第116話『偽物は本物に染まる』
お待たせしました。
第116話の執筆が完了しました。
今回から、新章突入し、やっと本来の主人公が登場します。
宜しくお願いいたします。
※2024/06/16改稿しました。
《久々の主人公視点》
さて、300年前に起きた事を長々と聞いていたわけだが。
なぜ俺は今、拘束されてるんだ?
俺は最初シルバーちゃんとブロンズちゃんに、これまで起きた事を聞いていた最中に謎の男が入ってきたと思ったら、無理やり連れ去られて、気づいたら旅館の和室のような場所に移動していた。
どうやら目の前にいる美少女、時の女神が世界の時を止めている間に謎の男が俺をここに運んだらしい。それから謎の男がブロンズちゃんに代わり、過去の話をし始めた。
まあそんなことはどうでもいい。今、俺が知りたいのは目の前にいる地の女神のアースちゃん、時の女神、そして謎の男……名はアクタ、つまり夢の中で俺の兄貴だった奴が、なぜ俺を拘束し、まるで尋問するかのように、俺を見下ろしているのかだ。
『これまでの話は分かった。だが、なぜ俺を拘束する?』
『それは、お前が本物のダストではないからだ』
『』
『は? 何を言ってるんだ? 俺は間違いなくダストだぞ? それ以外の何者でもない』
『それはお前の記憶上ではそうだろうな』
『記憶上では……?』
『今、お前の中にある記憶を全て掘り出してみろ』
偉そうに命令してるのは腹立つが、俺はアクタの言う通りに今までの記憶を1つ1つ思い浮かべてみた。
まず俺の名前はダスト。性は黒崎。元々はごく普通の高校生だが、ひょんな事から異世界転移してしまい…………えっとなんだっけ? …………あ、そうだ、ある帝国の隊長として、仲間と共に帝国を守る為に、俺は襲撃してくる隣国の敵や、人々を襲うモンスターと戦い続けた。あれ? その後はどうしたっけ……? あ、あぁ、そうだった……その後ギルドに入り、兄貴を筆頭に、ギルドの依頼をこなし、魔王城に召喚され……ってあれ? 何だこれ……? 記憶の1つ1つが、まるで繋がらないし、しっくりこない……まるで頭の中に複数の別人の記憶があるみたいだ。
『やはりな。記憶が混乱しているだろう?』
アクタはまるで俺の心を読んでいるかのように、そう言った。
アクタの言う通り、確かに過去の記憶を思い出そうとすると、色々な記憶が混雑する。気持ち悪い。
『何か知ってるのか?』
『どうやら、お前の記憶が改ざんされているようなんだ』
『記憶の改ざんだと?』
『ああ。恐らくお前は何者かにダストの記憶の断片を挿入され、ダストとしてこの世界にやってきたというわけだ』
『つまり、実は俺はダストではない別人で、この世界とは全く違う異世界からやってきたということか』
『その通りだ。やけに落ち着いているな。もっと戸惑うものとばかり思っていたが……』
そういうのはライトノベルとかでよく見る展開だからな。まあ、とはいえ実際に体験してみると受け入れがたい事実だし、表情に出さないだけで、頭もおかしくなりそうなくらい混乱はしているが……。
というかそもそも、こいつの言ってる事が本当だと言う保証はない。もしかしたら、邪魔な俺を殺す為に送り出された刺客という可能性もある。
『じゃあ俺がダストじゃないなら、俺は何者なんだ?』
俺がそう質問すると、時の女神が前に出て、アクタと説明役を変わった。
『まずあなたの本当の名前は――』
『ちょ、ちょっと待って』
『何?』
『この世界で本人に聞こえるように本名を言うと、空からの光に連れ去られるんだろ?』
『それはマーブルが赤髪ちゃんにつかせた嘘』
『は? 嘘だと?』
『正確に言うと、この世界のルールであなたのように異世界から転移してきた人間には、そういう嘘をつく事が決まっている』
という言い方をしている事は、俺の他に転移者が……ってあいつか……葛木か。ベンリ街に行った時に、あおいちゃんを投げ飛ばし、俺を痛めつけたあのクズ野郎か。あれ? でもあいつ、俺の事を黒崎と呼んだよな……あいつも記憶を改ざんされてる可能性はあるな。というか、そもそも全く面識のない別人だって事もありえる。
『一体何の為に、そんな嘘をつく?』
『……自分の本当の正体に気づいてほしくないから』
時の女神は、さっきからずっと無表情だったが、一瞬だけ顔が強ばった気がした。
『どういうことだ?』
『……』
俺がそう言うと、3人はばつが悪そうに、黙ってしまった。
これと同じような光景は前に見た覚えがある。そう、俺がこの世界に来た際に魔王に、“なぜ俺をこの世界に召喚したのか”と聞いた時だ。あの時も、同じように魔王も赤髪ちゃんもあおいちゃんも黙ってしまったのだ。前々から気になってたが、やはり俺がここに来たのは、何か重要な理由がありそうだ。
『どうした? 言えないのか?』
拘束されてる立場ではあるが、あえて強く問いただしてみる。
『言えない』
はっきりとそう返答してきた。
でも、これでなんとなく分かった事がある。俺は、それを確かめる為にこう質問をした。
『なあ、こうして俺を拘束しているのは、もしかして、俺が本物のダストじゃないからではなく、俺の本当の正体が危険人物だからか?』
俺がそう言うと、3人は核心をつかれたかのような、少し驚いた顔をした。
『どうやら当たりのようだな』
だが、俺が現状分かってるのは、それだけだ。本当の俺としての記憶はほとんどない。が、覚えてる事もある。それは、俺が最低最悪のエゴイストであるという事だ。
『どうやら自分の立場が解ってしまったようだ……マーブルには悪いが……』
アクタがそう言うと、俺に向けて拳を突き出してきた。その拳には明らかな殺意を感じた。それと同時にこの攻撃を受けたら死ぬ。そんな予感が、俺を恐怖で震わせた。
『お前には悪いが……ここで消えてもらう』
アクタは拳を構えた。アクタの攻撃によって、あと5秒もしない内に、俺は死ぬだろう。
どうする……? どうすればいい?
第116話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、27日(火)~29日(木)に投稿予定です。
宜しくお願いいたします。