第94話『宣戦布告』
※2023/12/14改稿しました。
お待たせしました。
第94話の執筆が完了しました。
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『シュタイン、これから宜しく頼む』
こうして俺とシュタインは、共に同じギルドの仲間として生きていく事を誓った。
そんな俺達に、アテナは蔑むような目をしながらこう言った。
『裁定の時が来ているというのに、今更ギルドですかぁ?』
アテナは徐々に顔を近づけてくる。
『滑稽。実に滑稽ですねぇ』
醜悪な顔つきで俺達を罵倒する。この女には人への敬意などまるでないのだろうな。でなければこんな顔を作ることはできない。
『なんとでも言え。お前達があと何回、何十回、何百回、世界を壊しても、俺が覚えている限り俺のギルドは滅びない』
アテナは、思い通りの回答ではなかったのか、気に食わなそうな表情で舌打ちをしたが、すぐに、また蔑むような顔をしてこう言った。
『この世界のスカーレットさんを見ても、同じ事が言えますか?』
スカーレット……この世界では盗賊団の幹部だったな。どういう経緯でそうなったかは、分からないが、それでも……。
『ああ、言える』
『はあ?』
『どういう立場だろうと、スカーレットは俺達の仲間だ。俺が……いや、俺達が必ず取り戻す! そして、いつか、俺のかつての仲間達と新たに出会った仲間達を連れて、必ず神の居城を倒しに行く!』
『クク……ハハハ……はぁ……あなたという人は……本当に……寝言は寝て言え!!!』
アテナは至近距離まで顔を近づけて、強く言葉を放った。その直後、いつものテンションを取り戻した。
『はぁ……まあ、いいでしょう。ここは引きましょう』
『なんだと?』
ここで引くとは意外だな。シュタインを連れ戻しに来たのではないのか? それとも、もう用済みなのか? だとしたら、なぜ、今こうして俺の邪魔をしている?
『あなたが何を考えているのかは、おおよそ見当がつきます。なぜ、シュタインを取り返さないのかと、考えているのでしょう?』
そう言うと、アテナはなぜか俺に向けて指を鳴らした。
『シュタインには位置を特定できる改造システムを施したんですよぉ! つまり、どこへ逃げようと、どこにいるか一目瞭然なのですよぉ!』
『なんだと……!?』
『そういう訳ですので、今はあなた達を泳がせときます。それに、あなたはこれまでそうやって仲間を集めては我々に反逆し続けましたが、もう何百回も失敗してますからねぇ! ハハハハハハハハハハハハハハハ!』
アテナは、醜悪で高らかな笑みを浮かべながら、森の奥へと消えていった。
『……』
確かにアテナの言う通りだ。結局俺は何も成し遂げていない……。
『アクタさん?』
『あ、ああ、どうした?』
『大丈夫……ですか?』
シュタインは俺の袖を掴み、不安そうな顔で俺を見る。
『大丈夫だ』
そうだ、今はシュタインを位置を特定されない場所まで避難しなくては……だが、そんな場所あるのか?
『……』
記憶と知恵を振り絞って考えてみたが何も思い付かなかった。自力で片っ端から探すしかないようだ。そうなると今後は奴らからの追っ手を撃退、あるいは回避しながら、シュタインと生活していくことになる。幸い奴らから盗んだ金はまだまだある。少なくとも金銭面で困る事はない。
『……』
だが1つ気がかりな事がある。それはアミやゴールド達の事だ。せめて別れの挨拶だけでもと思ったが、俺はシュタインと片時も離れる事ができない。そうなると必然的にシュタインと一緒に行かなきゃいけなくなる。だが、そのシュタインは常に位置特定され続けている状態だ。こんな状態であいつらに会いに行けば、基地や魔王城が奴らに特定されてしまう。そんな事になったら、あいつらもただじゃ済まない。だからといってこの危ない旅に、アミやゴールド達は連れていけない。今のあいつらの実力では、神の居城の連中に勝てるとは思えないからな。
そして、懸念がさらにもう1つ。シュタインを取り戻した事をフランとケンに報告しなければならないが、こいつらの現在地も、火の国の秘密の地下室だ。ここにも仲間がいる以上、危険に晒すわけにはいかない。
何か良い方法を考えなくては……。
『アクタさん!』
シュタインは、再び俺の服の裾を掴む。
『あ、ああ、どうした?』
『本当に大丈夫ですか? さっきからずっと怖い顔してますが』
『ああ、少し考え事をしててな』
『そうですか……考え事って、これからの事ですか?』
『ああ、まずシュタインを取り戻した事をフランとケンに報告したくてな。だが、あいつらは多分通信魔法は使えない。だから、直接会いに行くしかないが、そのせいで奴らを位置を特定されてしまえば、彼らを危険に晒してしまうと思ってな……』
『あの、それなら大丈夫ですよ。その位置特定の改造システムは、たった今、解除しましたので』
『何……? どうやって解除した?』
『えっと……解除して! って念じれば、普通に解除できましたよ』
『なんだと……?』
1度発動した改造システムを解除するには、発動した術者が同じ改造システムを、もう1回発動すれば、解除できる。それ以外に方法はないはずだ。
……試しに俺も、やってみるか。
俺は適当な改造システムを発動し、解除しろ! と念じてみた。しかし、システムは変わらず作動し続けている。念じただけで解除できるのは、シュタインだけかもしれないな。
『どうやら俺は念じるだけでは解除する事ができないようだ』
『え? そうなんですか』
いや、おそらく、シュタイン以外はできないと思った方が正しいのだろう。しかし……なぜ、シュタインに、そのような能力が……?
『あの、アクタさん?』
『あ、ああ、どうした?』
『アクタさんって……よく1人で考え込む人ですか?』
『……言われてみれば、そうかもな』
『1人で考え込むのはあまり良くないですよ! そういう時は仲間と一緒に考えましょうよ! じゃないと、効率悪いですよ』
俺はシュタインに、効率の悪さを指摘されてしまった。誰よりも効率を求めていた俺がそれを言われてしまうとは、なんという皮肉だろうか。
でも本当にその通りだな。今の俺には仲間がいるというのに。俺としたことが、周りが全然見えてなかったようだ。
『シュタイン。目が覚めた、ありがとう』
『いえいえ、団長も、なんだか表情が、柔らかくなったようで何よりです!』
早速俺を団長と呼ぶシュタイン。俺はそんな小さな団員の頭を撫でた。すると、シュタインは嬉しそうな表情で愛玩動物のように更なるご褒美を求めている。要するにもっと撫でてほしいということだろう。
――俺には仲間がいる。神の居城の歪みきった神々よ。今度こそ、お前達を止めてみせる……!
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