第106話『旅の途中』
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第106話の執筆が完了しました。
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※2024/06/09改稿しました。
――――出発してから7日目。あれから各地を回り、情報を収集した。と言っても、噂程度の情報ばかりで、有力な情報は集まらなかった。
『シュタイン。どうだ?』
『ゴールドさん! うーん、色んな人に聞いてきたんですけど、時の女神様は魔王城にいるのではないかとか噂されてました。うちにいる女神様って、うるさくて、セクハラばかりする変態の女神様ですよね?』
『シュタインって、意外と、毒舌だよな……』
――――出発してから30日目。ただの盗賊団が、突然襲ってきたので、容赦なく返り討ちにした。ほとんどゴールド姉妹やフラン達が殲滅したので、俺とアミの出番はなかった。ちなみに盗賊団といえば、例のアテナ率いる盗賊団の姿は一切出くわさないどころか、噂話すら聞かなかった。あの時、アテナは俺達を泳がせると言っていた。少なくとも今は俺達の邪魔をするつもりはないようだが、とはいえ油断はせず常に警戒して行動しなければ。
――――出発してから93日目。あれから色々な国や街等を回ってみたが、どこも廃墟になっており、ただの1人の住人の姿も見かけなかった。人々はどこへ消えてしまったのか……。
――――出発してから205日目。大量のモンスターが突然変異を起こし別のモンスターに進化を果たしていた。以前よりはるかに強くなっているがゴールドやフラン達が協力してやっと1匹倒せるレベルだった。俺とアミが加わればどうということもなかったが、そんなやつが30匹も襲ってきた時は、さすがに戦慄を覚えた。
『ハァ……ハァ……くそっ……何なんだよ、このモンスター……めちゃくちゃだぜ……』
『なんだよフラン……ハァ……ハァ……もうへばったのか?』
疲弊しきっているフランに、発破をかけるゴールドだが、ゴールド自身もかなり疲弊している。
『ゴールドも辛そうじゃねえか……強がんなよ……俺に任せて、お前は寝てろよ』
『ああ? お前が……ハァ……ハァ……寝てろよ!』
『ハァ……ハァ……うるせぇ……!』
これだけ疲弊しても尚強がる2人を見兼ねて、俺は2人の首を、手刀で軽くトンと気絶させた。
『やれやれ』
2人が目覚めたのは、それから3日後の事だった。
――――出発してから365日。廃墟となった桜の国にて、冒険者のミユウとダイゴに出会う。
『あなたは……確か、あの時会いましたね』
『ああ』
火の国でプロメテウスと戦闘を繰り広げていた最中に現れた冒険者の2人組だ。その後は特に接点は無かったが、まさかこんな所で会うとはな。
『知り合いですか?』
『いや、知り合いという程でもない。偶然火の国で会っただけだ。行くぞ。ここも何の手がかりも無いようだ』
次の国へ行こうとすると、ミユウがまだ何か用があるのか俺達を引き止めた。
『ちょっと待って。ずっとあなたを探してたんです』
『俺をか?』
『ええ……どうやら、あなたはこの世界で唯一奴らと、渡り合える力を持ってる存在ですからね。私達も奴らを追っているの』
『ほう』
『あなたも奴らを倒そうとしてるんでしょ? なら、私達と協力しない?』
ミユウは緊張してるのか少し身体が震えていた。
『目的は何だ?』
『……私が小さかった頃……パパ……いや父と母は、奴らに殺されたの。知っちゃいけない事を知っちゃったらしくて、でも、だからって殺すなんて……』
悲惨な記憶を呼び起こしたミユウは大粒の涙を流した。奴らに対する憎しみもあるだろうが、あの時、父と母を助けられなかった自分が許せない。そう思っているのだろう。
『分かった。ついてこい』
『え? いいの?』
『ああ』
『わ、私から申し出といて、あれなんだけど、私達の事、信頼してくれるの?』
ミユウは簡単に信じてもらえるとは思わなかったのか、少し驚いたかのような表情を見せる。ゴールド達もミユウとダイゴを仲間に加える事に、異議を唱えなかった。
『まあ、そんな顔見せられちゃったらね……』
アミはそう言って、ハンカチをミユウに渡した。
『ありがとう……ありがとう……』
ミユウは、膝をつき泣き崩れた。そんなミユウに、ダイゴは『良かったな』と優しく笑いかけた。
ミユウとダイゴが仲間になった。
――――出発してから370日目。ミユウとダイゴは思いの外、戦闘能力が高かった。おかげで突然変異したモンスターの大群が来ても、比較的楽に殲滅できた。これで俺達の負担も減る上にゴールド達も安心感が増した。彼らを仲間に加えたのは正解だったようだ。
――――出発してから406日目。一旦足を止めて、今後の為にも俺は10日間だけ皆をより強くする為に、修行をさせる事にした。
『フラン! かかってこい!』
『行くぜ! ゴールド!』
今回の修行は模擬試合だ。戦い方を見るだけではなく、お互いの実力をはっきりと示し合わせて競わせる事で向上心を高めようという目的だ。この旅のメンバーは全員強さを求めている。特にゴールドとフランは対抗意識が強すぎるのか、既にお互いをライバル意識している。
『そこまでだ。勝者……フラン!』
『よっしゃあ!』
『畜生!』
ガッツポーズをして喜ぶフランだが、その直後、尻餅をつきしばらく立てなくなるくらいに、ダメージを負っていた。今回はどちらが勝ってもおかしくない程に、互角の戦いを繰り広げていた。
他の皆も模擬試合を繰り返し、向上心を高めるだけではなく、勝つためにどこが足りてなかったのかを話し合っていた。これは思ったよりも、良い結果が出せるかもしれない。
――――出発してから416日目。修行は終了した。その結果、全員の身体能力、魔法レベルや魔力レベルが上がり、より強くなった。このレベルであれば、モンスターも殲滅しやすくなる。
――――出発してから501日目。ある国の街の文庫の本を見ていたら、ようやく有力な情報が手に入った。どうやら世界の果てに行くには、“次元の扉”という所から入る必要があるらしい。その“次元の扉”の場所は、とある海付近の洞窟の中のどこかにあるようだ。
――――出発してから554日目。いくつもある海付近の洞窟をしらみ潰しに調べ、ようやく“次元の扉”と思われるドアを見つけた。
『これが次元の扉ってやつ?』
大層な名前をつけているが、どこにでもあるただの青いドアだ。ただ置かれている所が背景と見合っていないだけだ。
『何でこんな所にドア……不自然すぎるだろ』
俺は躊躇いなく“次元の扉”の前に立ち、今まさに、扉を開けようとドアノブを掴んだが、その前に、
『準備はいいな?』
俺は後ろを振り向かずに、背中から皆に問いかける。
『もちろんだ!』
『準備OKです!』
『いよいよだな!』
言うまでもないが、ここには誰一人として躊躇う者はいない。皆、変化を求めてここまで旅を続けてきたのだ。当然だ。
『行くぞ』
――俺は“次元の扉”を開く。
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次回は、4日(日)か5日(月)に投稿予定です。
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