第123話『壊れた変態は憑依しても変態のままだった』
お待たせしました。
第123話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/06/23改稿しました。
『なるほど。今、皆さんは幽霊になって、俺の周りに居るんですね』
どうやら、先程聞いた声は気のせいではなく、マゼンダ達が幽霊のように、俺の周りを彷徨っているようだ。これだけ聞くと怪奇現象だが、一応、味方なのでむしろ安心感の方が強く感じる。
なるほど、先程見た夢は夢ではなかったようだ。現にマゼンダ達の声が聞こえているし、話も噛み合っている。
――はい、魔力を消費する事で声も届かせる事もできます――
幽霊になっても魔力はあるんだ……。
――幽霊のまま戦う事はできませんが、憑依すれば戦えます――
『俺に憑依するって事ですか?』
――はい、ダスト様に憑依させて頂きます――
おお、そこはやはりイメージ通りの幽霊なんだな。
『でも、俺めちゃくちゃ弱いですよ? いくら赤髪ちゃんでも、俺に憑依したところで弱いモンスターすら、まともに倒せるとは思えません……』
自分で言ってて悲しくなってきた。
――ご心配には及びません。あおい、お願いします――
――はい。ダスト様失礼します――
『お、おおおおお』
俺の身体は、まるで大きな荷物を背負っているかのように重くなり、次に身体が揺さぶられているような感覚に襲われたと思ったら、途端に身体が軽くなった。
『あ、あれ?』
何か足元に違和感がある。そう思って足元を見ると、重力と無縁になったように浮いていた。
『今度は俺が幽霊になった!?』
どうやら1つの身体に2つ以上の魂は入らないようで、どちらか1つは幽霊になっていないといけないようだ。今回の場合も幽霊だったシアンが、俺の身体を乗っ取った事で、身体の所有権を得て、俺が代わりに幽霊になったということだろう。
更に周りをよく見ると、さっきまで姿が見えなかったマゼンダとバレスの姿も見えた。外見も生前のものと全く同じだ。ただやはり幽霊なので、触れる事はできないようだ。
しかし、まさか生きたまま幽霊になる時が来るとはな……人生何が起こるか分からないものだな。
『ダスト様見てて下さい』
俺はシアンに取り憑かれた俺の身体を見た。
『変身魔法“マゼンダ”』
シアンは、俺の姿で俺の声でそう唱えた。
自分の声ってこんな感じだったのか……初めて知った。なんか変な感じだな。
すると、俺の身体はみるみる内に、マゼンダの姿へと変貌した。
『って、なんですかこれーーー!』
マゼンダに変身したのはいいが、肝心の服を着ていなかった。これでは、ただの露出狂である。
『は、早く服を着てください!』
さすがのマゼンダも裸は恥ずかしいのか、珍しく顔が赤くなっていた。
だが、シアンは服を着る様子はなく、むしろそのままの状態で身体のあちこちを触り始めた。
『ちょっと! あおい! 何やってるんですか!?』
そして、伸ばした指先は柔らかい山にたどり着いた。
『はぁ……はぁ……これがお姉さまの……』
シアンはそう言って手を伸ばし、とうとう触れてはいけない箇所まで触り始めた。
『や、ややややややややめてやめてやめて下さい!!!!!』
鋼の精神を持ったあのマゼンダさんが、思わず声が激しく揺れてしまう程に動揺している。顔もさっきより真っ赤である。
『ふむ……赤髪ちゃん……結構良い身体してるねぇ……』
さっきから横でバレスが興味津々な目で見ている。揃いも揃って変態ばっかかよ。俺もだが。
というかマゼンダさん? あなた他の女の子の恥ずかしい所は、“良いではないか~”の精神でよく盗撮するじゃないですか……。これも因果応報なのかね。
とはいえ、マゼンダの事を考えると、これ以上はマズイ。俺としてはこの光景をずっと見てても構わないが……今後の旅に支障が出るかもしれない。ここはダストとして止めよう
『あおいちゃん、目のやり場に困るので、早く服を着てください……』
『あ、はーい!』
シアンは、また変身魔法を発動した。
すると今度は、全裸から下着姿に変身した。
『下着姿じゃないですか! ほぼ全裸ですよ! 服を着てください!』
『え~ちゃんと服着てるじゃないですか~』
そう言って、シアンはまた身体を触り始めた。
『また身体触って……ダスト様が見てるんですよ!』
『いいじゃないですか! むしろお姉さまの芸術的な肉体美を見せつけてやりましょうよ!』
『なに言ってるんですか! やめてください!』
何回やめろと言っても、シアンは言うことを聞かず、身体を触りまくる。深夜の番組でも放送できないレベルで、ヤバい感じになってきた。
『お姉さま……お姉さま!!』
お姉さまが好き過ぎる故なのか、とても口で言えないような事を平然と行っている。他に人がいないとはいえ、ここまで来るともはや狂気だな。
こうなったら最終奥義を使おう。これならきっと止まるはず。
『あの、あおいちゃん……もうやめましょう? あんまりやると赤髪ちゃんに嫌われますよ?』
このままだと話が進まなそうなので、最終奥義“嫌われるよ?”を使って、精神を揺さぶってみた。
『あ、ごめんなさい……私、また暴走して……ホントごめんなさい……自制心カスでごめんなさい……はぁ……もう最悪だ私……』
どうやら効果抜群だったようで、300年振りのネガティブモードをお披露目する事となった。
やはり、お姉さま大好きなシアンにとって、お姉さまに嫌われるというのが、1番精神的ダメージが大きいようだな。
とはいえ、少しやりすぎたか……? 300年前よりもネガティブに拍車がかかっているような気がする。
シアンはその後、魔力切れで眠くなるまで自分を責め続けた。その間はいくら声をかけても、シアンの耳に届くことはなかった。
第123話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、11日(水)から13日(金)に投稿予定です。
宜しくお願い致します。