472 決 戦 4
「恭子、行きま~す!!」
今回も、『いつか言いたい台詞』を恭ちゃんに言われつつ、乗り換えたフロートで発進。
この小さなフロートは、本来は戦闘用ではなく、観光用というか何というか、……お遊び用だ。
重力制御で、ただふわふわと空を飛ぶだけ。速度は遅いし、武装も付いてない。
まあ、もしビーム砲とかがあっても、今回は意味がないけどね。
そしてお遊び用だから、展望用の透明な部分が格納可能で、風を感じることができるようになっている。お腹のあたりから上がオープンになるわけだ。
……つまり、銃身を突き出して撃てる、ってことだ、うん……。
「よし、じゃあファルセットを降ろすか。
恭ちゃん、前線近くで、人がいないところ……がないなぁ。ま、降下すれば人が散って、着陸できるスペースくらい空くか。
おっと、その前に……」
外部スピーカー用のマイクを握って、と……。
『あ~、今から女神の守護騎士をひとり、地上へ降ろす。皆で共に戦い、国を、そして人々を護るのだ!』
よし、これでファルセットの邪魔をする者はいないだろう。
* *
「接地したよ!」
「よし、ファルセット、出撃!」
「はいっ!!」
あ~、いい笑顔で飛び出していったなぁ……。
「よし、上昇!」
「了解!」
さっさと空に上がらないと、兵士達が集まって来ちゃうからなぁ。
* *
フローターを低空で静止させ、展望窓は全部格納し、兵士達が魔物と対峙している場所とファルセットの位置を確認して……。
「攻撃開始!」
「「了解!!」」
「撃ちー方始めー」
既に攻撃指示は出しているけれど、やっぱり言っておきたい、軍隊式の攻撃開始命令!
そして射撃を開始する、私達。
それぞれがアイテムボックスから取り出した汎用機関銃や、重機関銃。
7.62ミリや12.7ミリならいいけれど、5.56ミリの軽機関銃じゃあ、オークやオーガには力不足だからね。
精密射撃が必要な時に使うため、対物ライフルも用意してある。
地上では、既に兵士達が魔物との戦いを始めている。
堀で魔物の動きを阻害しているため、人間側が有利に見える。
一箇所、魔物が急激に減少しているところがあるみたいだけど、……うん、勿論、ファルセットがいるところだ。
さて、私達も頑張るとするか……。
* *
撃ちまくる。
あまり兵士の近くを撃つのは味方撃ちが怖いので、戦闘ラインより少し魔物側の、多少狙いが狂っても問題ないあたりを……。
兵士達のアシストは、ファルセット頼みだ。
本人は敵中に突っ込んで斬りまくり、『今夜はみんなで、パーリナイッ!!』とかをやりたいだろうけど、自分の殺戮数より友軍の被害を減らして戦友達の命を護るように、という私の頼みを聞いてくれたのだ。
……フランセットなら、おそらく了承してはいても暴走しただろう。その点においては師匠を超えてるよ、ファルセット……。
とにかく、撃つ。撃つ。撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ……。
弾数が多いベルト給弾用の弾帯でもしょっちゅう交換しなきゃならないくらいの、撃ちまくり。
銃身が過熱すると、精度低下、焼損、熱による暴発とかを招くから、その時は銃ごと交換する。
銃身の交換なんてやってる時間はないし、そんな技術もない。予備の銃はアイテムボックスの中にたくさんあるのだから、そりゃ銃ごと交換するに決まってる。
そして、撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ……。
* *
「何か、マズくない?」
恭ちゃんが、そんな言葉を口にした。
……いや、実は私も気付いてはいた。何だか、人間側が劣勢だということに……。
魔物は、力が強く、体力があり、頑健な身体を持っている。
いくら人間側が剣や槍を持っているとはいえ、肉体的な性能が違いすぎるのだ。
魔物1頭に対し武器を持った数人の人間が、というならいい。
しかし、1対1だとか、魔物の方が圧倒的に多数とかになると、そうはいかない。
そして少しの怪我で戦えなくなる人間側は、継戦能力的に圧倒的に劣る。
それが、時間の経過と共に顕著に現れてきたのだ。
「……マズい。前線が崩壊する……。
魔物と人間が入り乱れてしまうと、そこには支援射撃ができなくなるよ……」
ファルセットが頑張って、前線を支えているけれど……。
いくら女神の守護騎士とはいえ、たったひとりではどうにもならない。
……それに、ファルセットはあくまでもフランセットの血を少し受け継いだだけに過ぎない。
あの大陸の守護神、女神の守護騎士の真祖たる絶対英雄、狂犬フランとは違うのだ。我が友、そして我が守護騎士、フランとは……。
「……あ!」
恭ちゃんが叫び、その視線の先を見ると……。
兵士を護ろうとして無理な体勢になったファルセットに向かって、オーガの一撃が……。
「ファルセット!!」
吹き飛ぶ、ファルセットの身体。
いくら女神の守護騎士とはいえ、所詮は少女の身体だ。鍛えたところで、肉体が鋼になるわけじゃない。
「助けに……」
しかし、倒れ伏したファルセットに向かって無情に振り下ろされる、オーガの腕。
頭の中が真っ白になり、身体が硬直した。助けなきゃ、という意識はあるものの、コンマ数秒もない刹那の時間では、なにも行動できないまま、全てが終わり……。
ずしゃっ!
オーガを貫いた、槍。
自分に向かって振り下ろされるはずであった腕を、そして驚愕に固まるオーガの顔を、ぽかんとした顔で見上げる、ファルセット。
……そして、戦場に轟く大きな声。
「お前の活躍は知っていた。助けに来たぞ、ファルセット!」
「……真祖、さま……?」
「フランセット? あれ、フランセットなの?」
小高い丘の上に立つ、ひとりの老女。槍を投げた直後のためか、手には何も持っていない。
そして、すらりと抜かれた、輝く剣。
言わずと知れた、神剣エクスグラムである。
「我は、女神の守護騎士、フランセット!」
神剣エクスグラムを天に掲げ、名乗りを上げる、フランセット。
「……いや、女神の守護騎士がひとりからふたりになったところで、大して変わらないよ。それに、いくら昔は強かったといっても、あの歳じゃあ……」
「そして……」
フランセットの後ろから、300人近い騎士達が現れた。
「女神の守護騎士軍団!!」
母国バルモア王国から、フランセットの子孫、女神の守護騎士が全員やって来た?
「アリゴ帝国陸海軍、及び商船団義勇兵参上!」
「ベリスカス、レイフェル伯爵領軍、ドリヴェル子爵領軍、見参!」
ええ? えええええ〜〜っっ!!
丘の上に、次々と現れた兵士達。
さすがに戦闘職じゃない『女神の眼』の連中はいないみたいだけど、あの連中が裏で仕組んだに決まってる。他国の兵士をアリゴ帝国の船で運ばせるとか、色々と……。
「カオルちゃん、これって、アレだよね!
昔の戦友が、主人公の危機に世界中から集まってくる、ってヤツ……」
恭ちゃんが、眼をキラキラと輝かせている
……うん、恭ちゃんが好きそうなシチュエーションだものなぁ……。
「……それじゃあ、もうひと頑張り、行きまっしょい!」
「「お〜っ!!」」
面白くなってきた。
そんな顔をしていやがるな、レイアのヤツ……。
うん、充分楽しませてあげるよ。人間達の悪あがきというものを見せてやる……。




