第135話『神の子の独白①』
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※2024/08/05改稿しました。
《ケイデスの独白》
俺はゼウスの子だ。
神の居城で生まれ、神の居城で育った。
当時の俺は父が誇らしかった。だから俺は父に認めてもらいたかった。
父に認めてもらうには、それに見合うほどの強さを得なければならなかった。
幸い俺は戦の才能があった。成長速度は他の同年代の者の比ではなかった。これには母も心の底から喜んでくれた。さすが私の自慢の息子だと、俺を褒めてくれたのだ。
だが、父は違った。
――お前には何も期待していない――
そう言われてしまった。
なぜだ。なぜ俺は認められない。
……そうか。もっとか。もっと強くならなければいけないのか。
諦めきれなかった俺は父に認められるようになる為に、下界に降りて、修行の旅に出ることにした。
旅に出てからは、とにかく、ありとあらゆるモンスターを倒した。悪い盗賊を倒した。どんなに相手が強かろうと関係なかった。
なぜなら、俺は誰よりも強いからだ。それは自慢でも自信過剰だからではなく、単なる事実だ。どんなに謙虚に考えても、その事実を実感させられてしまう。
だが、それでも認められなかった。
確かに、モンスターや盗賊を討伐するだけなら、駆け出しの冒険者でも、よくやっているので、決して珍しくないものなんだろうなと思った。
つまり、それだけでは甘いってことだな。もっと強い敵を倒さなきゃ……そう思っていた。それが無駄な努力とも知らずに。
それから数年経ち、下界でもトップクラスに強いモンスターを倒した、下界一危険と言われている大規模な盗賊団も一人で全て滅ぼした。
よし、これで認めてくれる……。
だが、父が俺にかけた言葉は……。
――まだやっているのか。もう無駄だ。お前には、そもそも足りないものが多すぎる――
また認めてくれなかった。なぜだ。なぜだなぜだなぜだ。足りないって何が足りないんだ……。
……そうか。数が足りないのか。もっと数多くの敵を倒せってことか。
そう思った俺は、また、いくつものモンスターと盗賊を倒した。もっと強い奴はいないのかと叫び続けた。
とにかくモンスターや盗賊なら誰でもいいから倒した。冒険者の仕事が全てなくなるんじゃないかってくらい倒した。俺はただ認められたいから倒した、もっと強くなりたいから倒した、倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒した倒………………だけど、どんなに倒しても、父は俺を認めてはくれなかった。
なぜだ? なぜ俺を認めてくれないんだ!
俺はとうとう自分を抑えられなくなり、つい、父に、そう問いただした事があった。
すると、父はこう答えた。
――まだ分からないのか、お前は所詮、半神なのだ――
は? つまり、半神である限り、どんなに努力しても父に認められないと?
俺は納得できなかった。そんなことはない。努力はきっと報われてるはずだ。今の俺は充分強い。
俺は父に決闘を挑んだ。
――時間の無駄だが、それで気が済むのなら、いくらでも受けてやる――
意外にも、父は、決闘の申し出を受けてくれた。
絶対勝って、俺は認められるんだ! そんな思いを胸に、俺は初めて父に拳を振るった。
しかし、父の圧倒的な力により、俺は手も足も出ず、完敗してしまった。しかも、俺は本気で戦ったというのに、父は、たった1%の力しか出していないという……。
嘘だろ……これが完璧守護神、ゼウスの力なのか……。
もはや、悔しいだとか、リベンジしてやる! とか、そんな感情も思いすら湧いてこなかった。俺の心を折るには充分すぎた。
なるほどな。父が言っていた、お前は所詮半神なのだ、というのは、こういう事だったのか。確かにその通りだ。神と半神とでは、あまりにも差がありすぎる。それは今回の決闘で、身をもって感じさせられた。
それから俺は、自信と自尊心を失い、しばらく閉じ籠ってしまった。
母は俺を心配し、俺を慰めようとしたが、父に止められた。
――半神など我らの子ではない。放っておけ――
たまたま聞こえた、父のその言葉に、俺は衝撃を受けた。もはや、子である事すら、認められないと……。
なぜだ。
なぜ……。
そうか……半神だからダメなのか……じゃあ半神以外になればいいのか……。
この時の俺は本当にどうかしていた。長い間引き籠ってたからか、通常の思考回路がイカれていたんだ。
俺は、秘密裏に半神を捨てて、人間になるという禁断の儀式を行った。
半神をやめて、人間に降格してしまえば、今よりも相当弱くなってしまうかもしれないが、それでもいい。父に認められるなら……。
そして、儀式は無事終了した。
こうして、俺は完全な人間になった。すると、案の定、以前よりも身体能力も魔力も格段に落ちた。身体も重いし、うまく力も入らない。
仕方ない。これが俺が選んだ道だ。後悔はない。
俺は、父に、半神をやめた事を報告した。半神でさえなくなれば、きっと俺への見方も変わるかもしれない。そんなバカな事を思っていた。
すると、父は、俺に興味が無いのか、それとも呆れているのか、俺に冷酷な目を向けて、こう言った。
――まさか人間に堕ちるとはな、もう勝手にしろ。この劣等種が――
は? 劣等種……だと?
認められるどころか、とうとう本格的に見捨てられてしまった。
なぜだ。なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ。
それを偶然聞いていた母は、こちらに駆けつけ、泣きそうな表情でこう訴えた。
『なんてことを……たとえ人間になっても、私達の息子ですよ! もっと息子を大切にして下さい!』
母は、涙ながらに訴えてくれた。たとえ俺が人間に堕ちても。
だが、そんな母の訴えなど、父は、聞く気もなく、母を睨みつけた。
――黙れ――
母の言葉は父にはまるで届かなかった。いや、そもそも届くはずもない。父は、神である母共々、俺達人間を見下しているのだから。
――アルクよ。長き間、我の妻として役目を果たしてくれていたが……残念だ――
アルクとは、母の名だ。
『ゼウス……?』
――皆のもの。我が妻アルクと我が息子アルカイオス・ケイデスを処刑せよ――
『な……!?』
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次回は、6日(日)か7日(月)に投稿予定です。
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