第157話『味方』
お待たせしました。
第157話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/21改稿しました。
――ここは、神の居城。
幾多の神が住む聖域の城。
――視よ。この神々しさを。
――崇めよ。この儼乎たる神の城を。
その美しさは、下界でも類を見ることはない。
そんな夢のようなお城に、いつか行ってみたいな☆
『って、ホントに来ちまったああああああああああああ!?』
先ほど、あいつが、俺と共に瞬間移動して、到着した場所は、俺が目指していた神の居城だった。
いやいや、着くの早すぎない? 最終地点にたどり着く前に、もっとこう、色々な出会いがあって、数々の苦難が待っていて、それをどうにか乗り越える……そういうシナリオを想定してたんだが……。
まあ、確かに楽であることに越したことはないが……でも……。
――黒歴史回想――
『お前らなんかに、俺の行く道を邪魔なんてさせねえ……! お前らが力で黙らせるなら、俺は頭を使って逃げてやる。どんなに汚い手段を取ろうとも、外道に成り下がろうと……。これが誰よりも弱い俺クズの戦い方だ』
――黒歴史回想終了――
って(心の中で)啖呵切った手前、格好がつかなさすぎるな……と思うわけですよ。
これがもしラノベの世界とかなら、とんだクソストーリーだな。きっとこのストーリー考えた奴は、相当頭おかしい奴なんだろうなぁ……。
『ダスト君? 大丈夫?』
俺を助けてくれた本人が、心配そうに話しかけてきた。
『あ、あぁ、大丈夫だ……』
『それなら良いけど……』
『それにしても、まさか、あんたが助けに来るとはな……魔王』
先ほど、俺を助けてくれたのは、魔王だった (姿は幼女)。
ここに瞬間移動した後、少し説明してくれたが、少し前まで時が止まってたのに、何故、火山地獄にいた俺をすぐに助けられたのか……。
それは、魔王が実は俺のことをずっと守護神してて、時が動いた直後に、俺がいなくなったことに焦り、瞬間移動で俺の事を探し回ったらしい。その結果、火山地獄まで来て、俺を助けることができた……というわけだ。
『ストーカー? いや違うよ? 儂はダスト君を助けたくて、ずっと遠くから見守ってただけだよ? むしろ感謝してほしいくらいだよ!』
『それをストーカーって言うんだよ、バカタレ!』
『バカタレとは何だ! 命の恩人にバカタレ! なんて言い放つ子に育てた覚えはないぞ!』
『親か! てめえは!』
『大体、ダスト君が食料に困ってた時にバナナ送ったのは儂なんだからな! 感謝しなさいよ!』
あぁ、あれも魔王だったのか。あの時すげえ不気味だったけど、正直助かったからな……仕方ない、感謝してやるか。
『あーはいはい、カンシャシテマスヨー』
『感謝してないだろ!』
その後も、バカ魔王は喋り足りないのか、ずーーーーっと、しょうもない話題を振っては、一方的に話を聞かされた。その内怒りを忘れて別の話題へと切り替わった。
『それでさー、ゴールドちゃんがね――』
あれから2時間くらい話してるけど、まだ終わらないの……? もう話聞きすぎて頭痛いんだけど……。
いい加減質問したいこともあるので、俺は魔王の話を遮って質問しようとした。
『なあ、魔王、何で俺をここに――』
『連れてきたかって?』
突然、横から現れたスーツ姿の男が、まるで俺の心を読んでいたかのように、そう言った。
あれ? この男の声……どこかで聞き覚えが……?
『おお、神様じゃないですか!』
あの魔王が珍しく人に敬語を使ってる。
え? ていうか今、神様って言った? って心の中で言うと、神様がそれに答えた。
『うん。私が、今の神様だよ』
また俺の心を読まれただと……? この神様ってのも、ブロンズと同様に心を読めるのか?
