第125話『異形の化物』
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第125話の執筆が完了しました。
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※2024/06/30改稿しました。
一方、火の国より少し離れた平地では、二人の若き冒険者が息を切らせながらも、目的地へ足を運んでいた。
『はぁ……はぁ……ここらへんかしら……?』
『はぁ……はぁ……なあミユウ、本当にここにいるのか? その禍々しい何かというのは』
『確かだわ。だって、私の探知魔法に引っ掛かったんですもの』
――時は遡ること18時間前。火の国の基地にてダストに過去の事を話している最中の事だった。ミユウの探知魔法が反応し、”禍々しい何か”が、火の国周辺をうろついていた事が分かった。だが、すぐに別の場所へ行ってしまった。最初は放っておくつもりだったが、一応、念のため、ミユウとダイゴが偵察に行くことになった。だが、その禍々しい何かは移動速度が尋常じゃなく速い。明らか人間の出せるスピードじゃない、もしかしてモンスターか? と思ったが、こんなに速く移動できるモンスターなんて聞いた事がない。
ということは、神の居城の守護神の可能性もある。298年前から全く動く気配もなかったが、今になって動き出したかもしれない。
そうなれば作戦に支障が出てしまう。止められるまではいかなくともせめて情報を得るために、ミユウとダイゴは無理のない範囲で、“禍々しい何か”の正体を探りに行った。
『おい、あれは何だ?』
ダイゴが指を指した方向を見ると、そこには顔は狼で、しかし猪のような体型に大きな牙と爪があり、背中には黒い触手のようなものが無数に生えている奇妙なモンスターがいた。
見てるだけでおぞましい異形の化物が、辺りのモンスターを喰い散らかしていた。
『何……あの化物……?』
『分からない……あんな化物初めて見たな……』
『……』
『ミユウ?』
『え? 何?』
『どうした? さっきから身体が震えているぞ?』
『え? 嘘? 何で?』
ミユウは無意識に、異形の化物に恐怖を感じている。
見た目だけでさえ禍々しい。しかも喰われているモンスター達はどれも最強クラスのモンスターだ。強い冒険者や国を救った勇者でも苦戦を強いられる程のモンスターが束になっても、あの異形の化物には傷一つつけられなかった。
絶望的な強さの証明としてはそれで充分だ。まともにやりあって勝てる相手ではない。
『ミユウ、ゆっくりと退こう』
『う、うん……』
ダイゴは、震えているミユウを抱えながら、ゆっくりとその場を立ち去ろうとした。
――その時、異形の化物は凄まじい猛スピードで、ミユウとダイゴのすぐ目の前まで現れた。
『な……!』
2人はあまりに突然のことで、防御に遅れをとり、ダイゴは化物の大きな爪に体を抉られた。
『ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』
ダイゴは、あまりの痛みにのたうちまわった。
『え……?』
ミユウは、あまりの恐怖に反応できず、そのままへたり込んでしまった。
『ダ……ダイゴ……?』
『ミ……ユウ……に……げ……ろ……』
ダイゴはミユウにそう言い残して失神した。
『あ……あぁぁ……』
ダイゴの傷から血が流れ、辺りの地面が赤く染まる。
『い……いや……』
ミユウは、あまりの恐怖で腰が抜けていた。その恐怖とは、自分が殺されるからというのもあるが、ミユウにとって大切な存在であるダイゴがこのままでは死んでしまう。そんな思いもあって、その場から動けずにいた。
このままではミユウも間違いなく化物に殺される。
『ゥゥゥゥゥゥ……』
化物は、ダイゴからミユウの方へ顔を向けた。完全に次の餌としてロックオンしている。
『あ……あぁ……』
もはやミユウもダイゴも助からないだろう。ミユウは自分の死を覚悟し、化物の爪が容赦なくミユウを貫こうとした……その時だった。
『ゥ……?』
化物は、何かに反応したかのように、明後日の方向へと首を曲げた。
すると、化物はミユウと死にかけのダイゴを放置し、猛スピードで嵐のように去っていった。
『た……助かった……の……?』
ミユウは状況が理解しきれず、呆けていたが、血まみれのダイゴを見て、こうしてはいられない! と、ダイゴに駆け寄り、治癒魔法をかけた。
『ダイゴ! お願い! 死なないで!』
治癒魔法によって、ダイゴの傷はみるみる内にふさがった。
『う……ここは……?』
『ダイゴ! 良かったわ!』
喜んだのは束の間、次にダイゴが放った一言に、ミユウは衝撃を受ける。
『お前は……誰だ?』
『え……?』
――それから数分後、ミユウ達がいた場所から、数キロ離れた平地では、早速、“それ”が、ある生き残りの冒険者チームと対峙する。
『な、なんだこいつは!?』
剣も弓も槍も魔法も効かない。何をやっても攻撃が通らない。
そんな相手を見て、冒険者達は怯えてしまい、武器を捨てて逃げた。
しかし、その逃げた冒険者達も、超速で走る“それ”に追い付かれ、無惨に噛み殺された。
すると、たまたま通りかかった小型の猪モンスターが、“それ”を見て、恐れ、逃げようとしたが、容赦なく“それ”の牙に貫かれ、息が絶えた。
すると、その小型モンスターと同種の大型モンスターが現れ、怒り狂った。おそらく、先程殺されたその小型モンスターの親だろう。
大型モンスターは、“それ”に全力で猪突猛進をした。
しかし、“それ”に一切のダメージがなく、それどころか、大型モンスターの方が大ダメージを負い、自慢の牙が崩れてしまった。
すっかり戦意喪失した大型モンスターは、“それ”に容赦なく喰い殺された。
周りに獲物がいないと確認すると、“それ”は、また違う方角へ走っていった。
――“それ”は、もはや化物ではない。
――もし、生き残った人々が“それ”を見たのなら、こう語るであろう。
――“それ”は、“世界を終わらせに来た災厄”だと。
第125話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、16日(月)~18日(水)に投稿予定です。
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