第113話『アースの想い』
お待たせしました。
第113話の執筆が完了しました。
宜しくお願いいたします。
※2024/06/16改稿しました。
『このような小細工が、我に通用すると思ったか?』
『くっ……』
やはりこの男……規格外だ……。傷をつける事はおろか、逃げる事すらできないとは……。
『最後に何か言い残す事はあるか?』
言い残す事……? ああ、あるさ……。てめえに、ぜひとも贈りたい言葉がある。
『くたばれ、クソ野郎』
私はそう言って、唾を吐いた。
『……そうか、では、裁きの時間だ』
ゼウスはそう言うと、いくつもの雷を出現させては凝縮させると、バチバチしてる稲妻を纏った黒い球状の物を作り出した。
こんなの喰らったら間違いなく滅ぶ。
――――私は死ぬのか。
『これで終わりだ……愚かな女神アース』
ゼウスは黒い稲妻を私に向けて発射した。
私には反撃できる力も、逃げる気力すらも失せた。これも運命だと思って消滅するしかない。
はぁ……もっと生きたかったなぁ……やりたい事まだまだあったのにな……例えばゴールドちゃんの匂いを嗅ぎながら、イチャイチャ (一方的に)したり、ブロンズちゃんに蔑まれたり、アクタをぶん殴って土下座させたり、シルバーちゃんと……笑って話したり……話したり……。嫌だよ。
――なんでシルバーちゃん達と仲良くしちゃいけないの?
――なんで死ななきゃいけないの?
――なんで……魔王軍が傷つかなきゃいけないの?
ふざけんな。
何が終わりだ。
私は、ゼウスに勝てないからって、大切な友人を見捨てるのか?
こんな所で、お前は諦めるのか?
違うだろ。
足掻け。
例え辛くても運命だとしても足掻け。
例え面倒なものを背負っていたとしても……。
生きてる限り生きることを諦めるな。
立てよ! 自分!
『ああ……そうだ……私は……諦めない!』
私は残る力の全てを尽くし、生きるため全力で逃亡する事にした。まず前方に迫っている黒い稲妻魂を回避し、大地の力を使い、私の真下の地面を四角形に切り取り、可能な限り高く突出させ、私は、ロケットの如く大空を舞い、雲を突き抜ける。このまま逃げきれるかは分からない。正直、一か八かの賭けだが、このまま死ぬよりマシだ!
『うわああああああああああああ!』
私はアクタのように空を飛べるわけではないので、当然そのまま地面に落下する事になるが、今の私はまだ大地混沌魔法を発動している状態……つまり、落下しても比較的ダメージが少なくて済むような柔らかい地面を選び、私の落下地点に置くだけだ。だが、問題はそこにゼウスが待ち伏せしてる可能性が高いということだ。ゼウスは全知全能。この世のありとあらゆる魔法を使えるし、身体能力も、あのアクタをも越える。そんな奴が私の落下地点にたどり着いていないわけがない。
『うっ……』
身体も酷くガタガタだ。もし本当に待ち伏せされようものなら、今度こそ死を覚悟しなければならない。
頼む……頼む……。奇跡的に、ゼウスが何かしらの妨害を受ける事を全力で祈る。
祈りながら落下していると、優しくて、暖かい横風が、私の肌を撫でる。
『……ん?』
誰かがこちらに近づいてくる影が見えた。まさか、ゼウスの奴……わざわざ空を飛んで私を裁きにきたのか!?
そう思っていたのだが、こちらにやってきたのは、ゼウスではなく、なんと風の女神だった。
『え……ウィンちゃん……何でここに……?』
『何でって、アースを助けに来たんだよ』
『私を……助けに?』
『詳しい話は後だ。それより、さっさと逃げようぜ。私に掴まってれば、このまま空を飛んでいけるから』
『う、うん』
私はウィンちゃんに言われるがままに、お姫様抱っこされながら、超スピードで空を駆けた。
やだ、ウィンちゃん……まるで王子様みたいだわ……。思わずキュンとする私であった。
その後、しばらく経ってもゼウスは追って来なかった。ゼウスはアクタと同じように筋力のみで空を飛べる。奴のスピードならすぐに追い付くことができるはずだが、それでも追ってこないということは、私達がそのまま空を駆けるとは知らずに、先程いた場所を捜索し続けてるか、それとも、知っててあえて追わなかったのか……。まあ、いずれにせよ、ひとまず窮地は逃れたということだ。そこは前向きに考えて安堵してもいいだろう。
『何で、私がピンチだと分かったんだ?』
『いや……実はな……』
ウィンちゃんの話だとアクタ達と話してる途中で、ウィンちゃんがフランの態度にカッとなってしまい、時の女神がウィンちゃんには頭を冷やしてもらうため、世界の時を止めて気づいたら、遠くの場所にいた。ウィンちゃんは、さすがにやりすぎたなぁ……と反省した後、時の女神の元へ戻ろうとした途中で、偶然ゼウスがこの世界に降りてくる所を見かけて、気になったので気づかれないように慎重につけてみたら、私が裁かれそうになってたので、隙をついて助けに行って、今に至るというわけだ。
『なるほどね……』
『ああ……それにしてもビックリだぜ……まさか、あのゼウスが降りてくるなんてな……』
そもそも、なぜゼウスは自らわざわざこちらの世界へ来て、魔王城にまで足を運んだのか……。
『うん……私も、正直死ぬかと思ったよ』
『だろうな……まあ、生きてて良かったぜ』
『うん、ありがとね。ウィンちゃん』
『お、おう。気にすんなよ』
ウィンちゃんは、お礼を言われて少し照れた表情を見せた。そんな所も可愛いな。
それから、私達は色々な話をしながら、空のドライブを満喫し1時間くらい経った頃、目的の場所に着いた。
『こんなところにドア……?』
『ここが、“世界の果て”の入口だ』
このドアの先があの“世界の果て”か……とても信じがたいが、ウィンちゃんが、嘘をついているようには見えないし、本当なんだろうな。
『じゃあ、ドア開けるよ……』
私は、期待と不安と何か色々な思いを胸にドアを開けた。
『アース様!!』
開けてから、すぐに飛び込んできたのは、シルバーちゃんだった。私の事が心配だったのか、泣いた跡が、目の下にはっきりと浮かんでいた。その後、泣いた跡が埋め尽くされるくらいに、泣き出した。
『アースちゃん!』
ゴールドちゃんと、ブロンズちゃんも、涙目になりながら、私に駆け寄ってきた。
『皆……心配かけたね』
私に駆け寄ってきた3人を、私は抱きしめた。
『アースちゃん?』
涙は最後まで隠そうかと思っていたのに、私は耐えきれず、感極まり、号泣してしまった。
『良がっだああああああ! もう二度と会えないがど思っだよおおおおおおおおおお!』
ああ……本当に良かった。
生きる事を諦めなくて良かった。
私は今、美少女3人を抱きしめて……ああ、最高に幸せだなぁ。
第113話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、20日(火)~22日(木)に投稿予定です。
宜しくお願いいたします。