461 仲 裁 1
遮音フィールドと不可視シールドを張った小型艇で、上空へ。
乗っているメンバーは、私達とファルセットの、4人。
ファルセットが来ないわけがないし、レイアは『面倒なのはパス』とか言って、甘味屋へと出掛けていった。
まあ、現場にいなくても状況はモニターできるのだろう。
セレスがいないから、能力を使っても察知される心配はないだろうからね。
そして、上空で搭載艇にパイルダー・オン!
……いやいや、小型艇の発進・収容口から格納庫へと進入した。
搭載艇とはいっても、直径60メートルくらいの球形だから、体積としてはかなり大きい。だから、搭載艇の中にも、連絡艇や作業艇が積んであり、格納庫と簡単な整備機能があるのだ。
……どこが『搭載艇』やねん!
と、まあ、そういうわけで、小型艇は『搭載艇の搭載艇』というわけだ。……ややこしい。
まあ、4人乗りの小型艇じゃ、御使い様としての威厳が出ないよね。
ここじゃ、大半の者は『神は、セレスティーヌ様のみ』という唯一神教を信じているから、私が女神だと言うわけにはいかないんだよね。
だから、御使いと名乗るしかなく、それで威厳を出すためにはデカい乗り物、『天の浮舟』に乗って登場するしかないのだ。
……ほら、大統領が自転車や三輪車で現れても、威厳がないでしょ?
そういうのは、リムジンとかで現れてくれないと……。
それと同じだ。
でも、さすがに直径1500メートルの球形艦とかいうのはやり過ぎだから、搭載艇くらいが丁度良いかと思ってね……。
そして、みんなで歩いて、艦橋に到着。
宇宙船乗りは運動不足になり易いから、これくらいの距離は歩いて移動することになっているらしいよ。
さすがに、直径が1500メートルもある母艦では、少し離れたところへ行く時にはターボリフトを使うけれどね。
「ファルセットは、そこの席に座ってね」
「分かりました」
ファルセットが、恭ちゃんが指示したシートに座った。
私達は、何度かこの搭載艇に乗ったことがあるから、いつも座る席に着いた。
……しかし、ファルセットが動揺した素振りがないのは、驚きだよ。
そりゃ、王都本店と『リトルシルバー』の間の移動で小型艇に乗ったことはあるよ?
でも、母艦はおろか、搭載艇に乗るのもこれが初めてだったはずなんだよ。
驚くよね、普通……。
女神様なら何でもアリ、とでも思っているのか、もう驚く感覚が麻痺しちゃっているのか……。
「じゃあ、顔出しするのはカオルだけね。そして見せるのは、お面を着けた、『夜の御使い様』としての姿、と……」
レイコが、念押しの最終確認をしてきた。
いや、確かに、一度お面を着け忘れて御使い様劇場をやっちゃったことがあるからなぁ……。
確認作業は、何度もやった方がいいな、うん。
結局、顔出しは噂が広まっているであろう『御使い様劇場』の時の姿でやることになった。
既に一部の者には知られているのだから、それとは違う姿というのはマズいかも、ということになったので……。
まあ、お面を着けていて、『顔出し』もないけれど……。
……い~んだよ、細けぇこたー!!
「じゃあ、行くよ? 目標、接近中の隣国軍。両舷全速ゥ、搭載艇、発進します!」
「ハイハイ……」
「いいなぁ、恭ちゃんはいつもそのネタ使えて……」
「…………」
* *
「いた! 隣国軍、下方。完全にこっちの国に侵入しているから、殲滅しても問題ないよね!」
「問題、大アリじゃい!!」
ホントにもう、恭ちゃんは……。
「恭子、今回の目的は敵の殲滅じゃなくて、戦争の阻止でしょう?」
「あ、そうだっけ……」
レイコの指摘に、舌を出す恭ちゃん。
「ゆっくり降下して、連中の上空に静止。
投槍や矢が届きそうな高さだと、攻撃しようとして必死になって話を聞いてくれなくなっちゃいそうだから、絶対に向こうの攻撃が届かない高度でね。
……まあ、小型艇ならばともかく、こんなデカブツに喧嘩売ろうという奴は滅多にいないだろうとは思うけれど、人間、恐怖感に襲われると、何をするか分からないからね……」
「へ~い……」
レイコの指示に、素直に従う恭ちゃん。
いつもはぽややんな恭ちゃんも、マジな作戦行動時には、私やレイコの指示にちゃんと従ってくれるのだ。性格はともかく、馬鹿じゃないからね、恭ちゃんは……。
そして、搭載艇を隣国軍の上空に静止させた。
不可視シールドを張っていたわけじゃないから、前方から接近してきたなら発見されていただろうと思うけれど、ほぼ真上から降下してきたからか、見つかって騒がれることはなかった。
まだかなり高度を取っているから、見つかっても、ごく小さく見えるだけだし。
コンタクトを取ってから、更に高度を下げて、こちらのデカさを見せつける予定だ。
まあ、休憩中であればともかく、行軍中に真上を見上げる兵士はあんまりいないよね。
足を止めなきゃならないし、首が痛くなっちゃうから。兜なんか着けてて真上を向いたら、首がグキッて逝っちゃうよ。
それに、遥か上空に現れてから今の静止位置まで降下するのは、あっという間だったしね。もし気付いた者がいたとしても、騒ぎが広がる時間がなかっただろう。
さて、地上の皆さんへのお声掛けだけど、……やっぱり、私の仕事だろうなぁ。
恭ちゃんはそういうのに向いていないし、レイコは、もっと向いていない。
だから、昔からそういうのは私の担当だったんだよ。
では、拡声システムの指向性を下方に広げて、と……。
『お前達は、国境を越えて我らが滞在する国へと侵入している。
これは、我らが加護を与えし国への無警告での侵略行為と判断しても構わぬか?』
おお、慌ててる慌ててる……。
まあ、これで私達が女神の使いだと思わない者はいないよね。
ここでは神様はセレスひとりだという唯一神教が主流だから、『我ら』と言った時点で、神様、つまり女神セレスティーヌではないということだから、それ即ち、私達はセレスの下位者、御使い様ってことだ。
これで、いきなり矢を射てくることはないだろう。
……別に射られても何ともないけれど、そうなると大混乱になって話が進まなくなるし、それなりの対処をしなきゃならないから、面倒だものね。
よし、高度を下げて、宣託を行うのに丁度良い位置取りをするか……。




