって言えばいいのに……。


 つまり、この街が綺麗なのは住人の心が綺麗だからってだけではなく、商売根性によるものでもあるってことか……。


 そう思うと、なんか入りたくなくなってくるな……。綺麗だけど。


『で、今回は何を買うんですか?』


『今回は、ゴールドさんから頼まれていた大量の食料と、ダスト様専用の武器と、あとできれば防具を注文できればなと思います』


『武器と防具……ですか?』


 キタアアアアアアアアアアアア!!!!! ついに俺にもかっこいい武器と防具が……!!!


 これだよこれ! 俺が望んでいた異世界生活は!


『はい、まあ上級魔法が使えれば自分で生成もできますが、上級魔法を使えるようになるには、個人差はありますが時間がかかる人は大体五年以上は魔法の訓練を受けなければいけません。ダスト様は魔法の訓練もまともに受けたことがないので、もし武器と防具を身に付けられれば、魔法がなくても、すぐに凄まじい力を手にいれることができます』


 なるほど。魔法も勉強と同じで、ちゃんと学ばないと使えないってことか。


 勉強嫌いの俺にはすぐに魔法とか出せそうにないだろうしな。武器を装着することですぐに強くなれるならそれに越したことはない。


 それにしても武器と防具か……! ワクワクが止まらねえよ! その響きだけで本当に異世界に来たんだなっていうのをより感じさせる。


 日本だとまず武器は犯罪で持てないし、持てるとしたらおもちゃくらいだもんな。


 だけど、この世界では誰もが本物の武器を持つことを許されている。それは狩猟用だけではなく護身用として持つ者もいるようだ。


『あ、ダスト様、ここが目的の武器屋さんです』


 おお、外見ですぐ武器屋だと分かるくらい、剣やら槍やら色んな武器のサンプルが店の前に置いてある。どれもかっこいいなぁ……。


『入りますよ』


 あおいちゃんが武器屋のドアを開けると、そこには数え切れないくらいの大量の武器が置いてあった。例えば安い武器であれば、樽の中にワゴンセールのように雑に置いてあったり、高い武器であれば、目玉商品として壁にしっかりと固定してあったりする。


『いらっしゃいませーってあおいちゃん! 武器屋に来るなんて珍しいね、今日はどうしたの?』


 店主と思われるエプロン姿の巨乳で美人のお姉さんが、あおいちゃんに友達のように話しかけてきた。


『アミさん、お久しぶりです。あの、このお方に合う武器を買いに来たんですが』


 名前はアミというのか。思ったより普通の名前だな。まあそれも赤髪ちゃんみたいに第二の名前だったりするんだろうな。


『そうだったんだ~、ふーん?』


 アミさんは何を思ったのか俺の身体をジロジロ見てくる。


 美女にジロジロ見られるって、なんか来るものがあるな。新たな性癖の扉が開かれそう……。


 しかしこれだけではまだ終わらず、アミさんは俺に視線を当てたままぐるぐると周り始めた。


 な、何が目的なんだ……?


 アミさんは突然俺の目の前で立ち止まり、笑顔で俺に自己紹介をしてきた。


『初めまして、私はこの店の店主のアミだよ。よろしくね』


『お、俺はダストと申します。よ、よろしくお願いします』


 緊張のせいかそれとも陰キャだからなのか、俺の自己紹介がぎこちなかった。無念。しかし、そんな俺にもアミさんは笑顔で接してくれる。商売なのは分かってるが、それでも俺はこの人を天使と呼ばざるを得ない。


『じゃあ早速質問だけど、ダスト君は何か使いたい武器とかある?』


『えっと……じゃあ剣を使ってみたいです』


『なるほど、じゃあこれ』


 アミさんから剣を渡された。


 おお、しっかりと重みがある。これを振り回して敵を倒すにはもっと筋力がないとキツそうだ。


『……何も反応しないね』


『反応って?』


『私の店の武器はね、特別な素材で作られた武器でね、適正があれば武器が光って使えるようになる特別な武器なの。でも逆に適正が無い人が使っても、全然斬れないし、ダメージも一切与えられないの』


 武器選びってそんな某有名魔法映画の杖選びみたいなものだったのか。


『ねえ、そこにある武器全部触ってみて』


『全部ですか、わ、分かりました』


 俺はアミさんの言うとおりに、置いてある全ての武器に触れてみたが……。


『全部反応しないわね……』


『そうみたいですね……』


 反応すると光るらしいが、俺がどの武器を触っても、まるで無視されてるみたいにうんともすんともいわなかった。


『あの……他に武器はありますでしょうか?』


『そうね……あとは、まだ作りかけのものばかりだから……』


 ちくしょう! 武器使ってみたかったな……。


『そうですか、ありがとうございます』


『ごめんなさいね、ダスト君でも扱えそうな新しい武器も作っておくから、また来てね』


 アミさんは申し訳なさそうに頭を下げた。


『了解です、また来ます』


 俺達は他に買う物があるため、武器屋をあとにした。


『ダスト様、残念でしたね』


『まあ、仕方ないですよ』


 俺はあおいちゃんに気を遣われたくないのでそう言ったが、ホントは内心ショックが大きい。


 もしここが公共の場じゃなかったら、地べたに這いずり回りながら泣き叫んでいただろう。


『もしかしたら、ダスト様は魔法や格闘の適正が強いのかもしれませんね。現に魔法使いや格闘家の方達の多くは、杖以外の武器を使わないです。まあ稀に両方使える方がいるらしいですけど』


