第156話『いつになったら、この悪夢は終わるんだ……』
お待たせしました。
第156話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/19改稿しました。
今では懐かしいが、俺が魔王城に召喚されてから感じていた謎の視線。
誰が一体何のために俺を監視していたのか、ずっと疑問だった。
――ダークネスに教えてもらうまでは。
その犯人を知った時、俺はいつかそいつに問いただしてやろうと思った。
まあ、その前に俺は犯人に一回殺されてしまったが。
300年後も、どうやら犯人はもう死んでいたようなので、もう二度と真相は聞けないんだと思っていたが、犯人は突如幽霊として復活した。今では肉体も復活している。
これで真相が分かる。俺は二人だけで話し合える、その機会を伺っていた。
そして、俺は今その犯人である、シアンの中にいる悪魔とやらと対峙している。
『どうした? 人間。私に何か聞きたいことがあるのではないか?』
俺を種族名で呼ぶこいつは上から目線でそう聞いてきた。犯人であることがバレたわりには余裕の表情をしているのが不気味だ。
『ああ、あるぞ。あんたは――』
質問する前に、フライパンで全力で叩かれたような激しい頭痛に襲われた。
痛てえ! なんだこれ!
って、あれ?
頭を押さえながら、周りを見てみると……。
『時が……止まってる……?』
シアン (悪魔)の方を見てみると、いつのまに俺に炎魔法を放っていた。
その放たれた炎は俺の目の前で銅像と化している。もし、今すぐ時が進もうものなら、俺の顔面は骸骨になるまで燃やされていたことだろう。
完全にあらかじめ炎魔法を発動していた者のやり口だった。ということは、シアンは俺が対話を持ちかけてくる展開を予想していたことになる。
『助かった……ていうか、こいつまだ俺を殺す気でいたのかよ……』
やっぱり1対1の対話は危険だったか。
一か八か、どうにか神の居城まで護衛してもらえないかと、取引しようと思ったが、叶わぬ願いだったようだ。
なぜ時が止まったのかは分からないが、この好機を逃す手はない。
時が止まっているうちに、まずは炎から離れる。念の為慧眼魔法で罠がないか辺りを捜索する。
『なさそうだな』
これでひとまずは命の危機は去った。時を止めた者がどのような人物が知らないが、少なくとも今ここでシアンに殺されることは避けられた。
ひとまずでも安堵した俺は、その場で立ち尽くす。
………………。
いや、よく考えたら逃げた方がいいのか。いつ時が動き出すか分からないしな。
俺はその場から遠くへ離れ、どこか隠れられる場所を探した。
やっぱり、ここの住人達も動く気配もない。マゼンダやバレス、ケイデスと、女神であるヒナさんまでも止まったままだ。
………………。
さて、どうしたものか。
………………。
静かだ。
まあ、誰も動かないし喋らないし……当然だが……不気味だな。
………………。
………………。
――それから10分後。
長くね?
もしかして、このまま時が止まって、俺はこの世界に取り残されたまま……?
そんなまさか……まさかな……。
――それから、1時間後。
おいおい、マジかよ……。
マゼンダが……マゼンダが、こんな下着を穿いていたとは!!!
時が止まった時にまず何をしたいかと考えた時に思い付く事といえば、道路の真ん中で寝るとか、金庫の金を盗むとか、様々だが、超紳士の俺の場合は、真っ先にスカートの中を覗く方を思い付いた。
最初はもちろん抵抗したさ。時が止まってるとはいえ、スカートの中を覗くなんて……と思ったさ。
だけど、耐えられなかった。時が止まってからまだ数時間だが、誰とも喋れないこんな異常な状況に俺の精神は狂いそうになったんだ。
これはあくまで俺の心を保つために必要な行為だ。そうだ。決して不健全なんかではない! 断じて!
