第150話『セールスマン再び』
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第150話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/13改稿しました。
『ゴールド様! お久し振りですね! 何かお困りではないかと思い、こちらに赴いた次第でございます!』
ゴールド達の前に現れたスーツ姿の怪しい男の名はヘロン。
およそ300年前、魔王城に戻る事になったゴールド達の前に現れた怪しいセールスマンだ。
その時は盗賊団側についていたが、今は完全にこちら側についている。
まあ、そんな事は誰も覚えてないだろう。長い間姿を現さなかった故に仲間意識はほとんどないに等しい。
『お前は……確か…………えっと………………メロン!』
ゴールドに至っては、名前を間違える始末である。そもそも覚える気がないのもあるが……。
『メロンではございません! 私はヘロンでございます!』
と言いつつ、ヘロンは名前を間違えたことなど気にせずヘラヘラしている。何ならこのボケを待っていたかのようにメロンを持っている始末だ。
なんでメロン持ってるんだよ! とツッコミたくなるが、値札が貼ってあるところを見ると、彼が扱っている商品の一つなのだろう。
『あ、そう』
ゴールドは心底、興味無さそうな顔をしていた。逆になぜここまで興味を持たないのか……と、ブロンズとヘロンは、少し思った。
『ところで、メロン食べますか?』
『おう』
(メロンは食べるんだ……)
『1玉銀貨5枚です!』
『ちっ、金取るのかよ……まあいいや、はいこれ』
ゴールドは言われた通り、銀貨5枚を、しぶしぶ渡した。
『毎度ありがとうございます!』
ゴールドは、果物ナイフを取り出し、メロンを切り抜いて、ブロンズとアリスにも分け与えた後、三人でむしゃむしゃと食べた。
『美味しい!』
『ね、美味しいわね!』
ブロンズとアリスは、あまりの美味しさに頬に手を当てた。
一方、ゴールドも美味だと思っているものの、ここで美味しい! と言ってしまえば、ヘロンの商品を認める=ヘロンの商品の目利きがいい=ヘロンは凄い! ……となってしまう。
『弊社のメロンはどうですか?』
『ま、まあまあだな!』
とにかく、ヘロンを認めたくないゴールドは、意地でも美味しいとは言いたくないのだ。
(もう……ゴールド姉ったら……いじっぱりなんだから……)
『シルバーと、みどりとアミっちの分も残しておくか』
『そうね』
ゴールドは、残りの切り分けたメロンをラップで包み、鞄の中にしまった。
『ふぅ……メロメロン旨かったな』
ゴールドの方言では、メロンはメロメロンと言うようだ。どうでもいい。
『って、メロン! ……じゃなくてケロン! お前生きてたのか!』
ゴールドはヘロンの存在に今さら気がついたのか、驚愕の表情を浮かべながら、そうツッコんだ。
(今さら、そこにツッコむのね……)
(というか、また名前間違えてますね……)
ヘロンは約300年前に出会っている。ヘロンも普通の人間であれば、そこまで寿命はもたない。
だが、ゴールド達の目の前にいる男はヘロンの子孫でも、そっくりさんでもなくれっきとした本人だ。
『お前、どうやって寿命伸ばしたんだ?』
『企業秘密です!』
『えーなんだよ~教えてくれたっていいだろ?』
『申し訳ございません。規則ですので、お教えする事はできないのです……』
ヘロンはそう言って、一瞬意味深にブロンズに視線を向ける。
(……!)
『けっ、そうかよ。まあ、どうでもいいけどよ』
『ねえ、ゴールド姉』
『なんだ?』
ブロンズは、ゴールドにヘロンの心を読んだ内容の旨を耳打ちをした。
『ほうほう……なるほどな! うんうんよく分かった! 詳しい話はまた後でな!』
『うん』
ゴールドは、途端にあからさまにニコニコ顔になる。
(なんて分かりやすい……)
ブロンズもヘロンも、これには苦笑いを浮かべる。
『ねえ、商人さん』
『なんでしょう?』
『まだ、なにかあるでしょ?』
ブロンズがそう聞くと、ヘロンは待ってました! と言わんばかりに、大きく口を開けて、笑みを浮かべた。
『ええ、その通りです! やはり、あなたなら分かると思ってましたよ!』
営業魂がファイアアアアアアアしたヘロンは、両手で指パッチンをした。すると目玉商品と思われる虹色の剣が、ヘロンの真上に現れた。その光景は、まるで天からの授かり物のような神々しさだった。
なんて無駄に凝った演出なんだ……とツッコミたい気持ちを抑えて、二人は静聴した。
『この剣が何なのか……ブロンズ様なら、もう分かっていらっしゃいますよね?』
また意味深にブロンズに視線を向ける。
『ええ』
ブロンズはヘロンの心を読んでいるので、既に、虹色の剣の全てを理解している。
『それなら話が早い! 通常価格、金貨3枚のところを……本日特別価格で、な、なんと、金貨1枚! いかがでしょうか?』
『えぇ……胡散臭さすぎる……誰が買うんだよ……』
ゴールドからしたら、ただ虹色に塗装しただけの剣を、ぼったくり価格で売っているようにしか見えない。
『買うわ』
ブロンズが言った。
『買うんかい!』
ブロンズは金貨1枚を渡し、虹色の剣を受け取った。
『毎度ありがとうございます!』
『おい、ブロンズ! 何でこんなの買うんだよ!』
『それは彼の心を読んだからよ? 当然でしょ?』
そう言えば、大抵の人は (特にゴールド)納得する。
『お、おう……な、なるほどな……』
『ゴールド姉……この剣はどうやら、あの化物をより安全に倒せるものらしいの』
『あの化物を……?』
『ええ、この剣にはね――』
ブロンズは、虹色の剣について、ゴールドにも分かるように丁寧に説明した。
この虹色の剣には、斬りつけた相手の魔法のエネルギーを吸収する能力がある。あの化物が死にかけて爆発する前に、その剣で爆発魔法のエネルギーをすいとれば、化物は爆発せずに済むらしい。
『――というわけなの』
『なるほどなぁ……というか、あの化物って、最後、自爆すんのかよ……厄介にも程があんだろ……』
ヘロンは、それを口で説明せず、あえて心の中で説明し、ブロンズだけに伝わるようにしたようだ。
なぜそうしたか……それは、ゴールドの理解力が無さすぎて説明しても理解できないとヘロンが勝手に判断したからだ。ものすごく失礼な話だが、普段のゴールドの脳筋ぶりを見ていると、そう思わずにはいられないのであった。
(確かにゴールド姉に対しては、本当に噛み砕いて話さないと理解できないものね……)
ヘロンはそんなゴールドにも、分かりやすく説明する事ができるブロンズに対して、心の中で称賛と拍手を送った。
(はぁ……何なのよ、この男……)
そんなやり取りをしていると、何かが近づいてくる禍々しい気配を、全員が感じた。
『おやおや、ずいぶんと足がお早いお客様ですね~』
『嘘でしょ!?』
『おいおい、マジかよ……もうここまで来やがったのかよ……!』
それは、グルルルル……と、うなり声と共に、殺意をむき出しにしてやってきた。
それは、先ほどアミが食い止めていたはずのあの化物だった。果たして、アリスの秘策はうまくいったのか……息を呑む一同。
すると、殺意を感じたのか、シルバーとみどりも飛び起きた。
『あわわわわわ!? 一体何事ですか!?』
『さっきの化物よ!』
『ぎゃああああああ!!!!! 出たあああああああああ!!!!!』
『みんな、臨戦態勢よ!』
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次回は、9日(土)か10日(日)に投稿予定です。
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