第126話『村の惨状に参上した赤髪の英雄』
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第126話の執筆が完了しました。
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※2024/07/01改稿しました。
『これは……!?』
俺達は海辺から森を越えて、小さな村が見えてきたので、人が居るか確認しに行ってみたら……村人のほとんどが、無惨な状態で喰い荒らされていた。
なんだこれは……? 怪物か何かがこの村を襲ったのか?
ていうか、めちゃくちゃグロい……無惨な死体は前に夢の中で見たことがあるが、どうしても慣れ ないな。
やべえ、胃の中のものが這い上がってきそう――と思ったのが、今、幽霊だから吐き気という概念がないんだった。
今だけは幽霊で良かったと思った俺だった。とはいえ、この凄惨な光景に何も思わないはずもなく、不快感は無けれど不快には思う。
『これは酷いね……』
『はい……』
『生き残りもいない感じですかね?』
そう思い、辺りを見渡してみると、家の中から10歳くらいの女の子が、怯えながら出てきた。
『誰……?』
『私達……私は旅をしている者です。何があったんですか?』
マゼンダが優しい口調でそう言うと、女の子は質問に答えず泣いてしまった。家の中から出てきた時から泣きそうな顔をしていたので、おそらく、ずっと泣くのを我慢していたのだろうな。
すると、マゼンダは女の子を優しく抱きしめた。
『ごめんなさい。今はそれどころじゃないですよね。でも、あなただけでも生きてて良かったです』
マゼンダが、そう言うと女の子は彼女に母に似た何かを感じたのか更に大号泣してしまった。
他に生き残りがいないか、家の中を見てみたが、やはりこの女の子以外の村人は……もう……。
しばらくすると女の子は泣き止み、これまで起きた事を説明してくれた。
女の子によると、少し前まで、この村は少ない人数ながらワイワイと賑やかだったようだが、突然、“異形の化物”が現れ、村人を片っ端から喰い尽くしていった。すると、“異形の化物”は満足したのか、家の中に隠れていた女の子1人を残して、超速で去っていった。
『なるほど……そんな事が……』
『うん……』
女の子が震えながら話し終えると、マゼンダは女の子の頭を撫でた。
『辛いのに、よく話してくれました』
『うん……!』
女の子は色々と感極まってまた泣き出してしまった。
『余程辛かったのですね……ごめんなさい……もっと私が早く着いていれば……』
マゼンダがそう言うと、自分を責めている姿を見ていられなかったのか、シアンは泣きそうになりながら、こう言った。
『お姉さまのせいじゃありません! 私が……私がちゃんと道案内できていれば、こんなことには……』
いや、シアンはこれ以上ないくらい正確且つ迅速に道案内出来ていたぞ。
しかし、シアンは少女と同じように泣いている。きっと何を言っても自責の念に苛まれることだろう。
このネガティブの連鎖を止めようと、バレスがシアンにこう諭した。
『あおいちゃん、気持ちは分かるけど、ここで自分を責めても仕方ないよ?』
『う、うぅ……』
バレスの言葉を理解したあおいちゃんは頭を下げながらも泣くことをやめた。
『赤髪ちゃん、君もだよ』
『……そうですね』
『お姉ちゃん? 大丈夫?』
女の子は辛そうな顔をしているマゼンダを慰めようとしている。女の子自身もそれどころではないだろうに……。
『大丈夫ですよ、ごめんなさい、心配をかけてしまったようですね』
マゼンダは、女の子に微笑んだ。すると女の子の方もマゼンダに微笑み返した。
『……さて、これからどうしょうかね?』
『うーん、とりあえず、その娘を保護しながら、別の場所へ行くしかないんじゃない?』
まあ、それしかないよな。
『そうですね。ここからなら近くに別の村があります。化物に襲われてなければ良いのですが……』
確かにここにも化物が来たということは、その近くの村にも来ている可能性も高い。でも、それでも俺は……。
