第143話『壊れた変態は、夢の中でも変態なままだった』
お待たせしました。
第143話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/11改稿しました。
はいはい、どうも~ダスト……じゃないけど、ダストでーす。
ここは毎度お馴染みの夢の中でーす。相変わらずめっちゃ暗闇でーす。
今回はどんな夢を見るのでしょうね~。
と、呟いてしまうくらいには、夢の中に慣れてきてしまってるんだなと実感した。
いや、夢の中に慣れるって何だよ……。
……ってあれ?
いつもなら、場面が切り替わって、どこかの世界に放り込まれるんだが、今回はダークネスがいないからなのか、暗闇のまま何も変わらず、まるでバグったゲームのようにフリーズしてるみたいだ。
えぇ……これ、どうすればいいの……?
とりあえず歩けばいいの?
そう思った俺は、とにかく、めちゃくちゃ歩いた。それはもうすげえ歩いた。なのに、暗闇が続くばかりで、ただ疲れるだけだった。
それに、これだけ歩いて歩いて歩きまくっていると、あの真っ白空間を彷彿とさせる。また300年も過ごすとか勘弁してくれ。
まあ、幸いにもその時の記憶そのものはかなり曖昧になっていて、もうほぼ忘れている。とはいえ、思い出そうとすると拒絶反応が出る。ただでさえ元々、体調悪化しやすいのに、精神攻撃までされたら、もう生きていける自信もない。
だからこそ俺は諦めたくない。ただ訳も分からず死ぬなんてごめんだ。僅かな光でもいい。俺は少しでも、この状況を変えたい……。
ん? いや待てよ。そもそも、ここが夢の中なら、その内、目を覚ますはずだよな。
まさか300年も寝るわけじゃないし、そんなに気にする必要はなかったな。心配して損したわ。
そう安堵した、その時突然、遠くからコツコツと足音が聞こえた。
『ん? 誰かいるのか?』
しかも音が徐々に大きくなってきた。
『こちらに向かって来てる……誰だ?』
少なくともダークネスではなさそうだ。あの独特な気配を感じない。
『敵……という可能性もあるか……?』
まあ、もし敵だったとしても、ここは夢の中だし、どんな致命傷を受けようと関係ないか。
そんな事を考えて込んでいたら、いつの間にか、足音が止み、とても見覚えのある美少女が俺の前に立っていた。
『あら、こんな所で……どうしたの? お兄ちゃん』
俺の元にやってきた人物は、ブロンズだ。しかもなぜかセーラー服を着ていて、髪型もツインテールになっている。
ブロンズが夢の中に現れるなんて何気に初めてだな。
まあ、別に驚きはしない。そりゃブロンズが来た事自体は予想外だが、ここは夢の中だ。本来夢の中とは混沌なのだ。現実ではありえない事も、夢の中では充分ありえる。
そんなことより……セーラー服姿のツインテールのブロンズ……めっちゃ可愛い! さすが美少女と呼ばれるだけあって、めちゃくちゃ似合ってる! ヤバいって! 尊すぎるよおおおおおおおお!
『……お兄ちゃん? 大丈夫? どうかしたの?』
『……いや、どうもしないよ。ところでブロンズちゃんはなぜそんな格好を?』
話す時だけは落ち着こう。尊さで暴れるのは心の中だけ。
『さあ、知らないわ。ここはお兄ちゃんの夢の中だし、変態で気持ち悪いお兄ちゃんの趣味が反映したんじゃないの?』
夢の中でも容赦なく罵倒してくるのか……。再現度たっかいなオイ。
何か腹が立ってきたな……。美少女の罵倒はご褒美だとしても、やはり傷つくこともある。特に今の俺はな。
日頃の恨みをここで晴らしてやりたいな……よし、こうなったら、あんなことやこんなことをやりたい放題やってやる。グヘヘヘヘ。
『よし、ブロンズちゃん……』
俺はブロンズの肩を掴んだ。
『は、はい』
ブロンズは肩を掴まれたからなのか、なぜか顔を赤らめる。くそっ、めっちゃ可愛い!
