第146話『心を読む少女、心を読まれる』
お待たせしました。
第146話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/12改稿しました。
《ブロンズ視点》
『失敗した……失敗した……ごめんね……みんな……ごめんね……お兄ちゃん……』
私はついさっきまで、アリスちゃんの夢見魔法で、お兄ちゃんの夢の中に入っていたけど、お兄ちゃんを説得できないまま、夢から覚めてしまい、私はテントの中で蹲っていた。
『私は……なんて無力なの……』
私は心が読める。だけど、厳密に言うなら、常に読めるわけじゃない。読もうと意識しないと、読むことができないし、それに、読むことができるのは、心の一部分に過ぎない。
例えば、私がゴールド姉の心を読もうとしたとする。その時に、もしゴールド姉が、料理の事を考えていたら、その料理が何かまでは分かるけど、細かい材料や料理の手順等は、全て読み切る事はできない。
この魔法は稀少とは言うけれど、決して万能とは言えない。
夢の中で彼に会った時、私は表情には出さなかったけど、内心驚愕していた。なぜなら、彼は心の中で私を呼び捨てにし、更に敵視までしていた。まるで別人のようだった。でも、その時の、お兄ちゃんの表情は、どこか悲しげだった。
だから、私はお兄ちゃんは、心にまで嘘をついていると分かった。
だけど、お兄ちゃんは、なかなか心を開いてくれなかった。
でも、私は諦めなかった。とにかく、お兄ちゃんの本心を探る為に、心を読むのではなく、自ら口に出させようとした。
結局何を言っても、ダメだったけど……。
私もこれ以上、どうすればいいか分からず、去っていくお兄ちゃんに向かって、ただ叫び続けただけだった。今、思い返してみると、なんて恥ずかしい……。冷静さを欠けば失敗するに決まってるのに……。
『何やってるのよ……私……』
私は夢から覚めてから、自己嫌悪に苛まれ、テントの中に引きこもった。ゴールド姉やアミお姉ちゃんにも心配をかけてしまい、なんとも情けない姿を晒している。
今の私達は、お兄ちゃんを探す旅の途中。これから、お兄ちゃんが居ると予想される村や国に行くところ。だけど……私は今、この有り様で前に進めず、このまま探しに行っても、きっとみんなに迷惑をかけてしまう。
『私……どうすればいいの……?』
『どうすればいいって? そりゃお前、ダストっちに直接会いに行って、もう一回説得しに行けばいいじゃねえか』
『ゴールド姉……』
どうやら、私の独り言が外に漏れてしまったようで、それを心配したゴールド姉が、テントの中に入ってきた。
『隣いいか?』
『うん……』
ゴールド姉は、私の隣に座る。
私はゴールド姉の真意が分からないので、心を読んでみた。
『……』
『ブロンズ?』
『そう。分かったわゴールド姉』
ええ、そうね。ゴールド姉がその気なら、お兄ちゃんの事は任せる。それがいい。だって私じゃあ、お兄ちゃんを連れ戻せなかったから……。
私はその場から立ち去ろうとした。
すると、ゴールド姉は私の腕を強く掴んだ。
『待てブロンズ。話はまだ終わってないぞ。座れ』
この時のゴールド姉は、不機嫌な様子で少し怖かった。
説教でもされるんじゃないか、と思いながら、恐る恐る座り直した。
『なあ、ブロンズ……お前、さっき、アタシの心を読んだから遠慮して立ち上がったのか?』
『え?』
『それとも……ダストっちを一回連れ戻せなかったから、もう諦めて、アタシに任そうとしたのか?』
『それは……!』
まるで心が読まれてるみたい……いつも心を読む側の私が心を読まれるなんて……。
『そうなんだな?』
『……!』
もはや、図星を決め込むしかないと思い、私は言葉を詰まらせる。
『はぁ……全く、お前って奴は……』
ゴールド姉はそう言って、私の前に座り直した。