 魔法や格闘……そういえば、魔王も俺に“封印された能力”があるとか言ってたな。ということは俺は魔法使いの方が向いてるのかもな。


『では、気を取り直して、次は食材を買いに行きましょう』


『はい』


 俺はきっとこの後、あおいちゃんと楽しく買い物をして、帰り道にモンスターと遭遇しながらも無事に帰る……はずだったのだが……ここで予期せぬ来訪者が現れる。


『よお! ()()じゃねえか!』

 

 この世界では呼ばれるはずもない俺の“黒崎”という名字を呼ぶそのどこかで聞いたことがある不快な声を聞き戦慄した。


 この声は忘れもしない。あの忌々しいクズ野郎の声だ。


 俺を殴り蹴りやりたい放題やっていじめてきた俺史上最低で最悪な存在であり俺のクラスメートの……葛木(くずき)!!!


『やっぱ黒崎じゃねえか! てめえもここに居たのかよ!』


 葛木はかなり値が張りそうな甲冑と剣を装備していて、周りに見せつけるように、堂々と胸を張っているところを見ると、マウントを取りたがってるのが見え透いている。


 それだけならまだしも、葛木の後ろには鎖で繋がれた薄汚れた奴隷が三人もいる。殴られた跡や蹴られた跡もあることから、サンドバッグのように扱っているのがすぐに分かる。


 異世界に来てもお前は……!

 

『ダスト様、あの人はお知り合いの方ですか?』


『……いや知らない奴だ、あおいちゃん、行きましょう』


 あの葛木(クズ野郎)に復讐したい気持ちはある。やれるものなら今すぐあいつの気が失うまで、ぶん殴ってぶん殴ってぶん殴って、目が覚めたあとも拷問等で様々な方法で苦しめてやりたい。


 だが今の俺にはそんな力も度胸もない。


 あおいちゃんにあいつをぶっ潰してもらうのも、なんだか尻拭いをしてもらってるみたいな後ろめたさがあって頼めない。


 それならいっそあいつとはもう一生口も利かずに、最初から会わなかった事にした方がいいだろう。


 憎たらしくても、時間が経てば経つほど嫌な事など忘れていくものだ。その時にはもう復讐心など欠片も残っていないだろう。


 そう考えた俺はすぐにこの場から離れようとするが、それを不快に思ったのか葛木は、魔法で鎖を出し、その鎖は蛇のようにうねうねと動き、目にも止まらない早さで俺の身体をぐるぐる巻きにした。


『なっ……!?』


『おい、カスのくせに俺様を無視してんじゃねえよ!』


 葛木は激昂し、俺ごと鎖を引っ張り、空に打ち上げてから地面に叩きつけた。


『ぐあああああっ!』


 打ち所が悪かったのか、頭からかなりの量の出血をした上に頭がぐわんぐわんとめまいもする。


 逃げなきゃ、また殴られる。またいじめられる。


 しかし無様に地面に伏した俺には、墨汁が垂れたような自分の血溜まりを見るしかなかった。


 ヤバい……誰か助けて……くれ……。


 何の騒ぎだとざわざわとギャラリーも集まってきたが、あおいちゃん以外は、葛木に恐怖を覚えたのか誰も助けてくれる気配はない。

 

『ダスト様!』


 あおいちゃんが青ざめた顔で、無様に地面に伏している俺の元へ駆けつけてきた。


『あ……おい……ちゃ……』


 精一杯声を出そうとするも、身体中に(ほとばし)る痛みと、ぐわんぐわんと揺れるようなキッツイふらつきのせいで、うまく声が出なかった。


『ああ……ダスト様……!』


 あおいちゃんは申し訳なさそうに涙を流しながら、俺を優しく抱き抱えた。


 初めてだな。自分の為に泣いてくれたのは……。


『なあ、お前あおいちゃんって言ったか? お前めっちゃ可愛いな、そんなゴミカスの所よりも、俺のところへ来いよ! とびっきり良い思いさせてやるからさ!』


 葛木は醜悪な顔で、あおいちゃんに近づき、身体に触れようとするが、その前に、あおいちゃんは葛木の手を払い除けた。


『私に触らないで下さい!』


 あおいちゃんは葛木を睨み付け、モンスターを倒した時のように水魔法で水の剣を出して殺意を表した。


『ああ? なんだてめえ? せっかく俺様が誘ってやってんのによ!』


 手を払い除けられたことに憤慨した葛木は、その辺にあった店の置き物をお構いなしに蹴り飛ばした。


『ダスト様を傷つけるような方なんて、こちらから願い下げです! 覚悟してください!』


 あおいちゃんは鬼の形相で葛木を睨み続け、威圧する。


『なんだあ? その目はよお!』


 葛木は腰にぶらさげた剣を抜き、すぐさまあおいちゃんを真正面から斬ろうとしたが、あおいちゃんは華麗に跳躍してかわし、空から下降する勢いで葛木の頭を剣で斬った……はずだったが――


