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第140話『溢れ出る悔恨』

お待たせしました。

第140話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2024/08/10改稿しました。

《ケイデス視点》


 ――ダイゴが目覚める少し前――


『改めて、本当にありがとなミユウ』


『別にお礼を言われるようなことはしてないわ。ただ、私は言葉を添えただけよ』


 それでも、ミユウの助言のおかげで、ヒナはすっかり元気になった。言葉だけで治すなんてすごいな。


『はぁ……やっぱり、あなた何も分かってないでしょ?』


『え? 何がだ?』


『いえ、なんでもないわ』


 ミユウは、呆れた表情で頭に手を当てた。


 俺はまた何かしてしまったのだろうか? ヒナもなぜか苦笑いをしている。


『そういえば、ミユウはここで何をしているんだ?』


 俺がそう聞くと、ミユウは握りこぶしを握りながら、悲しげな表情で下を向いてしまった。


『すまない。話したくないなら、話さなくてもいい』


『いいえ、大丈夫よ。実はね――』


 ミユウは、これまでの経緯を丁寧に説明してくれた。


 どうやら、ミユウはアクタという奴を筆頭に仲間達と、ある計画を立てていて (詳しい内容までは話さなかった)、その最中にあの例の化物を察知して、軽く様子を見て戻ろうとした。


 だが最悪なことにこちらに気づかれて、逃げようとしたら、ミユウのパートナーであるダイゴが、返り討ちにあってしまった。


 しかも、その化物の攻撃を受けたからなのか、記憶を全て失ってしまった。


 なんとかダイゴの記憶を取り戻したいと考えたミユウは、二人の故郷である桜の国まで足を運んだ。自分の故郷に帰れば、何か思い出すと思っていたが、残念ながら何の成果も得られず……。


