僕の不登校の理由
カントリーマアムの梅って知ってますか?変わった味でした。本編には関係ありません。茶番すみません。
これは僕が不登校になった原因のお話。
*:.+:..:゜*+:゜+.:゜:+
「ねぇ」
彼女は夕陽にあたった整った顔立ちを僕の方に向けた。
「どうしたんだい?」
僕と彼女の会話はゆっくりだ。夕陽の差し込む教室。誰もいない放課後。まるで、時間が止まったよう。
「いつもより紅いわ」
彼女は視線を僕から夕陽に変えて、ぽつりと言った。地平線に沈む真っ赤、いや真っ紅だろうか、真っ紅な大きな夕陽はとても綺麗でかつ不気味だった。
「ねぇ」
綺麗すぎて不気味なほどの美貌をもつ彼女は僕の方を向いた。
「どうしたんだい?」
彼女は視線を変えないで僕を見つめていた。
「片想いと知って諦める恋と想い続ける恋とどっちがつらいのかしら?」
彼女にしては長文を口にしたものだ。僕の脳が理解を拒んでいるよう。
「どっちだろうね」
僕は短く答えた。彼女は、その答えが不満だったのか再び夕陽に視線を変えた。
「君は恋をしているのかい?」
そう尋ねてみた。彼女は少し体をびくつかせていた。
「えぇ」
彼女は平然を装いつつ短く答えた。僕は彼女のその答えが意外だった。
「君が恋ねぇ」
彼女は目を見開いて僕を見た。それは数秒間のことで世界が歪んだようにも感じた。
「意外かしら?」
先ほどとは全然違った表情で、これこそ冷静という顔を浮かべて彼女は僕を見つめた。
「興味ないと思ってた」
彼女の顔立ちは誰にも劣らないほど綺麗だ。目を大きく、まつげは長い。鼻筋もすーとしていて、形のよい唇。
「少し窓開けるわね」
彼女はそう言って教室の1番後ろの窓を少し開けた。陶器のように白い肌と対比するような黒い艶のある髪がなびいた。
「質問の答えは?」
彼女の目がより真剣になったのを感じた。口調も少し強めになった気がした。
「どっちが辛いねぇ」
シラを切るようにしたが、彼女には通用しないようだ。
「あなたは好きな人いる?」
例え話にするつもりなのか。一先ず彼女に従うことにした。
「一応いるよ」
片想いだけど―…とは心の中で呟いた。
「なら答え易いでしょう」
このとき分かった。彼女は最初から僕に好きな人がいて、尚且つ片想いだということも知っていたのだと。
「でもさ、諦めるにも1人じゃできないよね」
彼女はどういうこと?と言わんばかりの表情をしていた。もしかして、その表情もわざとなのか。
「相手に協力してもらわないと。振ってもらったりとかね」
彼女は視線を下に向け、何か呟いたように見えたか気のせいだったのだろうか。
「諦めたいの私」
ぱっと顔をあげてやけにはっきりした物言いで言い切った。
「片想いだから?」
こくんと頷いた。こんな仕草の彼女を見たら男子ならいちころだろうと思った。僕も男子なんだけれど。
「君は出来るのかい?」
少し意地悪な質問だったかもしれない。彼女もきっと答えにくいだろうと思ったが
「あなたに協力してもらえれば」
はっきりした口調には、はっきりした意志が感じられた。僕には彼女の言うことが理解できなかった。
「分からなくていいわ」
やけに冷めた口調。でもどこか喜びを感じている口調。嫌な予感がした。そういうのに僕は鋭いのだ。
「明日、絶対に学校来てね」
その瞬間に僕はわかってしまった。僕は明日から学校に行ってはいけない。行ったら―…
…―殺られる
次の日から僕は学校へ行かなかった。それでも進学はしたいので塾に通い、家で授業のペースと同じように勉強した。
周りからは、不登校と呼ばたが学校に行っている人たちより成績はよかった。
*:.+:..:゜*+:゜+.:゜:+
今日も彼は来ていない。あなたを諦めたいのに、あなたは諦めさせてくれない。
「なぜ?」
私は思わず呟いた。泣きそうになるのをこらえスクールバッグから銀色に輝くものを出し、自分を癒すように眺めた。
「使う日はいつになるのかしら」
私は無駄に長い果物用ナイフの輝きを眺めては、自分の願望に輝きを求めた。
紅い夕陽の教室
銀色の果物ナイフ
この銀色のナイフが夕陽のように紅く染まる日を願って―…
私は今日もあなたを想う。