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第95話『早朝の景色』

※2023/12/14改稿しました。


お待たせしました。

第95話の執筆が完了しました。

宜しくお願いいたします。

『団長! おはようございます!』


 今の時刻は朝の6時。可憐な少女のとても活気のある声が、テント内に響き渡る。


『おはよう』


 7時間前、俺達は闇森(カースフォレスト)を抜けた後、ショックな出来事があったせいか、シュタインが酷く疲弊していたので、俺はそこからだいぶ離れた場所に移動し、そこにテントを張って朝まで休憩することにした。


 周りにモンスターもいなかったのでテントを張るにはちょうど良い場所だった。その後、シュタインがテントに入り、ベッドに倒れ込んでから眠るまで、1分もかからなかった。


『ぐっすり眠れたようだな』


『はい!』


 なるほど、この快活ぶりを見る限り、シュタインは、朝は強いタイプなのだな。


『朝飯にしよう。栄養食がある』


『栄養食?』


 俺は机の上に栄養食と栄養ドリンクを2つずつ並べた。すると、シュタインは唖然とした表情をしていた。


『あの……団長って、もしかして、普段栄養食しか食べてないのですか?』


『ああ、そうだが?』


『えっと……他に何か食べたい物とか無いんですか?』


『ない。食事だろうと、俺は効率良くしたいからな』


 俺がそう答えると、シュタインは呆れた表情で、大きくため息をついた。俺は何かおかしな事を言ったのだろうか?


『あ、そうか。シュタインは他の物を食べたいんだな?』


『あ、今は別にこれでも良いですよ。今はですけどね』


『そうか』


『まあ、それよりも……朝ごはん頂きますね!』


 シュタインは、椅子に座り『いただきます!』と手を合わせ、勢いよく栄養ドリンクを飲みながら、栄養食を食べ始めた。


 こんなに朝飯を元気よく食べる奴初めて見た。情けない事に前の世界線のギルドの団員の8割は朝がとても弱く、朝飯もまともに食えてない奴が多かったからな。全く、シュタインを見習ってほしいものだ。特にアレン。


『ごちそうさまでした!』


 思い出に浸っている間に、シュタインはもう完食したようだ。食べるのもずいぶん早いな。


『これ、すごく美味しいですね!』


 シュタインは目を星のようにキラキラと輝かせていた。よほど美味だったようだな。


『それは良かった』


『はい! ところで団長は、もう朝食べたのですか?』


『ああ。シュタインが起きる前にな』


『そうですか! 団長はすごく早起きなのですね!』


 前のギルドの団員に示しをつける為に、早起きを徹底していた名残なのか1人になっても身体が勝手に早起きするようになってしまっただけだがな。


『ああ、早起きは得意だからな』


『流石です! 団長!』


 シュタインのキラキラした憧れの眼差しが、俺の目に刺さる。俺はそんな目で見られるような男では無いんだがな。


『さて、そろそろ出発するぞ』


『はい! 次はどこに行くのですか?』


『魔王城だ。俺の仲間がいる』


 ここからなら火の国より魔王城の方が圧倒的に近い。本当は一刻も早く、フランとケンに会わせてやりたいが、まずゴールド達に状況を説明しなければな。


『了解です!』


 シュタインは一切の不満もなく快く返事をしてくれた。


『準備ができ次第出発するぞ』


『はい!』


 そう言うと、シュタインは目にも止まらぬ早さで準備を完了させた。素晴らしい。前のギルドの団員達でも、ここまで早く準備できたものはいない。なかなか身体能力が高いのではないか?


『準備完了です!』


『早いな。良い心がけだぞ』


 褒めるところはちゃんと褒める。そうすれば団員達のモチベーションは上がり、より効率的に任務に臨む事ができる。


『ありがとうございます!』


 褒められたからか、先程より少しテンションが高い気がする。


 あぁ、そうだ。思い出してきた。この感じ、懐かしいな。前のギルドの時も、こんな風に団員を褒めては歓喜を表して、皆で仲良く毎日を明かしていたな。


『団長?』


『あ、ああ、すまない』


 俺は、またしてもシュタインの前で呆けてしまった。


『また考え事ですか?』


『いや、なんでもない。ただ懐かしい記憶が不意に蘇ってしまってな。感傷に浸っていたんだ』


『そう、ですか……』


 どこか悲しそうに俺を見つめるシュタイン。


『ああ、本当にそれだけだ。行こう』


『はい!』


 テントをしまい、シュタインを背負いながら大空を駆ける。


 何度か見たことはあったが、早朝の空の景色はとても美しい。まだ少し深夜の名残がある空を朝日が照らし始めた。すると、さっきまで薄暗かった雲は橙色に染まる。その景色、まるで闇を払う光のように――。


『見えてきた。あれが魔王城だ』


 ちっぽけに見える魔王城に指を指した。シュタインは強風にあおられ、髪が激しく乱れながらも、目を凝らし、なんとか魔王城を目に映した。


『あれが……魔王城……』


『降りるぞ』


 以前の俺は魔王城へ入る資格を失っていたが、今はゴールド達と1回魔王城に入った事で資格を得ている。そしてその資格を得た俺が一緒ならシュタインも、魔王城へ入る事ができる。


『着いた』


 俺は魔王城の前まで、無事に着地した。すると外に留まっていたドラゴンの姿をしたマーブルが、こちらに寄ってきた。


『ひっ……ド……ドラゴン……!』


 シュタインは、ドラゴンに怯え俺の後ろに隠れた。


『大丈夫だ。このドラゴンは元々は人間で、今も昔も俺達の仲間だ』


『そ、そうなんですか……?』


 シュタインは警戒しながら、おそるおそる顔を出す。マーブルはシュタインが自分に怯えていると察し、少しでも安心させるために、少し後ろに下がった。


『マーブル、こいつはシュタイン。俺の()()()()()()()()()()()()


 俺がそう言うと、マーブルはドラゴンの顔でも分かるくらいの驚愕ぶりを見せた。おそらく新しくギルドを作る事に驚いているのだろう。まさか、今の俺がギルドを作るとは思ってなかったのだろうな。


『分かりやすいくらい、すっごく驚いてますね』


『ああ』


 そんなマーブルを微笑ましく見ていると、突然魔王城の玄関から、ブロンズが走りながら現れた。


『アクタお兄ちゃん!』


 ブロンズは顔が赤く、汗だくだった。戦闘訓練でもしていたのだろうか?


『ブロンズ? どうした?』


『大変なの! 皆が……アースちゃんが!』

第95話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、9月7日(月)~9月9日(水)に投稿予定です。

宜しくお願いいたします。

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