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第117話『真プロローグ』

お待たせしました。

第117話の執筆が完了しました。

宜しくお願いいたします。


※2024/06/23改稿しました。

 俺はこの後すぐにアクタに殺されてしまうのだろう。そう悟った瞬間、頭の中にある記憶が、浮き上がるように思い出す。つまり走馬灯というやつだ。そのいくつも浮かび上がってる記憶の中に、こんな記憶があった。


 それは俺が異世界転移する前の話だ。ついさっきまで記憶が曖昧だったが、今回の走馬灯でパズルのピースが揃うかのように、全て鮮明に思い出したので振り返ってみた。


 ――これが本当のプロローグだ。



 ――俺は壊れた歯車だ、と言ってもそれは、俺が考えた痛い中二病みたいな陳腐な発想から名付けたものだがな。俺は昔から勉強も運動も出来ず、得意な事もない。しかも過去にいじめられた……ので、俺をいじめた奴は、もれなく()()()()()()()()()()()


 もちろん喧嘩の才能もない俺がいじめた奴らとまともに戦って勝てるはずもない。じゃあ、どうやってぶちのめしたのか? それを話してやる。


 ――それは、ある日の事だった。進行形で常にいじめられていた俺は、偶然にも学校で俺をいじめた奴らのリーダー格の奴が、妹と一緒にいる所を目撃したのだ。妹はまだ小学生くらいで忘れてきた弁当を届けに来たところだったらしい。俺への態度とは反転して、とても仲睦まじい様子だった。


『なるほどな……』


 俺はこれは報復のチャンスと思い、その妹を人質に取り、リーダー格のクソ野郎を呼び出して、こう脅したのだ。


『俺をいじめたお前の仲間を全員呼び出し、病院送りにするくらいボコボコにしろ。言う通りにしないと、お前の大好きな妹が大変な事になるぞ?』


 すると血相を変えたリーダー格は、仲間達を人目のつかない校舎裏に呼び出し、苦悶の表情で、やむを得ず仲間達をボコボコにした。さすがリーダー格なだけあって、喧嘩の強さは半端ではなく、10人くらいいた仲間達を余裕で倒した。


『はぁ……はぁ……これで満足か? 妹を返せ! このクズが!』


『クズだと?』


 こいつは人質を取られている立場なのにも関わらず、俺を睨み付ける。いじめてきたお前が俺にクズ呼ばわりか……どうやら、まだ反省が足りないようだな。


 そう思った俺は、あらかじめ持ってきたカッターをリーダー格に投げ渡した。


『まだだ。そのカッターで自害しろ』


『……は?』


『どうした? こっちには人質がいる事を忘れるなよ』


 俺はポケットからハサミを取り出し、脅すようにリーダー格の妹に向ける。


『お兄……ちゃん』


 凶器を取り出した事で、危機を感じた妹は更なる恐怖を重ね、元々泣き出しそうだったのが、ついに泣き出してしまった。


『もうやめてくれ! 分かった! 自害でも何でもするから、妹には手を出すな!』


 リーダー格は妹を助ける為に、プライドを捨てて土下座をし、その後カッターの刃を自分の胸に刺した。


『うわああああああああああ!』


 カッターで空けた穴から多量の血が垂れ流れる。


『お兄ちゃああああああああああん!!!!!』


 リーダー格はカッターが刺さったまま、倒れ、そのまま血を流して気を失うかに思えたが、妹を助けたい一心なのか、痛みを堪えて立ち上がり、今にも死にそうな声で、俺にこう言った。


