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349 活動開始 5

「……分かった。まぁ、知っているなら話が早い。

 今、個室で依頼完了処理をしている。その後、報酬金の一部をふところに、そしてどこで一角獣ユニコーンの角を手に入れたかという情報を頭に入れた小娘が、ひとりで帰る。

 ……無事に宿に帰り着くまで、護衛してくれ。

 但し、本人には護衛が付いていることは悟られないように、だ。

 報酬は、何もなければ小金貨5枚、何かあれば小金貨15枚だ」

「うわぁ、太っ腹!!」


 5人パーティなので、何もなければひとりあたり小金貨1枚(1万円相当)、何かあればひとりあたり小金貨3枚(3万円相当)である。

 これが1日あたりの報酬額であれば安いが、王都内で、しかも宿屋までなど、徒歩で10分もかからない。

 魔物や盗賊が出るわけでなし、もしタチの悪い連中に絡まれたとしても、Bランクパーティが介入すれば、戦いになることなく引き下がるのはほぼ間違いない。


 実力差もあるが、王都のど真ん中で騒ぎを起こせばすぐに警備兵がやって来るし、可愛い少女が複数の男達に絡まれていれば、居合わせたハンターや正義感が強い者達、そして下心満載の者達がしゃしゃり出てくるに決まっている。

 そしてオマケに、その少女自身がハンターであり、剣を佩いている。

 なので、ちょっかいを掛けてくる者がいたとしても、命を懸けた戦いになる確率はかなり低いであろう。


 それに、こちらはBランクパーティ5人組なのである。チンピラや底辺Cランクハンターなど、10人やそこら束になっても軽く蹴散らせる。

 ……そして、王都のど真ん中で、10人以上で少女ひとりを襲うような者はいないであろう。

 襲うなら、2〜3人から、せいぜい5〜6人までであろう。効率を考えるなら……。


 このパーティはお金に関しては堅実であるが、思いがけぬ臨時収入があった時には、そのお金はパ〜ッと使ってしまうことにしている。

 ……つまり、僅かな時間のお散歩で、今夜の贅沢な食事……呑み会……が約束されるわけである。

「「「「「受けた!!」」」」」

 リーダーがパーティメンバーと相談するまでもなく、全員の声が揃ったのであった。

 そして、皆が心の中で願っていた。

(((((……何かあってくれ! 頼む、何かあってくれ……)))))

 ひとりあたり小金貨1枚と小金貨3枚の差は、大きかった……。


     *     *


「あれ? 宿屋が密集している方へ行かないぞ?」

 個室での納品処理を終え、ギルドの金庫にあった金貨の一部を受け取って帰る新参のハンター、キャンのあとをこっそりとつけている、ギルドマスターが護衛に雇ったBランクパーティ、『幻想の弓』。


 キャンが報酬の一部として金庫の中身全てを受け取らなかったのは、勿論、そんなことをすればギルドが他のハンターの納品に対応できなくなってしまい大変なことになるのと、アイテムボックスを秘密にしているキャンがそんなに大量の金貨を運べないからである。

 金は比重が大きく、とても重い。水1.0、鉄7.8に対し、金は19.3。

 水の約19倍。鉄の約2.5倍である。


 ……いや、頑張ればある程度は持てるが、それはそれなりのバッグを用意していた場合である。

 少なくとも、巾着袋に入れて懐に、というような体積でも重さでもない。

 なので、報酬の大半はギルドに預け、この場ではごく一部を受け取っただけである。

 それでも、普通のCランク以下のハンター達から見れば、大金であるが……。


「……あっちには、宿屋はないはずよ。すぐに建物がまばらになって、畑とかが増えてくるはず……」

 メンバー中の紅一点である弓士の女性が言う通り、そちらはすぐに街外れになる。

「今から街を出るのか? いや、長期の護衛依頼を受けているはずだ、そんなはずは……」

「護衛対象が街外れで待っているとか?」

「どうして依頼主がそんな危険なことをする必要があるんだよ!」

 パーティメンバー達が小声であれこれ言い合うが、分からないものは仕方ない。憶測でいくら言い合っても無駄である。


「……もう20分近く歩いたぞ……」

「「「「…………」」」」

 マズいな、というような顔でそう言うリーダーに、同意するような顔のメンバー達。

 実は、あの少女がギルドを出た直後に、後を追うように出ていったパーティがいたのである。

 ……あまり評判の良くない、Cランクの中位あたりのベテランパーティ4人組である。


 ベテランでCランク中位ということは、一見強そうに聞こえるが、『長年ハンターとしてやってきたのに、それ以上にはなれなかった者達』、つまり成長が頭打ちとなり、もうBランクになれる可能性はなく、あとは体力が落ちてハンターを引退するまでにコツコツと老後の資金を貯めるか、もしくは派手に一発当てて荒稼ぎ、とかいう夢を見るしかない連中なのである。

