第108話『時の女神は、あだ名で呼ばれたい』
お待たせしました。
第108話の執筆が完了しました。
宜しくお願いいたします。
※2024/06/09改稿しました。
――映像の内容を説明するとこうだ。
①神の居城の、最高守護神ゼウスを含めた裁定会議を行う。
②裁定会議で世界創世案が可決されれば、世界を創り直す命令を時の女神に下す。
③神々から集めた膨大な魔力を全ての女神に送る。
④時の女神の力により、世界の時を長時間止める。これにより守護神及び女神以外の全生物の活動は完全停止する。
⑤世界創世魔法を発動させる。すると宇宙の根源に、新たな世界線が創られる。
⑥この世の大地にある全ての物を、一旦消滅させる。
⑦消滅させた物を全て設定し直す。場合によっては設定せずに存在をそのまま消される事もある。
⑧設定し直した物を新たな世界線に送り出す。
⑨時を進める。
『以上。これが世界の創り方』
『……』
『どうしたの』
『……』
『?』
映像を見せる事で世界創世のやり方を理解しやすくなったものの、実行している事はあまりにも壮大過ぎる話だったため、皆、呆気に取られている。実のところ俺やアリスでさえ、軽く困惑している。
『意味が……イミガワカラナイ。ワタシハウチュウ……ツマリ……ハジメテノチュウ……』
ゴールドはよく分からない事を言い残し、バタリと倒れた。どうやら頭がキャパオーバーしたようだ。
『お姉ちゃん!』
『ゴールド姉!』
シルバーとブロンズは、倒れたゴールドに駆け寄った。
『俺も……リカイデキナイ。オレハウチュウ……ツマリ……ダイチュウショウ……サイズノモンダイ……』
ゴールドに続いて、フランも同様に倒れてしまった。人はキャパオーバーを起こすと言葉がバグってしまうようだな。
『兄貴!』
『フラン!』
倒れたフランに駆け寄るケンとシュタイン。まあ、無理もないか。この中でも、特に頭の容量が少ないゴールドとフランだからな……。
『大丈夫?』
時の女神も心配なのかゴールドとフランを見ている。相変わらず真顔だから感情が分からんが。
『ああ、大丈夫だ』
その後、時の女神に襖の奥の別室に布団を2枚用意してもらい、そこにゴールドとフランを寝かせた。ついでに身体も休めるといい。
『むにゃむにゃ……アタシは妖精だぞ……跪け……勇者共……』
『むにゃむにゃ……1たす1は8だろ……数学? バカ野郎……これが芸術だろうが……』
2人揃って訳の分からない寝言を喋っている。一体どんな夢を見たら、そんな意味の分からない文章を口に出せるのだろうか? いや、気にしたら負けのような気がするので、スルーする事にした。
『団長! フランとゴールドさんの看病は、私がしますよ』
『分かった。よろしく頼む』
2人の看病をシュタインに任せた。積極的に役割を担ってくれる姿勢は評価に値するぞ。
『すまない。時の女神』
『いい。それより今後、私の事は時の女神じゃなくてトッキーって呼んで』
『トッキー』
『うん。トッキー』
突然何を言っているのだろうか?
『……一応聞くが、そう呼ばなきゃいけない理由はあるのか?』
『ある』
『ほう』
『それも、とても深刻な理由ある』
『それはどんな理由だ』
『可愛いから』
『……聞いた俺が愚かだった』
何か複雑な事情があるのかもしれないと一瞬思ってしまった。
『呼んでくれないの?』
時の女神は表情は真顔のまま、上目遣いで俺を見た。そんなに呼んで欲しいのか……?
『呼んであげましょうよー団長』
『そうよ。女の子のお願いを無下にしちゃダメよ?』
トッキーって呼べよと言わんばかりの圧を周りから強く感じる……やれやれ、仕方あるまい。
『分かった。これからはトッキーと呼ばせてもらうぞ』
そう言うと、時の女……トッキーはあだ名で呼んでもらえた嬉しさで目を輝かせた。……相変わらず真顔だが。
『ありがとう!』
しかし、声のトーンはさっきよりも少し高い気がする。感情が昂っている証拠だな。
『アクタだけじゃなく、皆もトッキーって呼んで。あと敬語もいらない』
『分かったよ。トッキー様』
『よろしくですぅ……じゃなくて、よ、よろしくね! トッキー様!』
『よろしく。トッキー様』
『ト、トッキー様。よ、よろしくお願いします』
『兄共々、よろしくお願いします。トッキー様』
なぜ全員うしろに様をつける?
『むぅ……様はいらない』
頬が膨らんでトッキーは様つけを不服申し上げた。そんなトッキーを横目に、俺は話を戻した。
『トッキー。世界を創る方法は分かったが、膨大な魔力は、どうやって集める?』
神々の手を借りずに膨大な魔力を集めるのはあまりに難題すぎる。ここにいる全員の魔力を吸い付くしても、全然足りない。
『膨大な魔力は時間をかけて、皆から少しずつ、すいとるように集める』
『なるほど……必要な魔力を集めるまで、どのくらいの時間がかかる?』
そう質問すると、トッキーから予想をはるかに上回る、とんでもない回答が返ってきた。
『およそ298年』
『は……?』
これにはさすがの俺も困惑を極めた。俺やアリスなら、工夫次第で300年くらいは、生きられるかもしれないが、人間をやめたわけではないアミ達は、どんなに工夫しても、あと100年すら生き続けるのは不可能だ。
『正確には298年8ヶ月21日16時間32分42秒』
『いやいやいやいや、ちょっと待って! 298年……? 私達そんなに長生きできないよ!?』
当然の疑問をアミが口に出すと、トッキーは『そんな事は分かってる』と言わんばかりに頷き、手を前に出した。
『寿命凍結』
そう唱えると、突然空中に現れた、鎖で縛られてるひび割れた時計が複数に分裂し、俺達の体に、吸い込まれるようにそれぞれ1つずつ入った。
『わわ、何だ!?』
『何ですかあ~これ~!』
狼狽える面々だったが、特に痛みとかは無く、これといって、何かが変化したような感じも無かったので、すぐに落ち着きを取り戻した。
『何をした?』
『皆の寿命、止めた』
『何……?』
『これで300年経っても、1000年経っても、今の姿のままずっと生きられる。ただし事故や戦闘による死傷受けると普通に死ぬ。そこだけ注意』
『つまり何事も無ければ、実質不老不死ということか』
『うん』
不老不死と言われても、到底信じられないと言う者が大抵だったが、ここに来てから、とても信じ難い出来事が実際に起きている。皆、心の中では、トッキーの言うことは事実なんだと思っているのだろう。
『さて……』
トッキーは突然、腰を上げた。何かするのだろうか? 皆がそう思い、トッキーに注目した、次の瞬間――――。
『ん? どうし――――』
『時間停止』
トッキーは、突然魔法を唱え、俺とトッキー以外の全ての時を止めた。ということは……。
『ああ、あいつの話だな?』
俺がそう言うと、トッキーはコクリと頷いた。この件に関しても先ほどの世界創世の話とはまた別の意味で、受け入れ難い話である。この件を今、皆に話しても、混乱を招くだけだと言うことで、2人だけで話す事にした。
『あいつは、一体何者だ?』
『彼は――――』
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次回は、8日(木)~10日(土)に投稿予定です。
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