第2話『食堂のアイドル』
2話できました。
よろしくお願いします。
※2021年4月11日、改稿しました。ストーリーやキャラ設定等は変えていません。
※少し改稿しました。
※2022年1月3日、改稿しました。ストーリーやキャラ設定等は変えていません。
※2025/07/21少し改稿しました。
『こちらがダスト様のお部屋となります』
赤髪ちゃんに俺の寝床となる部屋へ案内された。魔王城だから、てっきり豪華な部屋をイメージしてたのだが、実際にはベッドと机とタンスとクローゼットがあるだけの、日本の家庭でもよくありそうな、ごくごく普通の部屋だった。
まあだからといって特に不満はない。むしろこちらの方が落ち着く。
この魔王城にはこの部屋と同じような部屋が五十個程あり、その他には食堂、浴場、娯楽施設、修練場と、さすがに広い建物だけあって、色々とある。
でも、やっぱり魔王城らしくないな。さっき魔王と話していた部屋の方がよほど魔王城っぽかった。
あの部屋には炬火もあったし、金持ちの家にありそうなレッドカーペットも敷いてあったし、ラスボスが座ってそうなかっこいい玉座もあった。
でも他の部屋の明かりは炬火ではなく、俺にとってはお馴染みだが異世界に相応しくない電球を採用している。敷いてあるカーペットもその辺のホームセンターとかで買えそうなものだし、まあ玉座は一つの城に通常一つか二つくらいしかないからしかたないけど、与えられたこの部屋で座れるものはごく普通のイスだし。
ちなみに俺にとっての魔王城のイメージって全体的に薄暗い上に、地下牢があって、そこにモンスターが大量に飼われてるような危ない感じだったのだが、この魔王城に関してはロビーの中央の上に巨大なシャンデリアがあって、薄暗いどころかめちゃくちゃ明るいし、地下牢という物騒なのは無いらしいし、そもそもモンスターも飼ってないそうだ。
あれ? これもう普通にホテルじゃね?
『あの、ところで気になったんですが、俺ら以外に他に人居ないんですか?』
『いえ、あとは食堂に勤めてるコックが三人が居ますよ』
既に色々な所を案内されたが、食堂はまだ見ていない。
『では、ちょうどいいので食堂にご案内致しましょう』
俺は無言で赤髪ちゃんの後ろ姿を堪能しつつ、粛々とついていった。
それにしてもこの魔王城……やはりどこかで見たような気がするな……既視感が止まらない。
それにもう一つ気になる事がある。さっきから謎の視線を感じるということだ。
一体誰だ? 俺を見てるのは……?
――――――――――――――――――――――――
『ダスト様、こちらが食堂でございます』
あれこれと考えている内に、食堂に着いたようだ。
赤髪ちゃんが食堂の扉を開くと、そこにはごく普通の長方形の茶色い机が横に一列に五つ、一つの机にそれぞれ十個のイスが左右にバランス良く並べられていた。
イスの数めちゃくちゃ多いなって思ったが、部屋が五十個あるし、むしろその数に相応しい数と広さだ。
まあ、でもこの魔王城って俺含めても七人しかいないから、こんなにイスいらないよな。
内装をマジマジと覗いていると、金髪の美少女が、ひょっこりと厨房から顔を出した。あまりにも美少女すぎて人形が服を着て歩いているのかと思った。
『お? 赤髪ちゃん! どしたー? もうアタシらの料理を食べに来たのか?』
『ゴールドさん。いえ、この方、ダスト様を食堂にご案内していたところです』
さっき赤髪ちゃんが言ってた食堂に勤めてるコックの三人の内の一人が、この金髪ツインテールの美少女みたいだな。
『初めましてだな! アタシはこの魔王城のアイドルコック! ゴールドちゃんだよ! ゴールドちゃんって呼んで!』
『ゴールドちゃん』
『ああ! ゴールドちゃんだぜ! イエイ!』
ゴールドちゃんは、とびっきりの笑顔で左手を伸ばしてピースをした。
テンションたっかいな……あのふざけた爺さんと似たものを感じるのだが、ゴールドちゃんは、超絶可愛いから余裕で許せる。ただし、あのうざい爺さんは許さん。異議は認めない、断固として認めるわけにはいかない。
『あのー』
今度は、さっきから机の下にずっと隠れていた二人の美少女が、ひょこっと姿を見せた。
『お、シルバーにブロンズ! ちょうどいい、自己紹介しちゃいなYO』
