第142話『神々の喧嘩』
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※2024/08/11改稿しました。
――少し前、神の居城では――
下界から遥か天空に聳え立つ、美しくも誇り高き城……それが、神の居城である。
そこに住んでいるのは、ゼウス及び、守護神。そして下界から連れてきた専属の騎士、鍛冶屋、メイド等の人間達。その人間達の大半は、ゼウスを信仰している者。彼らにとって、ここは理想郷。なぜなら神々と同じ地に立ち、同じ空気を吸う事を許される……それだけでも、最上級の幸福なのだ。
だが、ここは決して安全ではない。なぜなら神々の力が規格外すぎるからだ。
もし、彼らが争い、まともに対立してしまえば……。
『クロノス、貴様どこに行っていた!』
とある神は、先程までのクロノスの勝手な不在に憤慨していた。
『僕がどこに行こうと勝手だろ? いちいちうるさいんだよゴミが』
『我がゴミだと!? 訂正しろ!』
『嫌だよ。ウラノス』
その神の名はウラノス。クロノスやゼウスと同じ守護神である。
『軽々しく我の名を呼ぶな!!!』
『えぇ……じゃあ何て呼べばいいんだよ……ホントうるさい神だなぁ……いや僕たちは元をたどれば神でもなんでもないんだけどね』
『それ以上喋るな!』
ウラノスは、クロノスへの殺意を顕にし、“グングニル”という名の槍を構えた。
『あぁ、お前がその槍を使うのか……』
クロノスの方も、何か気に触れてしまったのか、表情が途端に変わり、ウラノスを睨み付けた後、上を向き、独り言を呟いた。
『なあ、オーディン。お前は一体どこにいるんだ……お前の武器が、あのクズ神にいいように使われて、泣いているぞ?』
『何を言っている! 我が力を見て恐れをなしたか!』
『は? 我が力だと?』
クロノスから、殺意溢れんばかりのオーラが炎のように燃え盛ると、クロノスの後ろ周りに3つの時計が出現する。その時計からも同じようにオーラが溢れている。
『それはお前の力なんかじゃない! それはオーディンの物だ! 断じて貴様のような臆病者の道具なんかじゃない!』
『誰が臆病者だ! この不届き者がああああああ!!!』
このままだと、ここ神の居城を半壊させかねない程の力がぶつかり合う。決して、この神の居城が脆いわけではない。むしろ、どんなに火薬を積んだ爆弾1万個でも傷1つつかない程の頑丈さを誇る。だが、クロノスとウラノスの力が、それを上回るだけだ。
『消えろおおおおおおおおおおおお!!!!!』
――そこまでだ。
両者の力がぶつかり合う寸前、そのすぐ近くで、雷撃が落ちた。すると、両者共に攻撃をやめて、すぐに後ろに下がった。
そして、その雷撃はあまりの轟音故に、神の居城中が騒ぎだした。
何事だと雷撃の音がした場所に走る者。ゼウス様のお怒りだと怯える者。巻き込まれるのはゴメンだとその場で傍観を決め込む者。
各々の反応はそれぞれ違うが、全員、共通して思う事がある。それは、ゼウス様だけは怒らせてはいけない。
ゼウスの怒り、それは即ち……死を意味する。
『うむ……些か、轟音がすぎたか……? 此れでは下界の一部の者にも、聞こえてしまうやもしれぬな』
ゼウスの先程の雷は、神の居城が壊れない程度に、多少加減をしていたが、それでも人類を滅ぼすには充分すぎる威力だ。雷撃が落ちた箇所も穴が空いてしまった。
『ゼ、ゼウス様……!』
ウラノスは、すぐに察してゼウスに頭を下げ、騒動を起こしてしまった事を詫びた。
『申し訳ございません。我々が愚かでした。失望されたのでしたら、どうか死罪をお与え下さい』
『……確かに、我の雷あればそれは死だ。今、お前達を消すくらい容易い。だがウラノス、そしてクロノスよ。貴様らは貴重な戦力だ。少しくらいの騒動で殺したりはせぬ』
『はっ! 有り難き御言葉、感謝致します!』
『だが、今後、もしお前達の争いが止まらないようなら……分かるな?』
ゼウスは、そう言って二人に威圧感を与えた。
するとクロノスとウラノスは、その威圧だけで、意識を失いそうになるくらいの戦慄を覚えたが、さすがは神なだけあって、その場から一歩も引かずに、ただゼウスに忠誠を誓う。
『はっ! 御心のままに!』
『うむ』
ゼウスは踵を返し、その場から立ち去ろうとしたが、立ち止まり最後にクロノスにこう言った。
『あと、クロノスよ』
『はい』
『あまりオーディンの話をするではない。もう奴はとっくに死んだのだ。現に奴は未だに元々の住み処だったこの神の居城を取り返そうとしないだろう?』
『おっしゃる通りです。ゼウス神』
クロノスは頭を下げ、悔恨あふれんばかりに唇を噛んだ。
『此れにて、この話は終焉。解散とする』
ゼウスはそう言って、今度こそこの場を去っていった。
ウラノスは、一息ついてから口を開く。
『なあ、クロノス。お前はまだオーディンが生きてると思っているのか?』
『……』
クロノスは無言で立ち去った。
『無視か……やれやれ。でも確かにゼウス様と互角に渡り合ったあのオーディンが、簡単に死んだとは思えないな……』
それから、ウラノスはウロウロしながら少し考え事をした。
『……そうですね。一応、確認してみましょう』
ウラノスは、なにやら引っかかる事があるようで、それを確かめるために、神の居城の最下層へ足を運び、下界へ降りる準備をした。
最下層には、下界へ通じるゲートがある。そのゲートこそ、神の居城と下界を行き来できる唯一の装置だ。
『門よ開け』
ウラノスが、ゲートに向かってそう言うと、ゲートは静かに開いた。
『さて、行きますかね……下界に』
ウラノスは、ゲートをくぐり、その先にある、下界の“神の塔”へ足を踏み入れた。
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次回は、24日(木)までに、投稿予定です。
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