もはや心を読む気力もないけど、多分、これから私は頬を叩かれて、説教でもされるんだろうなと思いながら、私は覚悟して目を瞑った。
しかし……ゴールド姉は、私を叩くわけでも、説教するわけでもなく、優しい口調でこう言った。
『そうやって一人で抱え込むなよ』
『……え?』
『アタシがいる。シルバーもアミっちもみどりちゃんもいる。昨日、合流したアリスだっている……個性的だけど、こんなに頼もしい奴らが居るんだからよ……もっとアタシ達を頼ってくれよ』
『……!』
頼る……か。
思い返してみれば、確かに今まであんまり人に頼った事ないかも……。
『うん……そうだね……』
『おう、ダストっちに会ったら、一発ぶん殴ってやろうぜ』
ゴールド姉は、殴るジェスチャーをした。
『な、殴るの?』
『だって、こんなに可愛い妹を泣かしたんだからな……それ相応の報いを受けて貰わないとな……』
ゴールド姉は腕をパキパキ鳴らしながら、怒りの炎に薪を焚べた。
『ふ、ふふふ……そうね。私もいっぱい調……罵倒してあげないとね……』
私も怒りを灯して、薄情なお兄ちゃんを私好みにこらしめる想像をした。
『言い直してそれかよ……ぶっ……』
『『あはははははははははは!』』
私とゴールド姉は、おかしくなって笑い合った。心の底から笑ったのなんて、久々な気がするわ。
お互いの笑いが止まりかけた時に、私はゴールド姉の顔を見て、こう言った。
『ねえ、ゴールド姉』
『何だ?』
『ありがとう。大好きよ』
『お、おう! アタシも大好きだ!』
ゴールド姉は、私に大好きと言われ、少し照れながらも、大好きと言い返してきた。
『ふふふ、あとさっきから、ゴールド姉のパンツ見えてるわよ』
『なっ……!』
ゴールド姉は顔を真っ赤にしながら、慌てて、スカートを抑えた。
さっきから、スカートなのに両膝を上げてたから、横目からでもはっきりと見えていた。実は私の視線が下の方に泳いでいたのは言うまでもない。
『ふふふ、ゴールド姉って、ホント可愛いわ~』
『か、からかうなよ! そういうブロンズも最初からパンツ見えてたんだぞ!』
ゴールド姉は、私の顕になっているパンツに指を指した。同じように座ってたからゴールド姉から見えていても不思議ではない。
『あら、ホントね』
『一切、照れてないだと!?』
『まあ、女の子同士ならそんなに気にしないわ』
『そ、そうなのか?』
『そうよ。むしろ、ゴールド姉が気にしすぎなのよ。女の子同士で、あんなに恥ずかしがるのはゴールド姉くらいよ』
『気にしすぎって言ったって……だ、だって……女同士でも……パ、パンツ見られるの、恥ずかしいだろ……』
そんな可愛い事を言うゴールド姉に、かつてない程、キュンキュンした。
え、なんなの……? 私の姉……可愛すぎ……。
もっといじめたくなる……。そう思わずにはいられない。さすがゴールド姉……実の姉妹に、ここまで思わせるなんて……どこまで魅力的なのかしら! ゴールド姉の尊さは世界を救うわ!
『ねえ、ゴールド姉……』
『な、なんだよ……?』
『愛してるわ~!』
私は、ゴールド姉に飛び付くように抱きしめた。
『ブ、ブロンズ!?』
その後、私はゴールド姉に、あんな悪戯やこんな悪戯をした。
それから一時間くらい後に、なかなか出てこないゴールド姉と私を心配したシルバー姉やアミお姉ちゃんが入ってくると……それはもう、とても口では言えないような、混沌な状況になっていた。
後にこの事件を、“ゴールドちゃん乱れ桜事件”と名称した。
第146話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、30日(水)か31日(木)に投稿予定です。
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