第127話『近くの村の戦士』
お待たせしました。
第127話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/07/02改稿しました。
マゼンダとトウカは、まるで仲睦まじい姉妹のように手を繋ぎ、近くの村へ続く緑の平地を歩き始めた。よきよき。
『えへへ、お姉ちゃんの手、あったかいね!』
トウカはそう言って、可愛い天使のような笑顔を見せた。可愛い。ホント可愛い。
『ト、トウカさんの手も暖かいですよ!』
マゼンダもトウカのあまりの尊さに頬を染め、雷を撃たれるような衝撃を与えた。美少女狂いの変態の事だ。内心とんでもねえピンクに染まってるんだろうな……。
そんな姉の尊い光景を見た重度のシスコンは、案の定、頬を膨らませて嫉妬している。ここまではまだ可愛い方だが、時間が経つにつれ、だんだんとヤンデレのような闇のオーラが増幅した。
『どうして……? どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテDOUSHITE……?』
シアンの闇のオーラの増幅に伴い、言動までもが闇に染まっていく。このままではとんでもない化物を生みそうだ。
おいおい、マジでヤンデレになろうとしてないか? 怖いんだけど……。
『だ、大丈夫だよ、シアン。君は赤髪ちゃんの大切な妹さ!』
さすがにヤバいと焦ったバレスは、ヤンデレモンスターと化するシアンを落ち着かせた。
『タイセツナ……イモウト……? ワタシガ?』
『ああ、もちろんだ!』
すると、シアンの闇のオーラは静まり、満面の笑みへと表情を変えた。
『それなら良かったです! 嗚呼……お姉さま……私もお姉さまの事は大切に思ってます、ホント大好きです!』
いつものシアンに戻り、俺とバレスは息をついて安堵する。
それからずっと歩いていると、狼モンスターの群れと遭遇してしまった。1匹だけなら、クソ雑魚人間でもなんとか倒せるレベルだが、群れとなると、苦戦を強いられることになるどころか、ゲームオーバーだ。
こんな時になんて運の悪い……と思っていたら、一瞬の内に、全ての狼モンスターは、マゼンダに可哀想なくらいに蹂躙されていた。
『この程度ですか……魔王城周りのモンスターの方がまだ歯ごたえがあったのですが、準備運動にもなりませんでした。本当に残念です』
マゼンダにとっては、スポーツをする前の準備運動の感覚でやったんだろうけど、あまりにも、あっさり倒してしまったので、少しがっかりした様子だ。
相変わらずめちゃくちゃ強いな……。
『きゃーーーーーお姉さま! カッコいい! こっち向いてええええええええええええ!』
シアンは、まるでアイドルを全力応援するガチファンのように叫んでいる。うるせえ。カッコいいのは同意だが。
『ははは、いやぁ~流石だね~』
バレスは、マゼンダの戦いぶりを笑いながら呑気に見ている。
『ええ、ホント、赤髪ちゃんにはいつも驚かされますよ……』
俺がそれを言われたかった……。というかなぜ言われない? 異世界から来たなら必然的に主人公になり、俺TUEEEEEになることが多いはずなんだがな……。まるで現実は甘くないぞと、この世界の神に言われているようだ。
まあ俺にも、一応、主人公らしく“未来予知“と“空中浮遊”という、この世界では珍しい魔法を習得している。だが、俺の貧弱すぎる魔力量では1日に使える回数が限られているがな。
ちなみに、このメンバーで魔力量だけで順位を決めるなら、1位はマゼンダ、2位はバレス、3位はシアン、4位はトウカ、そして堂々たる圧倒的最下位は俺だ。
俺の魔力量の低さは、その辺にいる小さな子供よりも低いらしい。なんで俺は、俺YOEEEEEEEEE系になってしまったのか……何度も思ってしまうよ。くそったれ。
『あ、着きましたよ。あれです』
シアンがそう言って、指を差した先を見ると、村が見えてきた。人は居るのだろうか? そう思いながら、村に近づき、足を踏み入れると……。
『お姉さま危ない!』
突然、上から槍が降ってきた。いや、投げてきたという方が正しいか。
マゼンダはトウカを抱き抱えながら、降ってきた槍を回避し、トウカを第1に守りつつ、反撃する体勢に入った。
『トウカさん、私の後ろに!』
トウカは、マゼンダの邪魔にならないように後ろに隠れた。
『何者ですか!』
『それはこっちのセリフだ!』
そう言って男は空から降ってくるように現れた。
その男は、俺と同じ高校生くらいで、身長は高く、超筋肉質な体型となっている。強そう。あと学校にいたら絶対モテる。このリア充が! どうせ俺の事も非リアだと見下してるんだろ! (勝手な被害妄想)
ん? でも、なんでマゼンダに対して、こんなに敵意を持っているんだ? 魔王軍だと名乗ってるわけじゃないし、知り合いとか? それとも、ゲームとかでよくある、村のしきたりで、よそ者は追い出すようにしてるのか?
『ねえ、ダスト君、気付いてる? この村、彼以外の人がいない』
『え……?』
確かに村をよく見渡してみると、槍と殺意を持った男1人しかいない。家に隠れているわけでもなさそうだ。この村の村人は、この男だけか? だが、そのわりに家の数が多い。ということは、他に人はいるはず。でも、現に今他の住人はいない。例の化物が村人を喰い荒らしに来たかと思ったが、トウカの村みたいに喰い荒らされた形跡がない。
一体どういうことだ?
『答えろ! お前ら5人は何者だ!』
『!?』
気のせいか? 今、あいつ5人と言ったか……? 幽霊である俺らの事が見えている?
『私達は旅をしてる者です! 先程、近くの村が化物に襲われました。この娘はその村の生き残りです!』
『何……?』
『それで、この娘を保護できないかと、この村を伺っただけです! あなたに敵意はありませんし、この村を襲うつもりもありません!』
『……』
男は沈黙した後、槍を降ろしてこう言った。
『……どうやら本当みたいだな……ついてこい』
男はマゼンダの言い分を完全に信じたのか、彼の家だと思われる家に、俺達を招いた。
第127話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、早ければ本日21日(土)か22日(日)に投稿予定です。
宜しくお願い致します。