 少女が人通りの多い大通り(ブールバード)を歩いて宿に戻れば、手出しできずに諦めたかもしれない。

 しかし、少女ひとりで人通りのない街外れへ向かうとなれば……。


 なので、ギルドを出た時には『よし! 何かある(・・・・)の、ほぼ確定!』とか言って喜んでいたくせに、今になって心配するとは……。

 やはり、お人好しな連中なのであろう……。


 そして、その評判の良くないパーティが、少女が出た後すぐにギルドを出て、更に『幻想の弓』もその後を追うようにギルドを出たことと、その前に『幻想の弓』が若手職員カレンに呼ばれて2階へ上がっていたことから、他のハンター達は概ね状況を理解しており、さすがに更にその後に続く者はおらず、皆、『生娘ちゃん』の後を追ったパーティの末路を想像して、肩を竦めたのであった。


     *     *


「おい、お嬢ちゃん。ちょっと待ってくれや!」

(来たアアァ〜〜!)

(((((あああああああ〜〜!!)))))

 久し振りのテンプレに感動するキャン(レイコ)と、自分達の望み通りになったというのに心の中で叫ぶ『幻想の弓』の5人。


「お嬢ちゃん、珍しいモノを納品したそうじゃねぇか。どこでそれを手に入れたのか、教えちゃくれねぇかな……」

 にやにやとした顔でそう言う男と、その仲間らしき3人の男達。

(4人組か……)

 そして、キャン(レイコ)の返事は、勿論……。

「お断り!」


「まぁまぁ、そう言わずに……。

 それに、懐が少々重すぎるんじゃねぇのか? 少し軽くした方がいいんじゃねぇかなぁ……」

 そんなことを言う、絡んできた連中のリーダーらしき男であるが、勿論キャン(レイコ)は受け取った金貨はアイテムボックスに入れているため、重くはない。


 キャン(レイコ)は、不法行為を行う者には容赦ない。

 しかし、今はまだ、呼び止められ、頼み事をされただけ(・・・・・・・・・)である。

 正当防衛として容赦なく叩き潰すには、一線を越えてもらう必要があった。

 具体的には、腕を掴む、胸ぐらを掴む、殴りかかる、等である。

 なので、さっさとそれらの行為に及んでもらうべく、少し挑発しようとしたのであるが……。


「おい、お前達……」

「……どうかしましたか?」

 後方から駆け寄ってきた『幻想の弓』の5人が、キャン(レイコ)と男達の間に介入すべく声を掛けようとしたところ、すぐ側の家から出てきた、剣を佩いた14~15歳くらいに見える少女がその言葉をさえぎった。

 ……ファルセットである。

 どうやら、キャン(レイコ)が男達に呼び止められたのは、カオル達が借りた家に到着する寸前だったようである。


 ファルセットは、自分の居間での定位置を、窓から外が見える場所にしていた。

 勿論、家の前を通る不審者にすぐ気がつけるようにである。

 なので、家の前での騒ぎには、眼と耳で、すぐに気付く。

 そして、事態に気付いて飛び出してきたようであった。


「何事だ!」

 大慌てで近くの建物から飛び出してきた、数人の警備兵。

 当然ながら、カオル達が住んでいる家の前、イコール警備隊の仮設駐在所の真ん前であった。

 まだ仮設駐在所は完全には準備が整っておらず、寝具やら食事用のテーブルやらは揃っていないが、当然、そんなこととは関係なく、既に警備兵……ということになっている、精鋭近衛兵が交替で24時間詰めていた。

 そしてこの任務の重要性を教えられている近衛兵達は、殺気立っていた。


(え〜……)

 せっかくの見せ場を横取りされて、がっかりのキャン(レイコ)

(((((え〜〜……)))))

 同じく、せっかくの追加報酬が台無しになるかもしれないと、心の中で落胆の声を漏らす、『幻想の弓』の5人であった……。

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― 新着の感想 ―
3者三様⁉️いや、この場合は5者かな?
需要と供給のバランスが、崩れて壊れてしまってるね。。。
[一言] 結局落胆するんかいw
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