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第120話『孤独な少年は、海と炎に心を奪われる』

お待たせしました。

第120話の執筆が完了しました。

今回は文字数が多めです。

宜しくお願い致します。


※2024/06/23改稿しました。

 アースから貰った記憶によれば、神の居城(ヴァルハラ)に行くには、神の塔という超シンプルな名の建物から行くようだ。


 だが、その神の塔は一般的に都市伝説のような噂レベルとしてしか認知されていないため、なかなか情報が集まらないようだ。


 というか、なんでその神の塔の記憶だけがあって、肝心のそこへ行く道中の記憶が無いんだよ……。


 アースのやつ、もしかして神の居城(ヴァルハラ)に行った事ないのか? 女神だって言うから、てっきり神の居城(ヴァルハラ)に行けるものだと思ってたけど、意外とそんなものなのか……。


『はぁ……もういい、とりあえず外に出よう』


 俺は誰も居なくなった部屋のドアを開けて外に出た。


 ドアの先にあったのは、アニメやゲームでありそうな洞窟だった。蝙蝠(こうもり)のモンスターとか岩石のモンスターとか出てきそうな雰囲気だが、光が漏れてるのか少し明るめだ。


『というか、ここどこなんだ?』


 洞窟なのは分かっているが、魔王城や火の国よりどれくらい離れているのかを知りたい。


 どうやらアースの記憶上でも、この場所はあまり馴染みがないようだ。アクタの話と照らし合わせても、多分1回しか行った事無いんだろうな。


 しかし参ったな。アースの記憶を頼りに近くの国や街へ行こうと思ったが……早速、道に迷ってしまった……。


『まあ、とりあえずここを出るか。そうすれば何か分かるかもしれないし……』


 俺は何も分からないまま、恐る恐る洞窟の中を進み、何事もなく外に出ることができた。


『とりあえず外に出たはいいが、次はどこに行けばいいのやら……』


 空を見上げると、美しい夕焼けの光が海を照らす。この美しい景色を見るだけで、先程の嫌な出来事も、この時だけは忘れられる。


 俺は景色に目を奪われつつ、周辺を隈なく調べてみた。


『うーん、特に何もないかな……』


 強いて言うなら、果物が実りそうな木があったり、良さそうな釣り場があるくらいか。例えるなら、人間とどうぶつの住人が自由に暮らす某ゲームの雰囲気に似てるかも。


『それにしても、人が来ないよな。モンスターもいないし、なんだか不思議なところだな……』


 現在の火の国を見ても知り合い以外に人は一切いなかった。確かに300年も経てば環境が一変してもおかしくはないのだが、あれだけ栄えた国がこんなに廃墟の国になるなんて事あるのか。


 何かとんでもない事が起きたからなんじゃないだろうか……? だとしたら人々はどこに? どこか遠くに避難したのか、それとも滅びてしまったのか……?


 待て、他に人がいないのなら、どうやって神の塔の情報を得ればいい? まさかアクタ達に聞けるわけないし……かといって他の女神にしても、話に聞いていた霧の女神みたいな奴だったら、俺が一方的に殺される可能性もあるし……。


『とりあえずモンスターに警戒しながら少しずつ進むか……』


 一応アミから貰った杖はまだ持っていて、魔法もまだ使えるが、極力モンスターには遭遇したくない。自慢ではないが俺はめちゃくちゃ雑魚だからな……。


『ていうか、異世界ものだったら、俺TUEEEEEできるんじゃねえのかよ! まあ、中にはそうじゃないものもあるけど……でも……でも、どうせなら、俺TUEEEEEして、美少女とイチャイチャしたかった……』


 俺は膝を落とし、絶望した。


 無念。あまりにも無念。


『嗚呼……どこかに俺を救ってくれる美少女はいないだろうか……』


 もしかしたら超絶美少女のゴールドちゃんやブロンズちゃんあたりは助けてくれるかも……と思ったが、話を聞く限り、皆、完全にアクタ側だろうしな。しかも俺は実はこういう奴だったし、もしアクタが俺の正体をバラしていた場合、彼女達と俺は敵対関係になっている可能性が高い。


 つまり、今の俺には味方がいないのだ。神の居城(ヴァルハラ)の連中も、人間嫌いっぽいし、当然、俺の事も良く思ってないだろうし、ずっと俺に纏わりついていたダークネスの気配も消えてるし……。