――それから、更に3時間ほど経過した。
『ふむ……悪くないな』
俺は、今全裸だ。俺の思考回路も徐々にバグってきた。
時が止まってるからか寒さも暑さも感じない。なので風邪を引くこともない。動かないとはいえ、人の目がこちらを向いている状態で俺は生まれたままの姿を晒している。
全身が震えるほどの解放感が溢れ、何かに目覚めそうだ。
『あはははははははは』
――それから更に12、3時間くらい経った……と思う。知らんけど。
全裸も飽きてきたので服を着た。どうせなら女装でもしてみようかと思ったが、この町の服屋……こんな時に限って、商品が無地のシャツとズボンしかない。あとは、女児用のスカートもあったけど、さすがにサイズ的に着れるわけがない。女装は諦めよう。
落胆しつつ、町を一周した。
そういえばあれから時間が経ったけど、腹が減らないな。これも時が止まった影響か? 食べ物を見ても何も思わなくなった。
『………………』
なあ、まだ時が動かないのか? もう飽きたから、いい加減動き出して欲しいんだが……。
更に更に、多分日くらい経った…………。
『………………はっ!』
やべえ……1日中寝てた。
まあいいか。相変わらず、止まったままだしな。
……そういえば、前にも似たようなことがあったな。
俺はシアンの悪魔 (姿は炎の女神)に殺されてから、およそ300年間もそこにいた。時間が経つにつれて、その時の記憶は曖昧になってきたが、今はあの時の感覚を思い出そうとしている……。
『……夢なら醒めてくれよ』
更に更に更に……どのくらいかな? 多分1週間くらい経った。
『この町、もう飽きてきたな』
どいつもこいつも同じ表情。同じ立ち位置のまま止まってるからそりゃ飽きてくる。罪悪感も死んできたので飽きるまで、マゼンダとバレスを主に、同じ歳くらいの女性のスカートの中も覗きまくった。
胸も揉んでやろうと思ったけど、身体全体が銅像のように硬く、とても揉めそうにもなかったのですぐにやめた。俺が銅像フェチだったら、また話は別だったんだろうけど……。
はぁ……。
いい加減、誰かと喋りたい……。
『喋れよ…………誰か喋れよおおおおおおおおおお!!!』
そう叫んでも、町全体に虚しく響くだけで、何も起きない。
……もういいや。
別の町に行くか。
ワンチャン、俺みたいに動き出している奴もいるかもしれないしな。
もうここに戻ることはないだろう。
赤髪ちゃん、バレスさん、ケイデス、ヒナさん、トウカちゃん、そしてあおいちゃんと、あおいちゃんに取り憑いた悪魔。
さよなら。もう会うことはない。
――更に更に更に更に……おそらく1ヶ月くらい経った……。
俺はあれから、道中止まっているモンスターを疎ましく眺めながら、色々な村や町や国を巡ってきたが、その9割くらいが廃墟と化していた。残りの1割は僅かな人数ながらも、村の復興の為に勤しんでいる者ばかりだ。
なんという終末世界感。時が動いたとしても、普通に人不足で供給が追いつかず、人類が滅びる未来が見える。
『はぁ……今日も収穫なしか……』
俺は村の宿屋の部屋に勝手に上がり込んで、ため息をついた。
『いつになったら、この悪夢は終わるんだ……』
――それから、数年経過した。
『はえー、こんな所に火山があったのか……』
俺は旅の途中で訪れた国の図書館で盗……借りてきた本をパラパラとめくる。
なるほど、ここは絶対危険領域の一つで、火山地獄と言うらしい。
もっと情報を知りたい俺は、そのページを読み込んだ。
『なになに?』
「めっちゃ暑い上に、マグマに触れるとただじゃ済まない。絶対近づくな! マジでヤバいから!」と書いてあった。
いや、語彙力……。
まあ、要するに俺がいた世界の火山と大体同じか。
だけど、今は……全然暑くない。
マグマも止まってるし、正直、危険さを感じない。まるで粘土で巨大マグマを作ったみたいだ。
まあ、それも時が止まってるからからだろうな。
『……試してみるか』
俺は適当に雑草を引き抜き、マグマに投げた。
結果、雑草はマグマに落ちず、ただ上に乗っかっただけだった。
『まあ、そうなるか』
俺は、マグマの上の雑草を取ろうとした。
――その時だった。
何の前触れもなく、時が動き出した。
すると、当然、火山の活動も始まる。
『あああああああああああああああ!!!!!!』
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!
ヤバいヤバいヤバい!!!
尋常じゃない熱気が、肌を焦がす勢いだ。
『確かに、時が動いて欲しいと願ってたけど、何も今じゃなくても!!!』
俺は、急いでその場から離れようとする。
だが、めまいと吐き気を催してしまい、その場から動けなくなった。
『はぁ……はぁ……や……やべえ……は……はやく……はな……れない……と……』
俺はそのまま倒れ、意識が朦朧とする。
俺はこのまま死ぬのか……。あぁ、そうか、やっと俺は解放されるのか……あれ? 俺は何のために生きてたんだっけ?
――もうどうでもいいや。
『あ………………あ…………………………』
このまま、俺は…………もう…………。
『全く、君は世話が焼けるね』
え? この声は……?
俺はなんとか顔を上げて、そいつの顔を見る。
『お……お前……は……』
『まず、ここから抜けようか』
そう言うと、俺はそいつと共に別の場所へと瞬間移動した。
あ、ここは……この場所は……。
第156話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、23日(土)か24日(日)に投稿予定です。
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