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第138話『ヒナ、大ピンチ?』

お待たせしました。

第138話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※2024/08/06改稿しました。

『ところで、ヒナはどこに行くつもりだったんだ?』


『えっと……さっきの化物に殺された人達の死体を……あの、えっと……』


 何とも歯切れが悪い返答だ。まるで人には言えないような事をする者の態度だ。


『死体をどうする気なんだ?』


『えっとえっと……あ、死体を清めに来たんです!』


 思いついたように返答するヒナ。目が泳ぎ、汗の量も多い。これを見て嘘をついてないと思う方が難しい。


『清めにって……そもそも死体は大体、あの化物に喰われちまってるから、清める事なんてできないと思うが?』


 そう言うと、ヒナはギクッという擬音が似合うほどの動揺ぶりを見せる。


『そ、そうですか〜、あはは……』


『一体何なんだよ……』


 ――死体といえば俺の村の皆もそうだ。よりにもよって俺の手であの化物ごと消してしまった。


 母の言葉で冷静さを取り戻したとはいえ、やはり受け入れきれない。悲観、後悔、怨讐。ありとあらゆる負の感情が俺の心に黒い炎を灯した。


 感情が溢れ出そうな俺は、堪らず握りこぶしを握り、静かな怒りを体現してしまった。


『あの、ケイデスさん? 大丈夫ですか?』


 ヒナはそんな俺を見て、心配そうな顔を向けた。


『お、おう。大丈夫だ』


『それなら良かったです!』


 ヒナは笑顔でそう答えた。さっきは疑ってしまってが、悪い奴だとは到底思えない。


(演技……じゃねえよな?)


 俺は演技かどうかを見極めるため、ヒナを凝視する。


 すると、ヒナは視線に耐えられなかったのか、恥ずかしそうに下を向いた。


『あ、あの……そんなに見つめないで下さい……恥ずかしいです……』


 ヒナは顔を更に赤らめながら、そう言った。正直ちょっと可愛いと思ってしまった。


『お、おう、悪かったな』


 俺も何だか恥ずかしくなり、視線を外した。


 それから沈黙が続き、お互いしばらく言葉が出てこなかった。


 ここはヒナについていって、死体を清める (絶対嘘だろうけど)のに、付き合うか? だが、もう空も殆ど暗くなっている……早く、さっきの村に戻りたいが……。


 でも、俺はヒナを放ってはおけない。また、さっきの化物に遭遇する可能性もあるしな。


 1番ベストなのは、ヒナを連れてさっきの村に戻る事だが……道が分からない……。


『ヒナ。お前が()()()何がしたいのかは、分からない。だが、俺はお前を放ってはおけない』


『えっ……』


『だから、お前を護衛させてほしい』


 俺はそう言って、ヒナの手を握った。


『あ、あの……』


 なにやら、ヒナの顔がさっきより赤いが、熱でもあるのだろうか。


『あ、あ……』


 ヒナは、さっきよりも言葉がひどく詰まっている。一体どうしたんだ? もしかして、何か病気にかかったのか!? 確かに、顔が猛スピードで赤く染まっている……心配だな……。これは、やはり、さっきの村に戻って、医者に診てもらうべきだな。


『ヒナ! 大丈夫か!? どこか苦しくないか!?』


 俺は、心配のあまりヒナの両肩を掴んだ。


『えっ、あの……えっ……ええっ……!???』


 やはり、ヒナは言葉の詰まりも治らないし、顔も赤いままだ。むしろ、さっきよりも悪化してる気がする……このままではマズい!


 事態は一刻を争う!


『ヒナ、すまない!』


 俺は、ヒナをお姫様抱っこをして、なんとしても、さっきの村まで走る事にした。


『え、ええええええええええ!?』


『ヒナ! そんなに叫んでどうした!? そんなに苦しいのか!? すぐに村まで走るから、それまで耐えてくれ!』


 俺はもう……誰も失いたくない!


『しっかり掴まってろよ!』


『え、あ、ちょ……』


 俺は全力で大地を踏みつけた。それも地面が軽く抉れるほどに。それから第2歩目も同じように足跡をつけた。それを目的地に着くまでひたすら素早く繰り返すだけ。


『はぁ……はぁ……はぁ……』


 息が切れそうになっても関係なく走った。人を運びながら持久走をしているようだったが、それよりもヒナが心配だったので、走り続けた。

 

 モンスターに遭遇しても、逃げるか、踏み越える等して、走り抜けた。


 ヒナの病気を一刻も早く治したい……そんな思いが、俺の足に鞭を打つ。


 ――速く……とにかく速く!





 ――そして、ついに森を抜けた!


