第154話『暗躍』
お待たせしました。
第154話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/18改稿しました。
化物との戦いが終わって、ゴールド達はその場を後にし、比較的モンスターが少ない安全な地へと重い足を運んだ。
今夜は、そこでキャンプをすることにした。
母への想いが溢れるみどりは泣きつくした後、重苦しい疲労に襲われてしまい、眠るように意識を失った。そんなみどりをゴールドとブロンズの二人がかりで運んだ。
『……なあアリス、結局アミっちはどうなったんだ?』
『アミさんなら生きてますよ……私の安否確認魔法に間違いはありません。まあ、どこにいるのかまでは分かりませんが……』
『そっか……』
『…………………………』
先ほどの化物との戦いで激しく疲弊し、思考力すら無いに等しい状態になっているからというのもあるが、アミのことが心配というのもあり、会話どころではない。
そんな重苦しい空気の中、噂の彼女は現れた。
『お、いたいた!』
『え……? アミさん?』
『心配かけたね』
アリスは誰よりも早く、アミの元へ駆けつけ、泣きついた。
『アミさああああああああああああん!!!!!』
『もう……アリスは、私が生きてるって分かるはずなのにな……仕方ない娘だね』
アミは優しい母親のようにアリスの頭を撫でる。
『アミっち!』
ゴールドとブロンズも、アリスに続いてアミの元へ駆けつけてきた。
『ゴールドちゃん! ブロンズちゃん!』
アミは、ゴールドとブロンズも一緒に抱きしめた。まるで家族愛のような尊いものを感じさせるが、アミが好きすぎるアリスは少しムッとした表情をした。
『アミお姉ちゃん……無事で良かったわ!』
『うん、私もみんなが無事で嬉しいよ』
『アダジもうれじいよおおおおおおおおおお!!!!!』
ゴールドは工事の音くらいの大音量で泣き出した。あまりにも騒々しいので、全員思わず耳を塞いだ。
『ゴールド姉! いくらなんでも声が大きすぎるわ!』
『だっでええええええええ!!!』
『全くもう……みんな泣き虫だなぁ……』
アミはそう言って微笑んだ後、ゴールドが泣き止むまで、抱きしめたまま手を離さなかった。
――そんな中、シルバーは……。
《シルバー視点》
『……』
お姉ちゃんを抱きしめるアミさんを、遠くから、ただ見ていた。
別に嫉妬なんて微塵もしてないけど、私は倒れているみどりさんを放っておくわけにもいかなかったので、ここにいる。嫉妬なんてしてないけど。
『……』
――やっぱり考えてしまう。先ほどのあの時の事を。
――みどりさんのお母様が消滅する少し前。
みどりさんと化物との戦闘中に、突然私以外の時が止まった。
訳が分からないまま、その辺をうろついていると、謎の声まで聞こえた。
とても優しい声だった。魔王様の声と雰囲気が似てるかも。
その謎の声から告げられたお姉ちゃん達を助けるための条件……それは、私の正体を知ることと、それを知った上で、どう行動するべきか、その旨を全て教えてくれた。
『え、私が……!?』
衝撃の事実だった。
最初は、とても信じられなかったが、不思議とすんなり受け入れられた。
でも、疑問に思うところもある。
自分がそんな大層な存在であるわりには、私の魔力は平凡だ。
私にはお姉ちゃんのように、力があるわけでもなければ、ブロンズちゃんみたいに頭が良いわけでもない。本当に特別な何かなんてない。
なのに、何で……どうして……?
