466 準 備 1
昨日は、ある程度話した時点で飲み会になった。
まあ、今日明日でどうこうという程切迫した状況でもないだろうから、そんなに急いで何時間もぶっ続けで真面目に話し合いを続けることもない。
なのでアイテムボックスからお酒と酒肴を出して、飲み食いしながらのんびりと話し合いを続けたのだけど……、お酒が入るとすぐに話が脱線して、検討会とは全く関係のない馬鹿話が始まってしまったのだ……。
ここには飲酒の年齢制限なんかないし、ここにいるのは全員が成人だ。
私達は前世でも成人だったしね。
レイアの見た目が少しアウトっぽいけれど、数億歳とかであろう本体の記憶を持った分身体だから、これを未成年と言うわけにはいかないだろう。
……そもそも、人間じゃないし……。
松阪牛とかの一部のブランド和牛はビールを飲ませて育てる、とか聞いたけれど、牛が成人年齢に達しているかどうかなんて、誰も気にしないよね。
ま、それと同じようなものだよ。
とにかく、そういうわけで今朝は少し寝過ごしたけれど、お店の開店時間には支障ない。
レイアの姿がないのはいつものことだけど、ファルセットもいないみたいだ。
また、鍛錬か何かをやっているのかな。
……まあ、いつも開店時間までには戻ってくるけどね。
剣士は鍛錬を欠かすとすぐに身体が鈍るらしいから、本当はもっと鍛錬に時間を掛けたいだろうけど、私達の護衛をしなきゃならないから、早朝くらいしか時間が取れないのだろうな。
強さを求める女神の守護騎士としては、それは辛いところかな。
でも、女神の守護騎士にとっては私の護衛以上に重要かつ崇高な任務はないから、そこは仕方ないのだろうけど、やはり少し申し訳ないな……。
ま、それは私が考えても仕方ないことだ。
そのあたりの兼ね合いは、ファルセット本人の意思に任せるしかない。
じゃあ、私は自分の仕事、朝食の準備でも始めるか……。
* *
「あれから、惑星中の魔物分布状況の継続監視と、この大陸の重点監視及び分析を続けているんだけど、……そろそろヤバそうな気がしてきた……というか、母艦のコンピューターがそう言ってる」
「「「…………」」」
ある日、午後のお茶の時間に、遂に恭ちゃんがそんなことを言いだした。
いや、その日が来るのを予想していなかったわけじゃない。
それまでにセレスが戻ってくれば問題ない。
そして戻らなかった場合に備えて、実動はしていないものの、色々と対策を考えてはいたんだ。
私達3人とファルセット、そしてレイア。
この5人……レイアは『人』じゃないし、何もせずにただ見守っているだけだけど……対、大規模な攻撃は無効化される、膨大な数の魔物の群れ。
……ちょっと、無理があるよね……。
数は力。数は暴力。戦いは数だよ、兄貴!
ファルセットも、戦いを生業とする一族出身なだけはあり、それは理解しているみたいだ。
フランセットなら、『私ひとりいれば、何万の敵がいようと問題ありません!』とか言いそうなところだけど、さすがに『脳筋』という二つ名を持つだけのことはある。
あ、日本での言い回しではなく、信じられるのは己の筋肉のみ、というのが信条であるあのフランセットが、『お前の頭脳は、筋肉並みに信頼できるな』と言ったのが由来らしく、筋肉馬鹿にとってはすごく光栄な褒め言葉らしいんだよ、これって……。
「以前カオルちゃんから色々と聞いて推定していた通り、魔物の増殖速度を弄られているのはこの国と、その周辺国あたりのみ。
多分、カオルちゃんの様子を見るのと試行の状況を確認するのを同時にできるからとかの、大したことのない理由でこのあたりで試行することにしたんじゃないかな。
どこでやろうが構わないなら、近くでやっちゃあ駄目な理由もないしね」
恭ちゃんが言う通りだ。
別に、セレスは魔物を激増させるとか大暴走を起こさせるとかいうつもりはなく、ただのバランス調整を試みるだけの予定だったのだろうから……。
なので、人間達に大きな被害が出るなんてことは考えてもいなかったのだろう。
私達の近くで多少魔物の数が増えても、それが私達の危険に繋がることなんかあり得ないと考えて。
……事実、もし予定より多くの魔物が増殖しても、私達だけなら何の問題もない。
魔物に簡単に殺されることはないだろうし、いざとなれば他国や他の大陸に移動することもできる。子供達を連れて……。
でも、知り合いが増えて、しがらみもできた。
そう簡単にこの国を、そして人々を見捨てるわけにはいかない。
それも、セレス絡みであり人間達の自業自得というわけではなく、そして私達にしか対処できない事態においては……。
「んじゃ、ちょっと王様のところへ行ってくるね」
「「いてら~!」」
うん、やはり数には数。
兵隊さんの出番だよ!
* *
「……というわけで、魔物の異常増殖と、それに伴う餌の不足で、魔物が森や山岳部から溢れ出て村や町を襲う可能性があります。
この国と、周辺国において……」
「「「「「「……」」」」」」
いつものように王宮へ行き、王様と宰相様、そして念の為に『軍の偉い人や、国策に携わる実務のトップ、外交のトップとかも集めてもらえませんか?』とお願いして集まってもらった皆さんに、状況を説明した。
セレスのせい、ということは伏せて、自然現象みたいな言い方で……。
そしてセレスは、私達に命じて被害を局限しようとしている、ということになっている。
さすがに、様々な宗派に分かれているとはいえ、大元が同じ唯一神教でありセレスを崇める宗教がほぼ独占状態であるこの世界で、セレスを悪者にするわけにはいかないよね。
そんなことをすると、私がセレスの加護を受けているということすら疑われかねない。
なのでここは、今回のことに関してはセレスには何の責任もなく、それどころかいつもは大災害をただ予告してくれる程度に過ぎないセレスが、今回は私に命じて色々と手助けをさせようとしている、ということにしたのだ。
これなら、疑うことなく私からの情報やアドバイスを信じてくれるだろう。
私がセレスの寵愛を受けているということは、今までに見せた治癒の加護によって疑いの余地なく証明されているからね。
「そういうわけで、周辺国と協力しあって、早急に魔物が住んでいるところの周辺にある町や村の防衛や近くにある城郭都市への住民の避難計画の立案、食料の備蓄、そして魔物が溢れて大暴走が始まる前に間引きを行うとか、予想進路上に堀や防衛拠点を築くとかの対策を……」
「「「「「「…………」」」」」」
……あれ? 反応がないぞ?
「とりあえず、他国への注意喚起と情報の共有、共闘のための条約締結を……」
「「「「「「………………」」」」」」
いやいや、どうしちゃったんだよ!
みんな、蒼いを通り越して血の気のない白い顔をして、口を半開きにして汗をかいて、ぷるぷると小刻みに震えて……。
……風邪か? 風邪薬のポーション出そうか?
拙作、『ポーション頼みで生き延びます!』書籍12巻、刊行されました!
よろしくお願いいたします!!(^^)/