ゴールドちゃんがそう言うと、銀髪のショートヘアーの美少女が手を胸に置き、自己紹介をし始めた。
『初めまして、私の名前はシルバーです。お姉ちゃんと同じくコックです。よろしくお願いします』
『イエーイ! シルバーちゃん! 超可愛いよ!』
ゴールドちゃんがまるでアイドルのファンの如く、ハイテンションでそう叫んだ。
『もう、お姉ちゃん! 恥ずかしいよぉ……』
シルバーちゃんは可愛いと言われ、恥ずかしさのあまり両手で顔を隠した。
あ、これは可愛い。控えめに言って愛してる。
『次は、ブロンズちゃんの番だYO』
次は銅髪のストレートパーマの美少女が、丁寧にお辞儀をすると、自己紹介をし始めた。
末っ子みたいだが、なんかやけに大人びているし、色っぽいな。
『初めましてぇ、私はブロンズでぇす。ゴールド姉とシルバー姉と一緒で、コックやってまぁす、よろしくね、お兄ちゃん』
お兄ちゃん……だと……!? なんて妹力なんだ……! ?ヤバい、妹属性に目覚めそう……。
『イエーイ! ブロンズちゃん! 超可愛いよ!』
『ありがと、ゴールド姉』
ブロンズちゃんはアイドルのように、ウインクをして、この場にいる全員を魅了する。
ヤバい、ガチで可愛い。ゴールドちゃんも、シルバーちゃんも、ブロンズちゃんも。もしペンライト持ってたら俺も泣きながら叫びそうだ。間違いない。
『えっと、俺の名前はダストです。よろしくお願いします』
陰キャの俺は地味で特に面白みもない自己紹介をした。
『おいおいダストっち!』
ダストっち……?
『アタシ達に丁寧言葉なんて使わなくて良いってー! アタシなんて、まーちゃんにすら、丁寧言葉使ってないんだぜー?』
丁寧言葉とはこちらでいう敬語の事を指している。細かい箇所は違うかもしれないが、おおよそ同じ意味だろう。
まあ確かにゴールドちゃん達は俺よりも歳下のようだし、その方が自然といえば自然か。
というか向こうも普通にタメだし、そういうことなら、俺もこの娘達に対してはタメ語でいいかな?
そう思っていると、赤髪ちゃんが呆れたようにゴールドちゃんに注意した。
『ゴールドさん、ダスト様はお客様なんですから、もっと礼儀正しくするべきですよ?』
『堅いなー赤髪ちゃんは、だって礼儀正しくって、まるであいつらみたいじゃん?』
あいつら?
そう言ったゴールドちゃんの表情は少し曇っていたような気がした。
『あの、あいつらって誰の事ですか?』
『正義教団の事ですね。正義の行いしか許さず、もし彼等の前で、少しでも悪の行動をすれば、最悪死刑になります』
うわっ、なにそれ……怖っ。
そんなヤバい正義厨の集団とは関わりたくねえな。
『あいつらだけは許せねえよ……だってあいつらはアタシ達の……』
ゴールドちゃんは辛い過去が頭に浮かんでしまい、身体を震わせながら、悔しそうに拳を握っていた。
どうやら正義教団という連中を相当恨んでるらしい。
シルバーちゃんやブロンズちゃんも、悲しそうに目を下に向けていた。
『あ、ごめんね、ダストっち! 大丈夫だよ! 今はこの魔王城で幸せにやってるからさ』
ゴールドちゃんは、俺に気を遣わせまいと、すぐに笑顔とテンションを取り戻した。
『ゴールドちゃん……ホントに色々あったんだな』
俺はゴールドちゃんに敬語を使うのをやめて、タメで話すことにした。礼儀正しくないのかもしれないけど、今のゴールドちゃんにはこの方がいいと思う。もしかしたら敬語で話すと、嫌なことを思い出させるかもしれないしな。
『へへっ、ありがとなダストっち』
ゴールドちゃんは、俺がタメで話しかけたのが、そんなに嬉しいのか、笑顔でお礼を言った。
『あ、お姉ちゃん、そろそろ夕ご飯作ろう?』
そろそろ夕飯の時間に近づいている事に気付いたシルバーちゃんがゴールドちゃんにそう呼びかけた。
『お、そうだな、じゃあ赤髪ちゃん、ダストっち、あとでな!』
『おう、夕ご飯楽しみにしてる』
俺は食堂をあとにし、赤髪ちゃんにまだ案内されていない所を案内してもらった。
2話を読んで下さり、ありがとうございました。
3話ですが、平日の間は、投稿するペースが遅くなってしまうと思われます。
申し訳ございません。
早く投稿できるようにしていきたいと思っております。
よろしくお願いします。