 やった! と思ったのも束の間……そこで見たのは、キレイな()()()()()()だけの、廃墟の国だった。


 そんなハズレかよ……と思ったが、どうやら、他に()()()()ようだ。


 生き残りの住人だろうか……? それとも……通りかかった冒険者か……もしくは盗賊か……?


 って、そんな事を考えている暇はない!


 俺はその2人がいる場所へ、走っていった。


『頼む。医者であってくれ!』


 すると、1人の冒険者らしき格好の少女が向かってくる俺達を警戒したのか、杖を構えて戦闘準備に入った。


『あなたたち……何者?』


 確かに敵意を向けられているが、それだけじゃない。少女の顔をよく見ると、泣いたあとなのか、目が腫れていた。何か悲しい事でもあったのだろうか。それも気になるけど、今はヒナの方が心配だ。顔が赤くなったまま、過呼吸になっている。


『俺はアルカイオス・ケイデス! 今、俺が抱えてる女はヒナっていうんだ。さっきから苦しそうなんだ! この国に医者はいないか? いるならどうか助けてやってほしい! この通りだ!』


 俺はそう言って武器(やり)を置いて敵意が無いことを示し、その少女に頭を下げた。


 すると、その少女は俺の言い分を聞いてくれたのか、杖を下ろし、何も言わずにこちらに近づいてきた。


『言っておくけど、私は医者じゃないし、今、この国には医者はいないわ。でも……このヒナさんって人の病気は治せるかもしれないわ』


『ホントか!?』


『ええ……でも、期待しないでよ。さっきも言ったけど、私は医者じゃないからね。ただ、治癒魔法が使えるだけだからね』


『それでもいい! やるだけやってくれ!』


 少女は頷くと、ヒナの全身をまじまじと見たり、胸や顔に触れたりした。


『何の病気なんだ?』


『あの、これ病気……じゃないわ』


『え? そうなのか?』


『まあ、病気といえば病気なのだろうけど……心の』


 少女は、なぜか少し呆れ気味な表情をした。


『ある意味……?』


『いえ、なんでもないわ』


 まあ何にせよ、重い病気とかじゃなくて良かった。まだ初対面な上に、第一印象は挙動不審の美女だったが、今では彼女が病気じゃないと知って安心感を覚えている。


『は……は……あ、あの……え……あ……』


『っておい! まだ言葉が詰まってるじゃないか! やっぱ重い病気……!』


『違うわよ!!! あんたバカなの? 鈍感なの? ヒナさんよりも、あなたの方が病気よ! 病名、鈍感病だわ!』


 俺がなにか変な事を言ってしまったのか、少女は怒りながら、俺を罵倒し始めた。鈍感病ってなんだ?


『……え? 違う? でも、こんなに苦しそう……』

 

 少女は頭に手をつけて、重いため息を吐いた。


『いい? これはね、“ときめき”なのよ!』


 兔騎眼鬼(ときめき)……? なんだそれは? モンスターの種族名みたいな名前だな。


『絶対分かってないでしょ! そういう顔をしているわ!』


『な、なんかすまない』


 俺が無知すぎる故に、彼女を怒らせてしまったようだ。


『と・に・か・く! ヒナさんは重い病気とかじゃないから! 死なないから! あなたは何も心配する必要は無いの! 分かった?』


『あ、ああ』


 まあ、何も心配する事が無いならいいか。兔騎眼鬼(ときめき)とやらは、よく分からんが……。


『あ、あの……ケイデスさん。そろそろ降ろしてくれませんか?』


『おお、ヒナ!』


 ヒナの顔の赤らみも引いてきてるし、呼吸もさっきよりも整っている。どうやら、本当に心配はいらなかったようだ。


 俺は、ヒナに言われるままに降ろした。


『あの、心配かけてすみませんでした。私は大丈夫ですよ』


『そうか! それは良かった!』


 本当に良かった。俺は心の底から安堵した。また、ヒナの笑顔が見られて嬉しい……あれ? 俺、ヒナとは会ったばかりなのに、何でこんなにヒナの事を思っている……?


 まあ、そんな事はどうでもいいか。それよりも、彼女にお礼を言わないとな。

 

『君もありがとうな! えっと……そういえば、君の名前を聞いてなかったな』


『私の名前は()()()よ』


第138話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、本日12日(土)か13日(日)に投稿予定です。

あと、だいぶ前に公開すると言っていた設定資料の件ですが、近々、少しずつですが、完成次第、公開していこうと思います。割り込みがうまく出来れば、1章のプロローグよりも上に投稿していると思うので、もしよろしければ、見て頂ければと思います。

今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。

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