『一応、行ってみるだけ行ってみましょう。もちろん、例の化物を警戒しながらね』
俺は例え危険だとしても、少しでも神の居城の情報を集めたい……。もしかしたら、その近くの村の中に神の居城に詳しい村人がいるかもしれないしな。
『そうだね。赤髪ちゃん、さっきの私達の会話聞いてた?』
『はい、聞いてますよ。近くの村ですね?』
『うん、とりあえず、そこに行こう』
『そうですね』
『ねえ、お姉ちゃん、さっきから誰と話してるの?』
女の子は不思議そうな眼でマゼンダを見た。
そうだった。今、マゼンダ以外は幽霊だから、女の子から見たら、マゼンダが会話の途中なのに、突然独り言を呟き始めたやべえ奴みたいになってる。
『えっと……この娘に何て言えばいいでしょうか?』
マゼンダは、小声で俺達に聞いてきた。
『うーん……どうしようか……』
『ありのまま私達の事を話しても、混乱させてしまうでしょうし……どうしましょう……』
バレスもシアンも、どう対処するべきかめちゃくちゃ悩んでいるようだ。
時間も無いので、ここは俺が解決策を提示しよう。
『あの、それなら、実はさっきから魔法で遠くの仲間と連絡を取っていたという事にするのは、どうですか?』
『なるほど……それいいですね』
『ダスト君! ナイスアイディアだ!』
『ありがとうございます。それで行きましょう』
マゼンダは、咳払いをし、俺が提案した内容のとおりに動いた。
『実は魔法で遠くの仲間と連絡を取っていたんです』
『ふーん、そうなんだ……』
女の子は、あまり信じてないのか、それとも実はあまり興味が無いのか、適当な反応をしてきた。
『そういえば、あなたの名前は何て言うんですか?』
『私の名前はトウカだよ』
『……!』
トウカ……あいつの妹の名前と同じか……。
『ダスト君? どうしたの?』
バレスは、俺が動揺しているのを察したのか、心配そうに聞いてきた。
『え? いや、何でもないです』
『そう、ならいいけど』
俺の過去の事を話すわけにはいかない。そうなればきっと見放されて俺はこの危険な世界で1人で行動しなければならなくなる。せっかく今は協力してくれてるんだ。それだけは避けなければ……。
『トウカさん、あなたをここに置いていくわけにはいかないので、近くの村に保護してもらおうと思います。なので、私についてきて下さい』
『……うん』
トウカはあまり気が進まないのか、微妙な返事をした。
『どうかしたのですか?』
『近くの村に行っても、またあの化物が襲ってくるんじゃないかと思って……』
ごもっともな意見だ。あの化物が近くの村に来ないという保証はない。もし近くの村に保護してもらっても、その村が襲われたら意味がない。
『そうですね。なのでまずトウカさんを村に保護した後、私がその化物を待ち伏せして倒してきます』
まあ、それしかないよな。それに俺らだって、今後、その化物に襲われる可能性もあるんだし、こちらにとっても不安要素を片付ければ、安心して次に進むことができる。倒せればの話だがな。
『赤髪ちゃんならそう言うと思ってたよ』
『はい。お姉さまの実力があれば、どんな化物だって倒せます!』
確かにマゼンダの実力は、底が知れない。なんせ、人間でありながら、あの地の女神アースと本気喧嘩してたくらいだし、負ける気がしない。
『お姉ちゃん、強いの?』
『ええ、強いですよ』
『あの化物よりも?』
『もちろんです!』
マゼンダがそう言うと、トウカはまるでヒーローを見るような眼でマゼンダを見つめた。
どうでもいいことかもしれないが、この場合、今のマゼンダを女ヒーローと呼ぶべきか、それとも戦えるヒロインと呼んだ方がいいのか、少し悩んでしまった。
『トウカさん、そろそろ行きましょうか』
『うん』
こうして、赤髪ちゃんとトウカ、俺達幽霊組は例の化物を警戒しつつ、近くの村に赴くのであった。
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次回は、19日(木)~21日(土)に投稿予定です。
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