360 王都本店 2
トレーダー商店王都本店の開店準備を手伝っている時の私は、エディスの恰好。
勿論、レイコはキャンの恰好で、ファルセットはいつもの通り、そのままだ。
もう、最初から3人は知り合い、ってことにした。
でないと、店の立ち上げ時に全てを恭ちゃんに任せるのは負担が大きすぎると思ったし、何より、私とレイコが『心配過ぎて、落ち着けない』から……。
まだ、王都を壊滅させて逃げ出すような時間じゃない。
それに、既にキャンは一角獣の角という稀少素材を納入している。
……私から換金を頼まれたのだろう、と思われるようなタイミングで。
そして、サラエットが売る、丸ごと飛竜と、それに続くトレーダー商店王都本店で売られる数々の稀少品。
いや、もう、関連性を疑われて当然だ。
だから、変に疑われて探られるより、最初から、『はいはい、勿論、お友達ですよ〜! お互いに、商品やお金を融通して助け合っていますよ〜!』って堂々としていた方が面倒がない、という結論に達したわけだ。
凄腕ハンターであるキャンがトレーダー商店に稀少な獲物を売り、聖女(非公認)エディスの護衛を引き受ける。
遣り手商人であるサラエットが聖女エディスに資金援助をする。
聖女エディスが仕事で怪我をしたキャンを癒やす。
キャンが狩りで不在の時のために、護衛として騎士兼ハンターの凄腕剣士ファルセットを雇う。
……うむうむ、完璧の母!!
そして迎えた。トレーダー商店王都本店開店イベント、飛竜の解体ショー当日である。
* *
場所は、ハンターギルドの解体場。
いや、水が流せて後始末がし易いこと、土の地面で解体するのは不衛生であること、王都中央の大広場なんかでやれるわけがないこと、勿論店の前なんて論外であること。
そういうわけで、選択肢がここしか残らなかったのだ。
それに、ここでやれば、少しはハンターギルドの顔が立つしね。
私達が指名依頼を出したモスさん以外の解体場の人達が、無償で手伝ってくれるって言うし。
いや、そりゃやりたいよね。一生の記念になるし、解体作業員としての自慢になるし。
勿論、後で御祝儀として金貨1枚ずつ渡すつもりだ。
破格の報酬だけど、開店祝いだから、相場なんか度外視。
これから、普通の商品も扱うトレーダー商店が色々とお世話になるだろうからね、ハンターギルドと商業ギルドには。
商業ギルドは、解体して即売する素材を落札して取り扱えばいいだろう。
絶対、それでもかなりの利益が出るはずだし、『飛竜の素材を扱った』という実績になり、そこそこデカい顔をできるだろう。
……そろそろかな。
あ、来た来た……。
特製のリヤカーを数台繋いで固定し、その上に乗せられた、飛竜。
それを、雇った下級ハンターや孤児達が大勢で押してくる。
こっちは、ひとり当たり小金貨1枚の御祝儀価格。
……いや、孤児にとっての小金貨1枚、日本円での1万円相当の稼ぎは、とんでもない金額だ。
孤児グループ5~6人が全員参加したら、5~6万円相当だよ。そんなの、今まで手にしたこともない額だろう。
勿論、自分達で生きている連中だけでなく、孤児院にも声を掛けた。
世話役の大人や院長先生まで参加してるよ。
これは、自分も稼ごう、ということではなく、感謝の印としての参加なのだろうけど。
いや、当然、お金は払うよ。
そして実は、輸送部隊にはレイコが付いていて、こっそりと重力軽減魔法を掛けている。
そうしないと、ちょっと無理があるかな〜、って思ったんだよね、私達3人、全員が……。
まぁ、みんな飛竜を運んだことなんかないだろうし、空を飛ぶモノだから軽くて当然、とでも思っているだろうから、問題ない。
近付いてきた輸送部隊に、解体作業員や他のギルド職員、そして見物人であるハンターや一般の人達も駆け寄って、輸送を手伝い始めた。
早く解体を見たいと思ってのことか、それとも、自分もこのイベントに参加するという一体感を求めてのことなのか……。
まあ、どっちでも構わない。
みんなが喜び、盛り上がってくれるなら、万々歳だ!
* *
無事、飛竜は解体場に運び込まれ、見物人……その一部は、素材の落札目当ての業者達……が固唾を呑んで見守る中、私の口上が始まる。
……うん、恭ちゃんに任せるのは、心配だからね!
「皆さん、本日は我が友人、新進気鋭の商人サラエットがここ、王都に開店します新たな店、トレーダー商店王都本店の開店記念イベントにお越しいただき、ありがとうございます!
これより、トレーダー商店がその力によって仕入れました飛竜をハンターギルドの解体専門家の皆さんの御協力により解体、その場で各素材を販売いたします!
販売は、オークション形式です。落札を御希望の方は、大声で金額を叫び、併せて両手を挙げて指で数字を示していただけますと助かります!」
「「「「「「おおおおおおお〜〜!!」」」」」」
よし、掴みはバッチリ!
「では、解体専門家の皆さん、お願いいたします!」
ハンターギルドが無償で協力してくれているみたいな言い方をしたり、『解体作業員』ではなく『解体専門家』と言ったり、色々と気を遣っている。こういう、ちょっとした配慮が相手から好感を抱いてもらえる切っ掛けになったりするんだよね。
配慮や心遣いは大事だよ、うん。
そして始まった、プロによる解体作業。
飛竜の解体は初めてだろうけど、長年の経験で、大物を解体するコツとか、身体の造りとかを熟知しているだろうから、少し苦戦している様子もあるけれど、思ったより割と順調に進んでいる。
いや、もっと苦労すると思っていたんだよねぇ。
……さすが、その道のプロは違うなぁ……。
「はい、首が落とされました! 目玉や耳とかをバラ売りしてもいいのですけど、イベントでちまちまやるのはみっともない! 首から上、全部纏めて、入札開始!!」
うん、さっさと進めよう。
飛竜の舌や耳は、珍味として有名らしい。
……そんなの食べたことのある人、殆どいないだろうけどね。
料理人が入札するか、それとも剥製にして飾るために貴族が入札するか……。
「金貨10枚!」
「15枚!」
「17枚!」
「18枚!!」
うむうむ、順調に値が上がっていく。
金貨18枚だと、180万円相当か……。
頭部だけで数百万って。身体全体の重量のうち、頭部なんかごく一部だよ。
「20枚!」
「22枚!」
うんうん、値が上がり続けて……、って、違う違う!
今回は高値で売って稼ぐのが目的じゃなくて、場を盛り上げ、トレーダー商店の名を売ると共にお店が良心的で誠意があることを示さなきゃならないんだ。
そこが、オークションの司会者の腕の見せ所だよ!
さて、どうするか……。
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