『神様……守護神とは違うのか?』
と質問すると、魔王が血相を変えて、俺にこう指摘してきた。
『こら! ダスト君! 神様にはちゃんと敬語を使いなさい!』
親かてめえは! ってツッコみたかったけど、これさっきも言ったよな?
『いやいいよ』
神様は笑顔でそう言った。
『良いんですか!? でも……』
『私は元々そういうの気にしない方だし、それに……彼を一方的にこの世界に召喚んだのは私なんだし』
『なんだと?』
今、聞き捨てならんことを言ったな。そう思っていると、またしても先回りして回答してきた。
『君はこの世界に来る直前に、暗闇の中で一回私と話をしたよね』
『話……?』
確かにどこかで聞き覚えがある声だとは思ったが……。
俺がこの世界に来る直前といえば……突然辺りが暗闇に包まれて……その後、声が聞こえたな。ああ、そうだ。あの時の声の主は、今目の前にいる神様だ。
すると、神様はもはや当然のように俺の心を読み、うんうんと頷く。
『そうか、あんただったのか……なら話は早い……俺を元の世界へ戻してくれ』
これが今の俺の本来の目的。来たくもない世界に来ちまったからな。
報いを受けてもらうだか何だか知らないが、これ以上の面倒はごめんだ。
もう帰りたい。
……まあ、未練が無いと言えば嘘になるが、帰ってしまえば、もう関係ない。
味方だと思ってたあいつらも、アクタという敵の下にいる。
俺には味方なんていない。
『本当にそうかな?』
『え……』
『あに……アクタは、どう考えてるか分からないけど、ブロンズちゃん達は違うんじゃない?』
『ブロンズ……?』
ツインテールで、セーラー服を着たブロンズと会った夢を思い出した。夢の中での彼女は、いつも通りに、俺に接してくれたと思ったら、突然泣き出して、俺を引き止めようとしていた。
でも、あれは……。
『夢じゃないよ』
『え……?』
『あれはね、アリスの夢見魔法で、彼女は君の夢の中に入ったんだよね』
夢見魔法って何だよって思ったが、ここまで話せばどういう魔法がだいたい見当がつく。
『な……いやいや、そんな……まさか……』
信じがたい話だが、確かにあの夢の中のブロンズはあまりにも解釈通りの動き方をしていた。俺の心を抉ってしまうほどに……。
『あれは、ブロンズちゃん本人だよ』
嘘だ、と言いたいところだが、なぜだろう? 神だからなのか、この神様の言う事を不思議と嘘だとは思えない。
『うん。神は嘘をつかないよ』
……そうか……そうだったのか……。
ブロンズのあの言葉は、全部本当だったのか……。
俺は、今一度あの夢の内容を振り返る。
『…………………………』
そっか……ブロンズは……いやブロンズちゃんは、たとえアクタの味方だとしても、俺を裏切ったわけじゃなくて、ずっと俺を探していたんだな。それなのに俺は……。
『あれ?』
なぜか涙が流れた。何でだろう?
『……君はずっと味方が欲しかったんじゃないかな』
『味方……?』
俺は元いた世界では、いつも一人で、しかも運動も勉強も人一倍できなかったからなのか、教師達に人格否定されて、クラスメートからもいじめを受けていて……世の中敵だらけだった。味方なんていないと思ってた。
だけど、もし味方がいるなら……と心の底ではずっと夢見てたんだ。
こんな俺を認めてくれる味方が欲しいと。
全く、俺は何やってんだよ……。
『俺はバカタレどころか、超バカ野郎だよ……』
俺の中にあった疑心は、後悔に変わった。
あの夢でブロンズちゃんに酷い事をしてしまった。今はただ、それを謝りたい。
『さて、君はこれからどうする?』
もう分かってるくせに、神様はそう質問してきた。
俺の答えは決まっている。
『ブロンズちゃんに謝りに行くよ』
第157話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、25日(月)~27日(水)に投稿予定です。
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