第107話『待ってた』
お待たせしました。
第107話の執筆が完了しました。
宜しくお願いいたします。
※2024/06/09改稿しました。
『ここが世界の果て……なのか?』
“次元の扉”の先にあったのは、とても洞窟の中にあるとは思えない光景だった。
『ここって……旅館?』
まさにここは旅館にある和室そのものだ。
奥の窓側の椅子に2人の女がトランプで遊びながら前のめりで座っていた。1人は知らないが、もう1人は時の女神だ。俺と会った時は青いドレスを着ていたが、今はここが旅館だからなのか、それに見合った衣装を纏っている。
『待ってた』
時の女神は感情を出すのが苦手なのか、真顔で、こちらを向いた。
『ん? ああ、ようやく来たか』
もう1人の女もこちらを向いた。あまり俺達に関心が無さそうな感じだ。
2人は持っていたトランプを置くと、トランプは、青い粒子となり消えていった。
『そこに座って』
時の女神がそう言って、指を指すと座椅子が、人数分出現した。
俺達は時の女神の言う通りに座椅子に座った。その後、時の女神ともう1人の女も座り始めた。
『お茶』
時の女神がそう言うと、人数分の緑茶が用意された。
『まずは自己紹介。私は、時の女神。この世界の時を操る者。私の隣にいる可愛い女の子は、風の女神のウィンちゃん。風を操る女神で私の親友』
『か、可愛いとか言うな!』
風の女神は顔が真っ赤になり、動揺すると途端に部屋中に風が吹き荒れた。
『わわ! 急に風が!』
俺とアリス以外は、皆、いきなりの突風に、翻弄された。
『風よ止まれ』
時の女神がそう唱えると、さっきまで吹き荒れていた風が、ピタリと止まった。
『何だ……? 急に、風が止んだ……?』
『今のは、魔法か……?』
『どどどどうなってるんですかあー!?』
魔法が存在する世界であっても、ありえない現象が起きて皆、驚愕している。
風を相殺させる方法はあっても、風そのものを止めるなんて聞いたことがない。
『驚かせた。謝罪する。ウィンちゃんも謝って』
『はいはい。悪かったな人間共』
風の女神は目を合わせず、他人事のように頭を掻いている。明らかに反省をしている者の態度ではない。それどころか俺達を見下しているような不快な態度を取った。
『なんだあいつ……』
フランは風の女神の態度を不快に思い、そう呟いた。すると、その呟きが風の女神の耳に入ったようで、フランを強く睨んだ。
『おい、そこの人間……!』
『なんだよ』
フランが睨み返した刹那……風の女神が、目にも止まらぬ速さで、フランを殺そうとしていたので、俺はその前に、風の女神を止めようとした。すると――――。
『ウィンちゃん止めて』
時の女神がさっきと同じように唱えると、風の女神は、まるで銅像になったかのように、完全に止まった。
――風の女神はいつの間にか消失した。
『……あれ? あいつは?』
フランは自分が風の女神に殺されかけた事に気づいておらず、勝手に消えたものだっと思っている。
『別の場所へ置いてきた』
『は?』
誰もがその言葉を飲み込めず、混乱の渦の中に閉じ込められた。
無理もない。目の前にいたはずの風の女神が突然、跡形もなく消失してしまったのだ。驚くなという方が無理な話だ。
――だが、俺は見えていた。世界の時を止めて、風の女神を担いで、扉の向こうへ消えていったところを。
『大事な話していい?』
時の女神は困惑している皆をよそに、話を進めようとする。キレると面倒な風の女神が戻ってくる前に、話を終わらせようとしているのだろう。
『ああ、頼む』
俺がそう言うと、時の女神は頷き、さっさと話を進めた。
『君達の事は既に知っている。あらゆる情報は私のもとに入ってくる。君達が1番聞きたかった事。この世界の時を戻せるか。戻せる』
『……!』
『ホントか!』
戻せると聞いてゴールド達は、これでダスト達を助けられると思い、皆、歓喜にあふれた。だが……。
『ただ……死んでいった仲間達。マゼンダ。シアン。バレス。そして闇に消えていったダスト。今、挙げた4人は、時を戻したとしても助からない』
『な……なんで!』
『運命だから』
『なんだよそれ……!』
ゴールドは憤るあまり床を殴った。先ほどまで歓喜にあふれた空気が、嘘のように悲しみの空気に支配された。
『最後まで聞いて。ただ、時を戻すだけでは助からないってだけで、助けられる方法がある』
『ホントか!』
絶望に囚われかけたが、助けられると知り、再び歓喜を表した。
『うん。ただ、方法は1つしかない。それには相当な時間を要する』
『どんな方法なんだ?』
そう聞くと時の女神は、とんでもない事を言い出した。
『私たちだけで、世界を創り直す』
『は?』
あまりにも現実味が無い方法に当然、理解できるはずもなく、困惑と混乱の渦に苛まれるのが多数だが、一方、前の世界線での記憶がある俺とアミとアリスは、この意味が理解できる。
『世界を……創り直す? どういう意味だ?』
『そのままの意味』
『いや……全然分からんのだが……』
ただでさえ口数が少ない時の女神が、このまま長々と説明し続けても、ゴールド達には到底理解できる話ではないと思った俺は、ある提案をした。
『説明が困難ならば、映像を見せてみては、どうだ?』
『その手があった。アクタ。やって』
『ああ』
俺は選択した記憶を映像として、対象の脳に直接介入させるという極めて稀少な魔法……記憶映像魔法を発動した。すると、全員の脳内に思い浮かんだかのように、映像が流された。
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次回は、6日(火)~8日(木)に投稿予定です。
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