第96話『そして風が吹き荒れる』
※2023/12/19改稿しました。
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第96話の執筆が完了しました。
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地の女神アース。この世界の地を司る女神。俺と初めて会った時に感じたあの胡散臭さは前々から気になってた。そして今しがた、ブロンズが血相を変えて俺に助けを求めた時は、もしやと思い魔王城の中に飛び込んだが……これは……。
入ってすぐに目に映ったのは、なぜかフリフリの衣装を着用したゴールドがアースに追われているという奇妙な光景だった。
俺は状況が理解できず呆気に取られてしまった。
『あ、師匠~! 助けて~!』
ゴールドは俺を見るなり、助けを求め、泣きついてきた。
『ゴールド、一体何があった?』
『ぐすっ……実は……昨日から師匠が帰ってこないから、皆、心配になって……そこでアースちゃんが、「あの男の事だ、心配してても仕方がないから、少しでも皆の気分を上げる為にコスプレ大会しようよ」って言って……それで、私達も一緒にコスプレ大会することになって……それから――』
まとめると、俺の身を案じたゴールド達を見兼ねたアースがゴールド達を元気付ける為、コスプレ大会を開く事になった。最初はゴールド達も乗り気で色々なコスプレをした。ただでさえ可憐なゴールド達がコスプレした事で、萌え? 尊い? というよく分からない概念がアースの理性を破壊すると、更に際どい服を着せようとしたが、ゴールド達はそんな布面積が小さい服はさすがに、恥ずかしくて着れないと断った。だが、アースは諦めなかった。どうしてもこの布面積の小さい服をゴールド達に着せて、恥じらった姿を見たいという尋常じゃない程の邪な思いが、更なる暴走を招き、無理矢理にでも着せてやろうと、今の今まで追いかけ回したというわけだ。
『全く……何をやっているんだ! この馬鹿女神!』
『馬鹿じゃないですうー! 超ウルトラ美少女の女神アースちゃんですうー!』
アースは、まるでふてくされた子供のような態度で、そっぽを向いた。これはきついお説教が必要なようだな……。
『この……大馬鹿者が!!!』
俺の怒号が魔王城全体に響き渡った。すると、アースは、一瞬ビクッと身体を震わせた。その後、涙目になり、頬を膨らませながら俺を睨みつけた。
『馬鹿じゃないもん……!』
『ないもんじゃない! 全く……こんな朝になるまで、ゴールド達に、コスプレを無理強いさせるとは何事だ!!』
『う……うぅ……ぐすっ……そんなに怒らなくたっていいじゃないっすか……私だって、ゴールドちゃんやブロンズちゃんには悪いことしちゃったなーって、反省してるっすよぉ……』
ゴールド達にコスプレを強いた事自体は反省しているようだが、怒号を放っている俺に対しては、まだふてくされた態度をとっている。
『はぁ……それなら、謝れ』
『お前みたいな、超劇的堅物スカシクソ効率厨野郎になんか謝らないよーだ!』
『俺じゃなくてゴールド達にだ! あと、誰が超劇的堅物スカシクソ効率厨野郎だ。その事も含めて、後で抗議させてもらう!』
そこまで言われるのは、さすがに心外だ。
『うるさい、バーカ! この毎日栄養食野郎!』
アースは俺を罵倒し、あっかんべーと舌を出した後、泣きっ面から一変、真剣な表情に変えて、ゴールドの前に来て、頭を下げた。
『ごめんね、ゴールドちゃん』
『おう、もう、こういうのは勘弁だぜ?』
ゴールドは指で頬を掻きつつ、許す姿勢を見せている。何だかんだ言っても、仲が良いのだな。
『うん、もうしないよ』
互いに仲直りの握手をする。しかし、次の瞬間、アースは握手した方の手を引き寄せるように引っ張り、ゴールドを抱きしめた。
『ああ~~~ゴールドちゃん、めっちゃ良い匂いだ~~~』
アースは、更にゴールドの匂いを嗅ぎ始め、身体のあちこちを触り始めた。
『ちょ!? やめ……どこ触って……!』
すると、ゴールドの顔全体が真っ赤に染まり、悲鳴を上げ、アースを押し退けた。
『ア、アースちゃんの……変態酔っぱらいジジイ女神~~~!』
ゴールドは泣きながら、自分の部屋まで逃げていってしまった。
『あらまあ、逃げられちった……まあ、いっか! ゴールドちゃんの照れ顔も見れたし、それに、ゴールドちゃんのあんな所やこんな所も触れたし……グヘヘヘヘ』
アースは、とても人に見せられないような下衆な顔をしながら、とても人に言えないような手つきをして、そう言った。
『貴様……全然反省してないようだな……?』
また、この馬鹿女神にお説教してやろうかと思い、まずアースに正座させようとしたが、そうなる前にアースは素早く後ろに下がり、俺を睨みつけた。
『いや、さすがにゴールドちゃんにはまた悪いことしてしまったなーと思ってるっすよ……でも、お前、うるせえっすよ! 何でお前にそんな事言われなきゃならないんだ! この保護者野郎! バーカ! バーカ! やーい! 根っから効率厨! 堅物野郎! ぼっち! あと、えーっと……無駄にイケボ! 無駄にイケメン! あと、えっと……このバーカ! アホ!』
俺を罵倒した (一部なぜか褒め言葉だったが)アースは、俺から逃げるように魔王城の奥へ奥へと消えていった。
『やれやれ、仕方ないな……』
もうこれ以上追いかけるのはやめた。俺がここでまた介入しても、事態を悪化させるだけだろうしな。
ブロンズに昨日の夜に起きた件や、シュタインの事について説明をしてから、すぐにシュタインをフランとケンの元へ連れていこう。
俺は踵を返し、外へ出る。
『アクタお兄ちゃん』
『あ、団長!』
ブロンズとシュタインは、既に仲睦まじく、手を繋いでいた。
『ねえ、中、どうだった?』
俺は、先ほど魔王城で起きた出来事を話す。
『そう……』
『そういえば、シルバーとみどりはどこに居るんだ? 出かけてるのか?』
魔王城に入った時に、2人の気を感じなかったから、気になっていた。
『シルバー姉と、みどりちゃんならベンリ街まで買い物に行ってるわ』
『そうか』
『2人に何か用事?』
『いや、魔王城に居なかったから、少し気になってな』
『ふーん、そうなんd――』
――会話が途切れ、その刹那、風が吹いた。
その風は強く吹き荒れたが、操作しているかのようにピタリと止んだ。さっきまで風で揺れていた木々の音も不自然にシャットアウトした。
それだけではなく、ブロンズとシュタインも、まるで銅像のように固まってしまった。こちらから話しかけても返事はない。
『これは……!』
そう、今世界の時は止まってしまった。動いているのは俺と、目の前にいる青いドレスの女だけだ。
『まさか、こんな所で会うとはな。突然何の用だ。時の女神』
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次回は、9月10日(木)~9月12日(土)に投稿予定です。
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