『俺は……一体どうすれば……』


 …………まあいいか。前の世界だって俺はひとりぼっちだった。誰にも頼れないし、誰とも話さなかった。むしろ、いじめられるか煙たがられたかのどちらかだった。


 そうだ……世界が変わっただけで、今までと何も変わらないんだ……じゃあ、別にいいのか……。


 俺には味方はいないと改めて認識し、1人で前に進むと決意した。


『ってあれ? もう夜か……』


 余程考え込んでいたのか、夕陽は知らぬ間に沈み、代わりに月が顔を出していた。


 この景色を見ながら寝るのも悪くないが、外は冷える上に、もしここに敵がやってきたら……と考えると、とても寝られないので、一旦モンスターのいない洞窟の中に身を潜める事にした。


 まあ、洞窟の中も安全とは限らないけどな……でも外に無防備を晒すよりかはマシだ……。


 昼頃まで居た和室に戻るという案も思い付かなかったわけじゃないが、自分が拘束されていた場所に戻るというのも、なんか複雑だ。身体だけではなく、心もリラックスさせたい。


『ここでいいか』


 俺は洞窟の奥の隅で一夜を過ごす事にした。一応、辺りにモンスターがいないか恐る恐る確認してみたが、全くその姿も気配もなかった。


『これで安心して眠れそうだ……でもその前に……』


 俺は予め外で拾っておいた木の枝を並べて、そこに炎魔法を放ち、明かりとして活用した。


 こうして見ると、まるで旅をしているような気分になった。状況は最悪だが男のロマン的なものを感じて、気分は悪くない。


 そんな事を思っていると腹の虫が空気を読まずにグゥ~~~と鳴った。


『腹減ってきたな……』


 そういえば、昼から何も食べてなかったな。


『あの和室になら冷凍庫あったような……』


 不本意だが和室に戻って食料をぬす……漁りに行こうと、ドアの前まで行き、ドアノブを引いてみたが……。


『あれ?』


 そこには和室も何もなかった。というか、どこにも繋がっていなかった。


『嘘だろ……どうなってんだ?』


 何度開け閉めしても、ドアの向こうには何もない。このドアはもはや、ただ無意味に置いてあるだけの粗大ゴミになってしまった。


『チッ……クソが! はぁ、仕方ない。外に出て、食料でも探そうか……』


 俺は肩を落とし、外に出ようとすると……。


『いてっ!』


 上からなにかが俺の頭上に落ちてきた。岩の欠片かなにかが崩れ落ちてきたのかと思ったが、それにしては重量感が違うような気がしたので、落ちてきたものを確認すると、この洞窟に落ちているとは思えないものだった。


『ええ!? なんでバナナが???』


 天井にバナナの木でも生えているのかと思ったが、上を見てもただのゴツゴツした岩の天井でしかなかった。ここからバナナなんて降ってくるなんて、魔法以外ありえない。


『誰かいるのか……?』


 そうとしか思えない。誰かが魔法で、バナナを俺の元に送りつけたと考える方が自然だ。


 不気味に思った俺は辺りを警戒し、杖を取り出した。


『おい! 誰かいるのか!!』


 俺の声が、洞窟内に響き渡った。だが一向に誰かが来る気配がなかった。


『本当に誰もいないのか……?』


 いくら待っても、シーンとした静けさが変わることなかった。むしろ、俺のお腹の音の方が1番うるさかった……。


『やべぇ……めちゃくちゃ腹減ってきた……どうしよう……』


 腹が減りすぎて苦しい……仕方ないので、俺は落ちてきたバナナを手に取り食べた。罠だったとしても、仕方ない!


 俺は藁にもすがる思いで、勢いよくバナナを完食した。


『ふぅ……食った食った……』


 とりあえず、このバナナに毒は入ってない。味もいつも食べてるあのバナナと同じものだったので大丈夫……と思いたいが、もしかしたら、遅延性の毒魔法かなにかが、このバナナに施されていた可能性もあるから油断はできない。


 まあいずれにせよ、俺は空腹に耐えられそうになかったので、食べるしかなかったんだがな。人間は数日は食べなくても大丈夫とよく聞くけれど、それと耐えられるかはまた別の問題だ。


『あ……明日以降の飯の事も考えなきゃいけないな……どうするかね……』


 とりあえず明日は魚でも釣ろうかな……それとも近くを調べて弱いモンスターを焼いて食うかな。この世界のモンスターは、ゴールド曰く、たとえ毒があっても、よく焼いて、うまく調理すれば、人間でも安全に食べれるらしいしな。


 そんな事を考えていると、疲労なのか、激しい眠気に襲われた。今日は特に色々あって疲れたからな。


『ふわぁ……眠く……なってきたな……もう寝よう』


 俺はその場で硬い地面に寝転がる事にした。


『ま、明日の事は明日考えよう。』


 俺は一旦、考える事をやめて、夢の世界へダイブした。




第120話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、明後日の6日(金)か7日(土)に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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