はて、
はて、何を書こうか。
私はつい1時間ほど前、筆を執った。何かを書きたかったのである。書くなら小説がいい。
しかし、何が書きたいのか、具体的なことはちっとも思いつかない。
推理小説はどうだろうか。否、私に巧妙なトリックが書けるものか。
ファンタジー小説はどうだろうか。否、私に細やかな異世界描写が書けるものか。
恋愛小説はどうだろうか。否、愛だ恋だと語れるほどの心も経験もありゃしない。
何だ、私にかける文章などないではないか。
まいった。実にまいった。
今までそれなりに、面白い小説たちと出会ってきたのだが、自分では案外書けないものだな。
しかし、私は書きたいのだ。何か、こう、グッとくる作品を。事実よりも奇なる小説が書きたい。
でもやはり、何も具体的なことは思い浮かばないのである。私の脳みそよ、少しくらい働いてくれたまえ。
そもそもどんな話が私は書きたいのだろうか。書ける書けないは別にして、書きたいジャンルは何だろうか。
主人公が敵を倒して英雄になる王道的な物語や、人間味や生死感を考えさせられる話も好きだ。
だからといって、それらが書きたいかと問われれば、そうでもない。書けと言われても、書けるとは思えないのだが。
結局、私は何も書けはしないのか。
夏目漱石のこゝろ。
或いは太宰治の人間失格。
はたまた、ミヒャエル・エンデのはてしない物語。
他にはジョナサン・ストラウドのバーティミアス。
どれも好きな作品だ。こんな作品が書きたいと思う。書けたらと思う。
その作品たちを読んだ感動を知ってるからこそ。こんな作品、私には書けはしまいと、筆が止まる。
ああ、それでも私は筆を置けずにいる。何か、何かを書きたいのだ。書くなら小説がいい。事実よりも奇なる物語がいい。具体的なことは何も思い浮かばないけれど。
はて、何を書こうか。
失礼しました。