 さすがに精神的にも体力的にも疲れてきたので、ダイゴの家で休息していた時に、俺らがここにやってきて、ミユウがこうして出迎えてきて、今に至るというわけだ。


『なるほど。そんなことがあったのか。実は俺もヒナもさっきあの化物に出くわしたんだ』


『そう……さっき、ということはこの近くにいる可能性が高いのね……』


 ミユウはあの時の恐怖を思い出し、右腕で左腕を強く掴み、同時に悔しさが表情に出てしまう程に、唇を強く噛み締めた。


『ああ……そして俺はあの化物を倒そうと思う』


『あの化物を? 無茶よ、だってあれは異次元すぎる。現にあなたたちも、その化物から逃げてきたんでしょう?』


『ああ。二匹目はな』


『二匹目はって……どういうこと……!?』


 ミユウは、あの化物が二匹もいるって分かると気が動転し始め酷い頭痛を覚えたように頭を抱え、最終的にその場でへたり込んでしまった。


『ミユウさん! 大丈夫ですか!』


 ヒナはミユウの元へ駆け寄った。


『え、えぇ……少し頭痛とめまいがしただけ……』


 とミユウは言っているが、顔色がかなり悪い。頭痛とめまいだけじゃ済まないだろう。


 余程のトラウマを植え付けられたんだろうな。


 俺も気持ちはよく分かる。あの化物は本当に強い。俺ですら一人じゃ倒せない程だった。


『でも安心してくれ。一匹は既に倒している。仲間と一緒に倒したんだ。今、その仲間とは離れてしまったが、合流してまた作戦を練ればきっと倒せる』


『え……嘘……?』


『本当だ』


『嘘……嘘よ。だって、私とダイゴだって強いはずだもの、なのにあの化物には手も足も出なかったのよ? ……もしかして、あなた私達よりもずっと強いって言うの?』


 ミユウは訝しい目で俺を見る。


『……まあ強さに関しては、自信はある……』


 そう言ったが心の中ではそう言い切れない自分がいる。


 “強さ”という言葉と共に、必ずゼウスを思い浮かべる。ゼウスに勝てなかった自分に強いという言葉はあまりにも似合わない。


 どれだけの勝利を重ねても、あの敗北が強く頭に刻み込まれている。一生自信が形成できなくなるほどのトラウマを――


『えっと、どうしたの?』


『え?』


 俺の悲壮感漂うような表情が出てしまったようで、ミユウに心配されてしまった。


『いや、なんでもない。とにかくあの化物を――』


『あの、ちょっといいですか?』


 俺が最後まで喋る前に、ヒナが手を挙げて、話を遮った。


『何だ?』


『あの……そのダイゴさんという方の記憶……もしかしたら取り戻せるかもしれません』


 ヒナがそう言うと、ミユウは血相を変えて、ヒナの肩を強く掴んだ。


『本当なの!?』


『は、はい、私の魔法なら可能かもしれません』


 確か、さっきのヒナの魔法は、“触れたものをキレイにする”というやつだったな。でも、記憶がキレイになれば、記憶が蘇るって理屈としてはどうなんだ? 本当はどんな魔法か知らないが、ヒナが『可能かもしれません』と言った時、『本当にできるか不安だな……』という顔ではなく、『私ならできるかもしれない!』という自信に満ち溢れた顔だった。


 ヒナ……お前は一体……?


『ダイゴさんの元へ連れていってもらってもいいですか?』


『ええ! こっちよ!』


 俺達はミユウに連れられるままに、ダイゴの家に入った。


『お邪魔します』


 家の内装はなんとも趣のある、俺の村には無い新鮮さがあった。


 なるほど……これが俗に言う“和風”というやつなのか。ずっと前に俺の村に来た、遠い国の旅人の話では、こういうのを“ジャパニーズ”と言うらしい。


『この部屋よ』


 ミユウは、そう言ってドアをノックした。


『ダイゴ、入るわよ』


『……』


 ダイゴは今は眠ってると聞いているので、返事はない。ノックしたのは起きている可能性を考慮したのだろう。親しき仲にも礼儀はあるようだ。


『ほら、入って』


『お、おう』


 俺達はダイゴの部屋に入った。


 部屋の内装は家が和風なので、当然、部屋も和室だった。


『この人がダイゴよ』


 ミユウがそう言って、椅子に座っているダイゴに肩を置いた。


 なるほど。この男がダイゴか。思ったより大柄な男だな。身長や筋力も俺よりありそうだ。


『この人がダイゴさんですね』


 ヒナは、そう言ってダイゴに近づき、まるで医者のように、観察する。


『どう?』


『なるほど、これなら記憶を修復できますよ』


『本当!?』


『はい』


 ヒナはダイゴの身体に触れ、目を閉じる。


 その時だった。俺はヒナから、()()()()()を感じた。


 これは……まさか……?



 ――それから数分経過した――


 ヒナが目を開けて、ダイゴから離れると、ダイゴは、ゆっくりと目を開けた。


『……ミユウか?』


 名前を呼んだということは、どうやら、記憶は戻ったようだ。


『ダイゴ!!!』


 ミユウは、色々な感情を胸にダイゴに抱きついた。


『良かった……本当に良かった!』


 すると、ダイゴは微笑みながら、ミユウを抱き返して、こう言った。


『心配かけてすまなかったな』


 ミユウは、周りに俺らが居るのにも関わらず、しばらくダイゴに抱きついたまま、子供のように号泣した。


 なんせ幼なじみであり、冒険者のパートナーでもあるんだ。そんな相棒とも呼べる存在が急に記憶喪失になったら、そりゃ戸惑うし、絶望もする。


 泣きそうな時もあっただろう。挫けそうな時もあっただろう。だけど、彼女は諦めなかった。その諦めなかった心が、今、この結果に繋がった。


 ミユウは、本当によく頑張ったと思う。良かったな。






 さて、さっきのヒナの魔法を見て、分かった事がある。


 魔法と言ったが……違う。あれはそもそも()()()()()()


 それに、ヒナから感じた()()は……恐らく、ヒナは……()()だ。


第140話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、明後日の18日(金)か19日(土)に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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