第148話『その必要はないよ』
皆様
明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
そして、お待たせしました。
第148話の執筆が完了しました。
ぜひ、最後まで見て頂ければ幸いです。
※2024/08/12改稿しました。
『よくもやったな、この野郎!!!』
『ゴールド姉、待って!』
逆上したゴールドは、ブロンズの言うことなど聞かずに、一人で化物の頭めがけて、ハンマーをぶち当てようとしたが、化物の背中の触手が、ゴールドのハンマーをはたき落とす。
『しまった!』
空中で無防備になってしまったゴールドは、触手にはたかれ、地面に叩きつけられるが、しっかりと受け身を取り、落としたハンマーを回収し、体制を立て直す。
『ゴールド姉!』
『大丈夫だ』
と言って、グッと親指を立てる。
『次は私が!』
シルバーは弓を構え、化物の頭に照準を定め、魔法を発動する。
『大地魔法“アースクエイク”』
魔法を発動すると、まるで共鳴するかのように、地響きが起きる。
『な、なんだ!?』
突然の地震に戸惑うゴールド達。何かに掴まっていれば、なんとか立っていられるが、まともに戦える状態ではない。だが、それは、化物も同じだ。化物も複数の木に触手を絡ませて、なんとか立っていられる状態だ。
『アース様の力、お借りします!』
地響きが収まった。その途端にシルバーの弓矢が、銀色に輝く。
『シルバー?』
ゴールドもブロンズもみどりも、シルバーがこんな魔法を使える事を知らない。ただ大地魔法であることから、アースから教授されたのだと察した。
『覚悟して下さい。この弓はよく揺れますよ』
そう言うと弓を引き、矢は流星の如く化物の方へ向かう。そのスピードは俊足の化物ですら、目で捉えられず、回避できない程だ。
その技に名はないが、あえて命名するのなら“光の矢”という名がふさわしいだろう。
『は……? 一体何が……?』
誰一人として何が起こったか理解できなかったが、既に化物の頭には穴が空いていて、その穴から青い血が垂れている事から、シルバーの矢が、見事に命中したというのは理解できた。
化物は悲痛の叫びを上げ、のたうちまわり、地面に頭を何度も何度も打ちつけていた。
『は? 何であいつ頭に穴をあけられたのに、頭を打ちつけてるんだ?』
ゴールドがそう疑問を呟いていると、シルバーが顔色を悪くしながら説明した。
『大地魔法“アースクエイク”は、地震を起こす魔法……さっき、私が放った矢に、その魔法を込めることで、矢が当たった箇所に地震を起こす事ができるの……』
『……ん? どういうことだ?』
『矢が頭に命中したから、そこが震源となって、身体全体に地震が起きてるって事でしょ?』
ブロンズがそう解釈すると、シルバーはうんと頷いた。ゴールドはいまいち理解できてないようだが……。
『つまり、身体全体が頭を中心に揺れているってことよ』
『んん? 頭を中心に揺れてる……? うーん、よく分かんねえけど、めっちゃしんどいってことは分かった!』
『ま、まあ、そうね……ゴールド姉の解釈は、もうそれでいいわ』
これ以上の説明は無意味と感じたブロンズは、ため息をついた。
(まあ、ゴールド姉のそんな所も好きだけどね)
会話の最中に、突然化物は悲鳴ではなく、怒りの雄叫びを上げた。どうやら大地魔法“アースクエイク”の効果が切れて、体勢を立て直したようだ。
だが、矢に貫かれた事によるダメージと、頭を揺らされた感覚がまだ残っている。それは標的に向かって、まっすぐ走れなくなり、木にぶつかったり、転んだりと散々な状態だ。
『はぁ……はぁ……もう一発……』
シルバーは先ほどの魔法で、魔力をだいぶ消費したせいで、身体に大きな負担がかかり、立つことすら苦しい状態だ。にも関わらず、また、さっきの魔法を発動しようとしている。
『もうやめろ!』
ゴールドはシルバーにこれ以上、無理をさせないように、弓を引く腕を掴む。
『お姉ちゃん……わたし……』
わたしまだやれるよと目で訴えるが、ゴールドは、首を左右に振り、こう言った。
『もう充分だ』
『わ……わたし……は……………………』
シルバーは、なんとか身体を動かそうと抵抗するも、ついに力尽き、そのまま眠ってしまった。
『よく頑張ったな、シルバー』
ゴールドはシルバーを抱きかかえると、皆にこう言った。
『ブロンズ! みどりちゃん! 今のうちに逃げるぞ!』
『分かったわ!』
『は、はい! 皆さん、私に乗ってください!』
みどりは魔法で自身の大きさを、全員乗れるくらいのサイズに変身した。
『おう!』
ゴールド達はみどりに飛び乗った。
『アミお姉ちゃんとアリスちゃんは、どうするの?』
『逃げながら、回収していくつもりだ』
『了解しました! では先にアミさんとアリスさんの元へ行きますね!』
みどりがそう言って、駆け出そうとした、その時だった。
『その必要はないよ』
とアミの声が聞こえた。
『え? アミっち? どこだ?』
だが、辺りを見渡してみても姿が見えない。
『ここだよ。上見てみて』
『上……?』
上を見上げると、木の枝の上に堂々と乗っかっているアミの姿があった。
『アミさん?』
アミは皆からの視線を一斉に浴びると、すぐに飛び降り、こう言った。
『あの化物は、私が食い止めるよ』
『いきなり何言ってんだよ! アミっち!』
『シルバー姉の魔法のおかげで、あの化物もまともに動けない! 今なら、みんな逃げられる! アミお姉ちゃんも一緒に逃げよう!』
『それはできない。でも、もちろん、私も死ぬつもりはない。ただ、あの化物を放置する事はできないんだ』
『そりゃそうだけど、だからって、あの化物にまともに対抗できるわけがない! 一緒に逃げようぜ!』
『ごめんね。ゴールドちゃん……そういうわけにはいかないんだ』
『なんでだよ!』
『だって、あの化物は……多分、あの人なんだ』
アミは、悲しそうにあの化物を見つめる。
『……あの人?』
『さっき攻撃されて分かったんだ。あの痛み、あの温もり……忘れられるはずがない……』
アミは、そう言って出血するほど強い力で、握りこぶしを握る。
『アミさん……』
『アリス……後は頼むよ!』
アミはそう言い残し、化物に向かっていった。
『待て、アミっち!』
『行きますよ、皆さん』
アミを引き止めようとするゴールドを、アリスが引き止める。
『何言ってんだよアリス! まだアミっちが……』
『アミさんなら大丈夫です。私達にはまだ秘策があるのです』
『秘策……?』
『その件については後で説明します。今は逃げましょう』
『でもよ……』
ゴールドはどうしても納得がいかず、握りこぶしを握る。
『アミさんを信じて下さい』
アリスはゴールドの手を握り、真剣な目で彼女を見つめる。
『……分かったよ。行こう』
『うん……』
『そうですね……』
それぞれ納得はしてないが、アミを信じて先に遠くへ逃げる事にした。
『アミっち……絶対生きて帰って来いよな……』
第148話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、3日(日)か4日(月)に投稿予定です。
宜しくお願い致します。