『はぁ……はぁ……い、いもうど……を……が……がえぜ……』


 妹を返せと言っているようだ。まあこれ以上やるとシャレにならないだろうから、そろそろやめてやるか。


『良いだろう』


 俺はハサミをしまい、妹を解放した。すると、妹はリーダー格の元へ泣きながら駆け寄った。


『お兄ちゃん!』


『はぁ……はぁ……無事か? 桐華(とうか)?』


 妹の名は桐華というのか……まあどうでもいいか。


『うん! 私は無事だよ! でも……お兄ちゃんが……』


『俺は……はぁ……はぁ……だ、大丈夫だ』


『お兄ちゃん……』


 妹は俺の方を振り返り、憎悪の感情を俺に向けた。


 なぜそんな目をする? 悪いのはお前の兄だろ。そのクズが俺を虐めさえしなければこんな事にはならなかった。俺は悪くない。


『あなた……普通じゃない!』


『……!』


 普通じゃない……か。


 目的は果たし、もうここにいる理由もないので、俺はその場を去った。


 それから、俺は証拠を隠滅する為に動いた。具体的にどうしたのかは聞かない方がいい。ヒントだけ言うなら、校長が女子生徒と密会していた。


 あの後、リーダー格の奴は病院に緊急搬送され、手術を施され、無事に命を救われたそうだ。後で復讐しに来るだろうと覚悟していたが、妹の事もあって、横暴な性格を改め、俺を見かけてもいじめるどころか、避けるようになっていた。


『はぁ……』


 確かに俺は目的を果たした……だが、それでも俺の心はスッキリする事はなく、むしろモヤモヤしていた。普通じゃないって言われたからか? それとも……。最近そんな事ばかり考えてしまう。そのストレスなのか、毎日吐き気が襲ってくる。なぜだ? 俺は……俺は正しくなかったのか?


 知らない。もう何も考えたくない。


 だがあの少女の顔が忘れられない。それはまるで呪いをかけられたように、しつこく俺の心を蝕む。それか罪悪感にアイロンをかけられているような、不快な熱さが俺を襲う。


 もう嫌だ、うんざりだ! と思ってたら、突如目の前が闇に飲まれるように、視界が真っ暗になった。


『は? なんだこれ?』


 俺はかつてない体験に驚きを隠せない。さっきまで明るい部屋に居たのに、こんな漫画にあるような事が現実であったら、そりゃ誰だって驚く。


『どうなってる? もしかして俺は死んだのか? 部屋に爆弾でも仕込まれてたとか? いや、そんな訳ないか……ん? あれは?』


 真っ暗な空間なのに辺りを見渡してると、僅かな光が見えた。なぜだろう? 俺は無性に、その光に手を伸ばした。すると、その光はどんどん大きくなった。なんだろう? この気持ちはなんだろう? もしかしてこの光は俺を救ってくれるのではないか? と根拠も無いのに期待してた。


 だが、本当にそうなのか? 俺みたいなエゴイストには救いではなく、天から罰が下るの方がしっくりくるが……?


『十中八九罰の方だろうな……まあ今更じたばたしないけどな、どうせ俺なんて……』


 俺は元々、人生に絶望してた。学校ではいじめられ、いざ復讐してみれば『お前は普通じゃない!』と少女に睨まれてしまった。


 まあ、そうだろうな。俺は普通じゃない。それは確かだ。なんせ、俺は勉強も運動もダメだわ、宿題もやらないわ、弱いくせに、うざい奴にはいちゃもんをつけまくるわ、最終的にいじめた奴の妹を人質に取るという卑劣な手段を取ってしまうようなクズだ。いじめへの復讐とはいえ、俺みたいな危険人物、いない方が世のためだろう。


 でも……もし、あの光が俺を救ってくれるのなら……。


 俺は叫んだ。俺は今まで心に留めていた想いを、走りながら涙を流しながらあの光に向かって叫んだ。


『誰か助けて!』


 ――いいよ。救ってあげる。ただ、いじめられたからとはいえ、君のやってきた事は良くない。だからその報いは受けて貰うよ。


 俺の声に反応したかのように、どこかから誰かが返事をした。厳しい口調だがとても優しい声だ。


 ――君はこれから大変な目に遭う。だけど、君ならきっと乗り越えられる。


 これからって何の話だ?


 ――君をこれから異世界に転移させる。その際に君の記憶の8割はこちらで預からせて貰うよ。それから君の記憶の中に、ある人物の記憶を入れさせて貰うよ。


 異世界? 記憶?


 ――まあ、もしかしたら、何かのきっかけで記憶が蘇るかもしれないけどね。


 は? 一体何を言っている?


 ――はい。これで準備完了。もし記憶を全て返して欲しかったら、神の居城(ヴァルハラ)のどこかに私はいるから、大変だけどぜひ来てね。それじゃ、いってらっしゃい。


 ちょ、ちょっと待って、そもそもあなたは誰――。


 俺の言葉は遮られ、後ろから迫り来る光に呑み込まれた。




 ――これがダストじゃない本物の俺の、本当の始まりだった。


第117話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、30日(金)か31日(土)に投稿予定です。

宜しくお願いいたします。

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