第137話『迷子の迷子のケイデスくん』
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第137話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/08/05改稿しました。
現在俺はクロノスに衝撃の事実を告げられ、冷静さを欠いてしまい、アテナを殺しに行こうと、思わず遠くまで走っていて、気づいたら全く知らない森の中にいた。
だが、母の言葉を思い出したおかげで頭が冷えた。しかし、その頃にはこの有り様だが。
『全く……何やってんだよ……俺は……』
赤髪ちゃん達も心配してるだろうし、戻るか。
俺は踵を返して、さっきの村へ戻ろうとした……が、ここで深刻な問題が発生する。
『えっと……ここどこだ?』
所謂迷子というやつになってしまった。
周りを見ても道筋らしいものは全て緑に塞がれてる。周りの木々も、俺の村の周りの木とはまるで違うのが分かる。モンスターも見たことないような種族ばかり生息している。
『グルルルル……』
早速、おやおや珍しいお客さんだなぁ? と言わんばかりに、狼系のモンスターの群れがやってきた。
今にも、野郎共! やっちまえ! と俺に襲いかかろうとするんだろうけど、遅すぎる。あれこれ考えてる間に、一瞬で全て蹴散らしてやった。
『はぁ……これからどうするかね……』
腹も減ったので、さっき倒した狼系のモンスターの肉を焼いて、たらふく食った。思いの外、旨かった。赤髪ちゃん達へのお土産にとっておこうかな。
『って、そうじゃなくて……』
俺は、ただでさえ方向音痴だ。このままだと、本当に迷子になってしまう。
空の色も緋色から群青色へと移り行こうとしている。
暗くなると、より動きづらくなるから、せめて森を抜けたい……。
『そうだ、木の上に登って、さっきの村がどこにあるか見てみよう』
俺は木を登ろうと手を掛けようとした、その時だった。
『きゃああああああああああああああああああ』
女の悲鳴が聞こえた。何かあったのか……!
俺はその悲鳴がした方向へ走り出した。
すると、その悲鳴がした所で見たものは……とても信じがたい光景だった。
『嘘だろ……な、なんで……』
ありえない。なぜ……なぜ……。
なんで、トウカの村や、さっきの村を襲ったあの化物がいるんだよ!!
さっきの村で確かに消滅させたはず……まさか蘇ったのか? そう思ったが、すぐにそうじゃないと分かった。
『ん? でも、あれは……?』
パッと見分からなかったが、よく見ると、さっきの化物とはどこか異なる模様がいくつかある。どうやら、蘇ったわけではなく、こいつは同種族の別個体ということだ。
考えたくないが、これは最悪3匹目も覚悟しないといけないかもな……。
『助けて!』
女は俺に気づき、泣きながら助けを求めた。
そうだ、早く助けないと……!
俺は全速で化物の前足に槍を刺し、バランスを崩しかけたタイミングで、今度は後ろ足に槍を刺した。すると、化物は思惑通りにバランスを崩し、転倒した。
『今だ!』
俺は、すぐに女を抱き抱え、とにかく遠くまで全力で走って逃げた。
あの化物に多少なりとも怪我を負わせたんだ。どんなに速くても、スピードは大分下がるはずだ。
――全力で走ってから、10分くらい経った。
『はぁ……はぁ……もう追ってこないか……』
さっきの化物が追ってこないと確信した俺は、立ち止まり、女を降ろして、その場で休憩することにした。
とにかく、あの化物ですら簡単に追いつかないくらい、遠く遠くへと走りまくったので、ますますここがどこだか分からなくなった。というかこの森広すぎないか? こんなの誰だって迷子になるだろ……。決して、俺が方向音痴すぎるからとか、そんなんじゃない。断じて違うぞ。
『あ、あの、助けて頂き、ありがとうございます』
女は俺に頭を下げた。
『俺は、アルカイオス・ケイデス。長いからカイオスでもケイオスでも好きに呼んでくれ』
自己紹介する時は必ずこう言っている。
『はい。私の名前は……えっと……あ、じゃあ、ヒナです』
じゃあってなんだよ。まるで名前が複数あるみたいな言い方じゃないか。
なんかオロオロしてるし、いかにも何か隠している怪しげな感じだ。
『なあ、ヒナさんはなんで、一人でこんな所に居たんだ?』
そもそも、それがおかしい。
ここは、普通にモンスターも出るような森だ。なにか武器や防具を装備しているわけでもないし、護衛の冒険者等が一緒にいたというわけでもなさそうだ。服装だって、まるで、ピクニックにでも出かけるような格好だ。
『そ、それは……わ、私、実はですね、すごい魔法使いでして……そ、そうだ! 今、修行中だったんですよ!』
修行中の格好じゃねえだろ……。それにそんなすごい魔法使いなら、なんでさっきの化物に対して、まるで力のない一般人のように悲鳴をあげた? まあ、あの化物が想定より強すぎた……と言ってしまえば、多少腕が立つ者でも納得せざるを得ないが。
それでもやはり怪しいな。だが、ヒナにもなにか事情がありそうだし、ここはひとまず話を合わせておくか。
『すごい魔法使いだと?』
『は、はい!』
『すごいって、どんな魔法が使えるんだ?』
『え、えっと……例えば、この枯れた葉っぱをですね……』
ヒナは、その辺から拾った枯れた葉っぱを持つと、その葉っぱはまるでマジックのように、あっという間にキレイな葉っぱへと変貌を遂げた。いや、戻ったというべきか。
『こ、このようにですね、私は触れたものを、キレイにする魔法を持っているんですよ! すごいでしょ!』
ヒナは明らかに誤魔化す時の焦燥感を表しながら、そう言った。
キレイにするだと……? いや、そんなレベルじゃない。そもそも今のは……。
俺は訝しむように、ヒナを見た。
『あ、あの……』
ヒナは、まじまじと見られるのが恥ずかしいのか、顔が赤くなる。まあ、それ以上に変な汗がすごいが。
『なあ、今の本当に魔法か?』
『えっ!? あ、ちゃ、ちゃんと、ま、まま魔法ですよ!?』
分かりやすいくらい動揺している。やはり、さっきのは魔法じゃないっぽいな。魔法を発動する際に、“魔力が流れていく”という感覚が、俺にはなんとなく分かる。だが、ヒナが先程、魔法だと言って、葉っぱをキレイにした時も、一切魔力の流れを感じなかった。
ヒナは一体何者なんだ……?
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次回は、11日(金)か12日(土)に投稿予定です。
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