『な!?』


『効かねえな』


 確かに葛木に剣の刃は当たってるはずだった……。


 だが、葛木の頭は鋼を斬ってるかのように()()()()まるでダメージが通らなかった。


『その程度かよ! 雑魚が!』


 葛木は素手であおいちゃんの腕を掴み、ボールを投げるみたいに、その辺の店に直撃させた。


『きゃああああ!』


 投げ飛ばされたあおいちゃんも、打ちどころが悪かったのかそのまま血を流して倒れてしまった。


 それを見ていたギャラリー達も、これはさすがにヤバいと冒険者か警備員を呼び始めた。


 あのこの街に来る前の森で襲い来るモンスターの群れをあっさり倒したあのあおいちゃんがいとも簡単に倒されてしまった。


 あおいちゃんも油断していたわけではない。多少憤っていて冷静じゃなかったところもあったが、それでも十分な力で葛木を斬ろうとしていた。


 にも関わらずあっさり倒されてしまった。


 どうやら葛木というクズ男は、それほどまでに強い力を持っているということだ。


 もちろん、この世界に来る前からここまでの力があったわけではない。力は元々強かったが、それはあくまで人間の範疇を超えない程度であったからだ。


 だがこの世界に来て力をつけたのか、奴はとても強いあおいちゃんを倒せるほどの戦闘能力を持っていた。


 ……なら最初から勝ち目なんて無かったんだ。あいつと出会った時点でもうBADENDなんだ。


 俺は心底自分に絶望した。この果てしないくらいの運の悪さ。人を人とも思わないあいつだけ恵まれて、素行は良くなくともなるべく善良に生きてきた俺はこんなにも弱い。


 ……なぁ、神様よ。これはあまりにも不公平じゃないか?


『あ……お……』


 俺はあおいちゃんに届かないと分かっていても手を伸ばした。あおいちゃんに助けを求めているわけじゃない。ただあおいちゃんを助けてほしかった。


 そもそも葛木がこうしてあおいちゃんに手を出したのは俺のせいだ。


 あおいちゃんは何も悪くないのに、巻き込まれてしまっただけなんだ。


 だから俺よりもあおいちゃんを助けてほしい。それが今の俺の一番の願いだった。


『おい! 黒崎! そういえばお前の下の名前なんだっけ?』


『……』


『無視してんじゃねえよ!』


 葛木は無視した俺が気に入らず思いっきり蹴りつけてきた。


 だが意識朦朧としてる俺には口を開く事もできないし、今俺を蹴ってきたようだが、蹴られた感覚すらほとんど無くて、痛みも感じなくなってきた。


『なあ、この世界の名前についてのルールは知ってるよな? 俺は見てみてえんだよ……お前のフルネームを呼んで、天から光が差してお前を包み込んで死んでいく様をなあ!』


 葛木もこの世界の掟についてちゃんと把握していたようだ。


 葛木は本名を呼んだ瞬間に起きる出来を見てみたいようだ。そのためなら、俺の命すら躊躇いなく捨てさせるというサイコパスな発想。あぁ……嗤っちまうほどクズだな、お前は!!!


『……』


 あ、ダメだ……意識が遠のいていく……。


 これが死なのか……?


 あぁ……命が尽きる時って案外あっけないものだな……。


 俺はとうとう意識を失い、死んだ――――――と思ったのだが。




 ――思ったより、早く再会したな――


 どこかから声がする。


 どこかで聞いた声だ。


 そう昨夜見たあの悪夢の中で俺に声をかけてきた謎の男だ。



 ――奴を殺したいとは思わないか?――

 

 ……。


 ――奴をこのままにしてもいいのか?――


 ……。


 ――立ち上がって殺すべきだ――


 ……。


 ――あおいちゃんとかいう娘がどうなってもいいのか――


 ……良くない。


 ――ふははは! 元より貴様には奴を殺す以外の選択肢はないがな!――


 で、どうすればいいんだ?


 ――ようやく奴を殺す決心したようだな――

 

 ああ。


 ――ならば、貴様に力をくれてやる――


 ちから……?


 ――貴様は()()()()()だ――


 壊れた……歯車……? 


 どこかで聞いたようなフレーズだな……。


 ――ふははは! さあ行くがいい! 裁きの時間だ!!! 葛木を殺せ!!!――


 ああ。殺してやる……殺シテヤル。


 謎の男の力により、俺の意識は戻っていく……積もりに積もったこの憎悪を力に変えて……。



第8話を読んで下さり、ありがとうございます。

第9話なんですが、明日から仕事の為、投稿ペースが遅くなってしまう可能性があります。

早く投稿できるように心がけてはいるので、ご理解の程宜しくお願い致します。



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