でも、同時に何か調子が狂う……どうもブロンズらしくないな……。
まあ、それもやはり夢の中だからだろうな。
『あ、あの……』
さ、さあ、言うんだ俺。ブロンズに、あんなことやこんなことをする為に……。
『……』
『お、お兄ちゃん?』
なかなか口が開かない……。頭ではちゃんと分かっているが……。言葉がどうしても詰まってしまう。陰キャが陽キャに話しかける事以上に、ハードルが高い。それと罪悪感が思ったより邪魔してくる。
それでも、俺は勇気と紳士を振り絞って、ついに口を開く。
『えっと……ブロンズちゃんの……パ、パ……パン……じゃなくて、お、俺と……俺と……エ……エ……エエエ……絵でも描こうか!』
『え? 絵?』
ブロンズは、なんでこんな暗闇の中で、わざわざ絵を描くの? と言いたげに、困惑してしている。
俺もなんでこんな事言ったんだか……自分でも困惑しているよ……。
まあでも、さすがにパンツ見せろとは言えないな……。いくら今は敵対関係でやりたい放題できるんだとしても、やはり抵抗感が拭いきれないし、あるはずもない良心が痛む。
ヘタレだからだろって? ソンナコトイワナイデ!
『ふーん、お兄ちゃん、私のパンツ見たいんだ?』
ブロンズは、俺の心を読んだのか、ニヤニヤしながら、上目遣いでそう言ってきた。
『は? あ、いや、そ、そそそ、そんな事思ってねえし!』
やべえ、すげえベタな動揺をしてしまった……。これじゃ、まるで本当はブロンズちゃんのパンツみたいですって言ってるようなものじゃないか……。
というか、夢の中でも心が読めるのか。それとも、ただ単に、過去のこういったやりとりが、印象強く残ってるから、再現できただけか?
『ふふ……そんなに動揺しちゃって……本当は見たいんでしょう?』
ブロンズは、そう言ってスカートの裾を掴み、見えるギリギリの所まで上げた。
み……みえ……みえ……って違ーう!!!
まずい……この流れに乗ってはいけない……。絶対、ブロンズの事だから、何か罠をしかけてあるに違いない……。例えば、スカートの中を見ると、こちらの情報を盗み取られるような魔法がかけられてたりな。
ここは無心だ。無心になれ。
そうだ俺はぼっち。俺はぼっち。俺はぼっち。俺とまともに話をしてくれる相手なんていない。俺に触れてくれる相手なんていない。俺を認めてくれる相手なんて……相手なんて……いないんだ……。
いるわけがないんだ……。
そんな悲しみの渦に飲まれていると、ブロンズが、俺にこう耳打ちしてきた。
『……大丈夫よ。お兄ちゃんを一人になんてさせないから』
『え?』
その瞬間、ブロンズは顔をこれでもかってくらい最大限に近づけてきて、俺はブロンズのまさかの行動に驚愕し、尻餅をついた。
すると、ブロンズは逃げられないように俺を押し倒してから、身体に跨がった。
いやいやいやいやいやいやいや、なんだこの展開!?
あまりにも突然すぎて、出かけていた悲しみの涙が引っ込んでしまった。
俺はこのままでは、色んな意味でヤバい事になると危惧し、何回も逃げようとしたが、逃げられなかった。いや、逃げなかった。
なぜなら、このままブロンズに押し倒されたこの状況に、心のどこかでまんざらでもないと思ってしまっているからだ。
なんてこった……どんなに悲しみに暮れていても、結局は美少女狂いの変態なんだなぁ……。
『さあ、これからこの哀れな変態をどうしてやろうかしら……』
ブロンズは、悪役の如く悪い顔をしながら、そう言った。
俺はこれからどうなってしまうんだ……?
第143話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、25日(金)か26日(土)に投稿予定です。
宜しくお願い致します。