第130話『VS 化物戦①』
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※2024/07/07改稿しました。
ケイデスが化物と戦っている間に、近くにいた生き残りの村人達は隙をついて、地下シェルターらしき所へ逃げていった。どうやら、この村には緊急時の対策が一応あるようだ。ただ、今回は相手が悪く、ありえないスピードで人を襲ってくるので、残念ながら結構な犠牲者を出してしまったようだ。
『喰らえ!』
ケイデスは化物の攻撃をうまく回避しつつ、少しずつだが、化物に攻撃を当てている。あのスピードで動く敵に、攻撃を当てられるだけでもすごい! ただダメージはあまり与えてないようだ。このペースではケイデスが倒される方が早いかもしれない……。
――俺達がこの村に来てから1時間が経過した。なんとケイデスは倒されることなく、1人で化物と熾烈な戦いを繰り広げていたのだ。
並の冒険者からベテランの冒険者でも、あの化物を相手してしまえば、1分も持たないだろう。
『よくずっと戦ってられますね……俺なんて、1秒も持たないですよ……』
ここで未来予知魔法を使っても、速すぎて避けれないし、そもそも魔法を発動する前にやられる可能性の方が高いだろうな……。
『さすがですね……』
マゼンダもこれには思わず息を飲む。
それにしても、あの化物の異常なまでの強さは何なんだ? というか、どこから生まれてきたんだ? アニメとかでよく見る科学的な生物実験的なやつが失敗した奴のか? あの異形な姿を見たら、もはやそうとしか思えない。
全く、どこの誰だか知らないが、とんでもない怪物を生み出してくれたものだ……。
『くそっ……!』
そろそろケイデスの体力が限界のようだ。無理もない。回避するだけでもかなりの体力を消費するのに、さらに攻撃までして相手に僅かだがダメージを与え続けたのだ。本当に凄いと思う。
何度も何度も思うけど、やっぱり俺は無力だなぁ……。俺は自分の力の無さに落胆すると同時に、もしマゼンダもケイデスもやられてしまったら……と思うと、ゾッとする。その瞬間、俺とトウカの死は確定してしまうからだ。
なぜ幽霊である俺の死まで確定になるかって? 忘れがちになるが、俺の身体は今、マゼンダに預けてある。今のマゼンダの身体は、俺の身体でもある。つまりは一心同体なのだ。
俺が生き残るには、マゼンダとケイデスが勝つしかないというわけだ。
『カイオスさん! 交代しましょう! 私が行きますよ!』
『くっ……分かった、頼む!』
マゼンダはケイデスと入れ替わるように、化物の前に立ち、ケイデスがトウカを守る体勢に入った。
『お姉ちゃん……』
トウカは自分よりもマゼンダが心配で不安を隠しきれない。ケイデスはそんなトウカに肩を置いてこう言った。
『大丈夫だ。ここに来る途中でマゼンダの戦いぶりを見させてもらったが、あいつは俺と同じくらい強い。きっと無事に帰ってくる』
『……うん』
トウカは不安げだが笑顔で返事をした。内心すごく不安だろうな……。
『……お姉さま』
シアンもかなり不安気な様子だ。いつものシアンなら、『きゃー! お姉さまーー!』と黄色い声援を送り続けるが、今回は相手は次元が違う。もしかして負けてしまうのでは……と不安が大きくなるのも無理はない。
『まだまだぁ!』
マゼンダもさすがというべきか、あの化物相手に一切臆する事なく、素早い攻撃でも全て捌いているし、マゼンダからの攻撃もちゃんと当たっている。
とはいえ、やはり決定打には欠ける。このまま戦い続ければ、たとえマゼンダでも、ケイデスと同じように体力も魔力も疲弊し、隙をつかれてやられていただろう。
もし、ケイデスを連れてこなかったら、マジでゲームオーバーだっただろう。
それから1時間が経つと、さすがに化物の方も疲弊してきたのか、攻撃も動きも鈍くなってきた。
『はぁ……はぁ……』
だが、それはマゼンダも同じだ。そろそろ交代させないとヤバい。
『マゼンダ! 交代だ!』
ケイデスはそう言って、化物の前に出る。不安がるどころか、リベンジだ! と燃えているようだ。なんて頼もしい。
『すみません。お願いします』
マゼンダは、長距離マラソンに完走した選手のように、倒れ込んだ。
『お姉ちゃん!』
トウカは、そんなマゼンダに駆け寄る。
『はぁ……はぁ……大丈夫です!』
マゼンダは、ビックリするくらい早く息を整え、トウカを守る体制に入った。回復早過ぎない? マジでギャグ漫画かよってくらい早いんだが……。
『さすがお姉さま! なんて回復力!』
『変態的だね~』
『誰が変態ですか! やめてください! トウカさんの前で!』
さすがのマゼンダも、変態と呼ばれるのは、恥ずかしいのか、珍しく頬を染めた。
というかマゼンダよ。トウカさんの前でと言っているが、そもそもトウカには、幽霊の声は聞こえないはずだぞ。
『お姉ちゃん?』
ほら見ろ、トウカが、『お姉ちゃん、誰と話してるの?』と言わんばかりに、マゼンダを凝視してるじゃないか。
『なんでもないですよ。トウカさん』
『遠くの仲間と連絡してるの?』
そういえば、マゼンダの独り言は通信魔法で遠くの仲間と会話してるからって事にしてるんだったな。
『そ、そうなんですよ! ちょっと仲間に相談してたんですよ!』
『そうなんだ……あのお兄ちゃん大丈夫かな……』
トウカはただでさえ、あの化物がトラウマな上に、下手したら自分も危ないのに、自分の事よりもケイデスを心配している。
きっと他人の事を思いやれる良い子なんだろうな……。
俺とはまるで正反対だな。
『あの……トウカさんも安全な所へ避難させたいですが……私はカイオスさんがいつ倒れても、トウカさんを守るために、すぐにあの化物と戦えるようにスタンバイしてないといけないので、ここを離れられないんですよね……誰か良い案はないですか』
確かにそうだな……うーん、トウカだけこっそり移動して、この村のシェルターに入れてもらうか?
いやでも、トウカからしたら、この危険な状況で1人で行動しなければいけないという、重すぎる不安がある。
くそっ……どうしたら……ん? あ、そういえば……。
『バレスさん』
『え、何?』
俺はバレスに、今、あの魔法を使えるか聞いてみた。
『うん、使えるけど……あ、そういうことか……でも、今、こんな状態だから、いつまで持つか……』
『やってみる価値はありますよ。それに、どの道、このままでは全員殺されてしまいます』
『……分かった。やってみる』
『お願いします』
さて……うまくいけばいいが……。
第130話を見て下さり、ありがとうございました。
次回は、明後日の28日(土)に投稿予定です。
宜しくお願い致します。