第128話『壊れた変態は300年経っても、あだ名で呼ばれたい』
お待たせしました。
第128話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/07/07改稿しました。
『何ですかあの人! いきなりお姉さまに槍を投げつけるなんて……最悪です! しかも謝らないとか非常識です! まるで悪魔の所業ですね! ですよね! お姉さま! ダスト様! バレス様!』
と、悪魔の頂点に位置する魔王の幹部の蒼きシスコンこと、あおいちゃん様がそう申しております。
まあ、彼の態度に怒るのも分かるが、ただ何か訳ありな感じだったようだが……。
『うーん、何か事情があったんだと思うけど……』
『それでもです! それでもし、私の敬愛するお姉さまにお怪我でもされて、重篤な事になってしまえば……私はもう耐えきれません! お姉さまのいない世界なんてキエテシマエバイインダ……』
ひぇぇ……眼がヤンデレのように輝きを失ってやがる……。そのまま包丁とか持ってても違和感ないぞ。
マゼンダも、大好きな美少女の妹であっても、さすがにこれは鬱陶しいと思うんじゃ……。
『あおい、嬉しいですよ。そんなに私の事を想ってくれてるなんて……嗚呼……なんて可愛い妹なんでしょう』
マゼンダは嬉しそうに妹への愛を呟いた。
そうだった。マゼンダはヤンデレの妹に対しても、変態的な愛を持っている奴だった。
『お姉さま……! ぐへへへへ』
ダメだこいつら。早くなんとかしないと……。
『ここだ』
偉そうな口調の彼に案内された場所は、村の奥にある比較的大きな家だった。村長が住んでそうな家だな。もしかして村長の親族か何かか?
『入れ』
彼はドアを開き、俺達を中に入れた。
シアンは『なんですか、その態度は!』と言わんばかりに、彼を睨み付けている。
彼はそんな激おこなシアンを一瞬見たが、気にせずに、俺達をリビングまで連れていく。やっぱ幽霊の俺達の事見えてるよな?
家の内装を見ると、広々とした部屋だった。天井にはシャンデリア、木製の机やソファ、複雑な模様の絨毯に、綺麗なキッチン。なんかアニメで見た金持ちの別荘って感じだ。
『油断しないで下さい。きっとあの横暴な男の事です。どこかに罠でも仕込んでるに違いない。なんて卑劣な彼……! それにさっきから態度が偉そうなんですよ! そちらから攻撃しといて! 信じられません!』
シアンは彼の態度がよほど気にくわないのか、まだ怒りが鎮まらないようだ。
まあ俺も正直、招いた家には罠でも仕込んでいたりして……とか思わなくはない。が、いざ足を踏み入れても、特に何もなかった。
一度は槍を投げた彼も、今は特にこちらに敵意を向けていないようだ。
むしろ俺達を柔らかくて豪華そうなソファに座らせ、美味しそうなお茶とお菓子を運んできた。ただし生身の人間の数だけだが。
『ほら、茶でも飲め。熱いから気を付けろよ』
言葉遣いが家に招待するお客に対するそれではないが、O☆MO☆TE☆NA☆SHIの心はあるようだ。
『ありがとうございます』
『ありがとう、お兄ちゃん』
お茶を運び終えると、彼も向かい側のソファーに座り始めた。
『さっきは、すまなかった』
彼は頭を下げて謝罪した。どうやら悪い人では無さそうだな。
『いえいえ、それよりもこの村にはあなた1人しかいないのですか?』
『いや、122人がここに住んでいた……さっきまではな』
『さっきまでは……ですか?』
『……ああ』
彼は悔しそうにこぶしを握る。
『お前達は知ってるか? 神の居城の守護神を』
『神の居城!?』
ここで神の居城という単語が出てくるとは……。
『その反応……どうやら知ってるようだな。お前達がここに来る少し前に、そいつらに俺以外の村人がさらわれたんだ』
村人がさらわれた? 奴らが? なぜ?
『さらわれたのですか?』
『ああ……』
『なぜ村人をさらったのでしょう?』
『それは……』
彼は奴らが村人をさらう理由を知っているようだが、その事について、あまり触れてほしくないのか言葉を詰まらせた。
『いずれにしても、さらわれた村人をこのままにしておけませんね』
『ああ』
『あなたは、これから村人を取り返しに行くのですか?』
『無論だ。準備が出来次第、神の居城に行くつもりだ』
『どうやって行くか、ご存知なのですか?』
『ああ、知っている。神の塔の場所も行き方も全て記憶してある』
なんだと……?
『それは本当ですか!?』
『ああ。なんだ、お前達も行きたいのか?』
『はい』
『何の目的で?』
『それは……』
マゼンダからは説明しにくいだろうから、ここは俺から喋ろう。どうせ見えてるんだろうし。
『それは俺が説明する』
『ん? あぁ、さっきからそこに浮いているお前か。その前に何でお前達は、そんな事になってるんだ?』
やっぱり俺達が見えていたか。この中で唯一俺らが見えてないのは、さっきから可愛く首をかしげているトウカだけだ。今も『この人、どこ向いて話してるの?』と言わんばかりに、困惑した顔をしている。
『ちょっと話すと長いが……実は』
俺はマゼンダ達幽霊が現れた時から、今までの事を話した。俺らの素性については、正直に話すとややこしくなるので、とりあえず冒険者ということにした。
『なるほどな……なんというか……信じられんな……』
彼の言う、信じられないとは、俺達が信用できないという意味ではなく、理解が追い付かないという意味で言っている。
『信じられないのも無理はない。だが事実だ』
『お、おう……』
彼は分かりやすいくらい困惑している。とりあえず話題を変えよう。
『さて、神の居城に行く目的だったか? 俺にはどうしても会わなきゃいけない奴がいる』
『会わなきゃいけない奴? 誰だ?』
『分からない』
『分からない?』
『ああ、姿も見せてくれなかったし、名前は聞いてないからな』
というか、あの時はとにかく混乱してて、まずは名前を聞こうと思えなかったからな。
『ただ、そいつは、神の居城にいると言っていた』
『なるほどな……話は大体分かった。それなら俺と一緒に行かないか?』
『それは願ったり叶ったりだ。ぜひよろしく頼む。皆さんもそれで良いですか?』
俺がそう聞くと、マゼンダとバレスは首を縦に振り、賛成を表明した。しかし、シアンは色々と複雑なのか首を縦にも横にも振らなかった。
『あおい?』
『わ、分かりました。一緒に行きましょう』
シアンは、しぶしぶ彼と同行する事を賛成してくれたようだ。
『よし、決まりだな。こちらこそよろしく頼む』
『はい。あのところで、私、まだ名乗ってませんでしたね。私の名は赤髪ちゃんです』
ここでも、あだ名で名乗るんかい。どうせ本名登録とか嘘なんだから、マゼンダでいいだろ。
『赤髪ちゃん』
『はい。赤髪ちゃんです♪』
『お、おう』
ふざけたあだ名で名乗られて、彼はめちゃくちゃ困惑してる。まあ、そういう反応にもなるよな……。俺の時もそうだった……。
『ああ、俺の名前はアルカイオス・ケイデス。長いからカイオスでもケイデスでも、好きに呼んでくれ』
この世界では珍しく、長い名前だな。なら俺はケイデスって呼ばせてもらおうかな。
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次回は、23日(月)か24日(火)に投稿予定です。
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