――やっぱり動揺するよね――
『……はい』
自分がそういう存在である事自体は、受け入れられたとはいえ、心の底は動揺しないわけがなかった。震えが止まらない。頭がぐちゃぐちゃになって、おかしくなりそう。
でも……それでも……皆を守らないと……。
――大丈夫?――
『はい。大丈夫です。それより皆を助ける方法を教えてください』
――分かった。まずはね――
謎の声から教えてもらった事を、まとめるとこうだ。
①まずはアリスさんの秘策に失敗した、アミさんの救出。
そもそも、その秘策とはアミさんが敗北し、化物に喰われそうになった時に、小さくなる魔法を発動し (その魔法はアリスさんがかけた)、自ら化物の身体の中に入り、内部から攻撃する、というものだったが、化物の中の細胞が思ったよりも強くて、化物と戦ったばかりで疲弊しているアミさんでは、まるで歯が立たなかった。
まるで、バイ菌のような扱いを受けているアミさんだが、どうやら化物の体中を逃げ回って、しぶとく生き残っているらしい。
なので、粒子変換魔法“遠隔操作”を発動し、化物の中のアミさんを粒子化し、脱出させてから、こちらに引き寄せることで、アミさんを救出できる。ただ、その粒子化を解除するのに、少なくとも10分はかかる。
②次は、あの化物……みどりさんのお母様の意識を取り戻させること。
これに関しては、ホントに驚愕した。その正体が、みどりさんのお母様だというのもあるが、人間が化物になる魔法があることに衝撃を受けた。
それで、そのみどりさんのお母様だが、精神魔法で意識だけ復活させることができる。けど、これはあまりにも酷だ。意識を取り戻せば化物になってからの記憶が強制的に頭に流れてくる。
つまり、自分の意志ではないとはいえ、自分が、罪のない人々を喰い殺したという事実を、まるで自分がやったかのように、自覚させてしまうことになる。
本当はこんな事したくないし、他に方法がないか聞いたけど、これほど効率的且つ成功率が高い作戦はないし、それにこのままだと君のお姉ちゃん達も救えないし、もっと多くの犠牲者を出すことになるよ。と言われてしまい、やむを得ず私も覚悟を決めて臨むこととなる。
③最後にみどりさんの身体を回復することと、意識も取り戻すこと。
これも治癒魔法と、精神魔法を使うことで遂行できる。
以上。これらを間違えずに行えば、みんなを救えるようだ。
――本当にこれで救えるのか疑問がないわけじゃない。
そもそもこの方法は特定の魔法を使うことが前提だが、私のレパートリーにはその特定の魔法なんてない。
その旨を伝えると、謎の声はこう言った。
――それは大丈夫だよ。今から君の前世の記憶を蘇らせれば、魔法を使えるようになるから――
『え? それはどういう――』
満足に疑問を放つ時間さえ与えずに、上から高速でやってきた光が、私の頭の中に入った。
『あ……ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
すると、頭の中に前世の記憶が滝のように押し寄せてきた。
頭がガンガンする。どうにかなってしまいそうだ。でも、どれも懐かしい記憶だ。全ての記憶に、喜怒哀楽に魑魅魍魎が跋扈していた。
少しすると、記憶のインストールは完了したが、あまりの膨大な情報量で、すぐに処理しきれず、少し呆けていた。
――あ、あの大丈夫?――
謎の声は、本気で心配そうなトーンで聞いてきた。
『………………はい』
――ホントに? 辛かったら言ってね――
『もう大丈夫ですって』
私は全てを思い出した。もはや私は私ではない。
『それに、私を誰だと思ってるんですか?』
――そのしゃべり方……どうやら、完全に思い出したみたいだね――
『ええ、ありがとうございます。神様』
そう言うと、私はすぐに皆さんを救うための準備をした。残念ながらみどりさんのお母様であるわかなさんだけは、救えそうにないが、あとでどうにでもなる。
『よし、これで手筈は整いました』
あとはみどりさんに任せましょう。
大丈夫、あなたならできますよ。
私と……私としても、信じています。
『おや?』
いつの間に神様の声が聞こえなくなりましたね。きっと、もう大丈夫と判断したのでしょうね。
さて、そろそろ時が進みます。
お姉ちゃん達の前では、元の私に戻らないとですね……。
――そして今に至る。
第154話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、本日17日(日)~19日(火)に投稿予定ですが、今週は特に仕事の状況が読めないため、場合によっては、20日(水)か21日(木)もありえます。
もちろん、一刻も早く、皆さんに最新話をお届けできるように心がけたいと思います。
こんな状況ですが、何卒宜しくお願い致します。