第109話『アクタ。おかしい』
お待たせしました。
第109話の執筆が完了しました。
宜しくお願いいたします。
※2024/06/10改稿しました。
『――以上。これが彼の全て』
トッキーは、あいつについての情報を、包み隠さず全て話してくれた。
『……なるほど』
『意外。落ち着いてる』
『そう見えるだけだ』
表情には出さないが、驚愕の連続で心が震えている。そうか……俺は……そうだったな。
俺はあいつに今後どう接すればいいんだ……。ここから先、あいつに会うまではそんな事を考え続けるのだろうな。
『話は終わり。世界の時よ動け』
トッキーがそう言うと、世界の時は動き出し、止まっていた者達も、何事も無かったかのように一斉に動き出した。
『――――たの? ん? 何、ボーッとしてるの?』
『何でもない。気にしないで』
『そ、そう?』
『それより、君たちの話を聞かせて』
トッキーは意外にも人に興味を抱いているようだ。
『いいけど、何が聞きたいんだい?』
『色々と』
『うん。いいよ。いくらでも話そう!』
アミはノリノリでトッキーの提案に乗った。
他の者も同調するように頷くと、トッキーの口角は僅かに上がっていた。
そこからは皆色々な話をしてくれた。俺達のそれぞれのエピソードから最近起きた出来事まで、ここにはいないマゼンダ、シアン、バレス、そしてダストの名前も出てきたが、しんみりする事なく話はスムーズに進み、更なる盛り上がりを見せた。
雑談の声が襖の奥まで聞こえたのか、ゴールドとフランが起き、襖を開けた。
『あ、ごめん。うるさかったよね?』
ゴールドとフランは起こされたことよりも、楽しそうな会話に交ざりたそうにしているようだ。
『何か楽しそうな話ししてるな!』
『アタシ達も混ぜろー!』
二人の看病していたシュタインも盛り上がってるこちらが気になったのか、襖からこっそりと覗いていた。
『おーい! シュタインも、こっちに来いよー!』
ゴールドがそう言うと、シュタインはおそるおそるこちらにやってきた。
こうして、3人も一緒に会話に入った。
――――それから、3時間後……皆はまだ話を続けている。もう相当話したはずだがな。まあトッキーからの質問が多いというのもあるか。
トッキーからしたら俺たちの話はとても劇的で刺激的な夢を見ているような感覚なのだろう。その時のトッキーの目は、まるで初めておとぎ話を聞かされる子供のような純粋でキラキラした目をしていた。
俺は時々思う事がある。この世界の女神はどうして、こんなにも人間らしいのだと……。
――――それから、更に2時間後…………まだ話が終わりそうにない。長くないか? 俺なんか話すネタが切れて、一切喋ることがなくなってしまったぞ。
――――更に更に5時間後……さすがにこれだけ話してれば、話題も尽きる……と思っていたが、全然、話が終わらない。俺はとうに雑談の輪から外れているぞ。
『そろそろ飯くらい食ったらどうだ?』
そう聞いてみても誰一人として聞く耳を持たずに、口を動かし続けている。
『やれやれ』
――――更に更に更に6時間後……俺は既に外の空気を吸いに行きつつ、運動がてら周りに生息している危険なモンスターを狩り尽くしていた。
もうさすがに皆、喋り疲れて会話もしてないだろうと思いながら戻ってきたが……まだ喋ってる……だと……!? しかも一切疲弊している様子もない……俺は戦慄を覚えた。
――――更に更に更に更に24時間後……まだまだ喋れるようだが、さすがに空腹には耐えられないようで、飯の時間と成った。
料理はゴールドを中心に、腕のたつ料理人が厨房に立った。
大人数なので、まるでパーティーのように大量の料理を並べては片っ端からそれぞれの胃袋の中に吸い込まれた。
『そういえば、ミユウとダイゴはどこ行った?』
俺は思い出したようにそう言うと、思わぬ解答が返ってきた。
『えっと……それって誰ですか?』
『は? ここに来る途中で一緒に旅をしただろう?』
俺がそう聞いても、皆、顔を合わせて、首を傾げていた。
『そんな奴居たっけ?』
『は? 居ないだろ』
どうやら、誰一人としてミユウとダイゴの存在を認識していないようだ。一体どうなっているんだ……?
『アクタ。おかしい』
ああ本当にその通りだ。ただおかしいのは俺ではなく、今この状況だ。
そもそも、ミユウとダイゴはいつ消えた? 少なくともここに入る直前は居たはずだ。だが俺もミユウとダイゴの存在に気づいたのはつい先程だ。本当に思い出したかのように存在を認識したが……何故今ここに居ないんだ? 誰の仕業だ?
俺は嫌な予感をしつつも、改めて皆の方を向いた。すると……また誰かがいない事に気づいた。今度はブロンズとみどりが消えている。
『ゴールド、シルバー。お前達は何人姉妹だ?』
『なんだ突然? アタシ達はいつだって三人姉妹だ!』
三人か……ならブロンズの存在自体は消えてないのか……?
『では、お前達の妹のブロンズはここにはいないようだが、どこにいる?』
俺がそう聞くと、ゴールドとシルバーは上を向いて少し沈黙した後、こう返答した。
『そうだな……ブロンズは、アタシ達の心の中にいる!』
『……一体何を言っている?』
『何をって……そこは察してくれよ……ブロンズは、とっくの昔に死んじまったんだよ……』
『……は?』
ブロンズが……死んだ……? いや、さっきまで、そこに居たはずだ。ブロンズが幻覚という可能性も皆無だ。俺に幻術は効かないはずだ。ブロンズは死んでなんかいない。ということは……他の世界線に飛ばされたのか? いや、そんな大がかりな事をすれば、俺なら事前に感知できる。そもそもここに入ってから魔法の感知など一切無かった。なら、どうして……?
『おいおい、どうしたんだよー』
フランはジト目で、俺をヤバい人間のように見ながら、そう言ってきた。そちらからすれば、俺は存在しないあるいは死んだ人間がここにいないと嘆いている狂人のように映っていることだろう。
『アクタ。聞いて』
『静かにしてくれ。考えが纏まらない』
一体誰だ……? 誰が何の目的で……?
残りメンバー アクタ、アリス、アミ、ゴールド、シルバー、フラン、ケン、シュタイン、トッキー。
第109話を見て下さり、ありがとうございました。
次回は、11日(日)~12日(月)に投稿予定です。
宜しくお願いいたします。