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227 事業展開 1

「待ってたよっ! もう、『あの干物はないか』って、お客さんがうるさくてさぁ……」

「すみません! でも、従業員が増えたから、これからは生産量が増えますから!」

「おおっ、そりゃ嬉しいねぇ……」

「そして、この子たちが、新しい従業員です。販売にも来ますから、よろしくお願いしますね!」

「「「お願いします!!」」」

 ミーネとアラルは既に顔馴染みなので、新規組の3人だけがそう言って御挨拶。うむうむ。


 街に戻って3日後、加工食品の持ち込み販売を再開した。

 仕込みや新メンバーへの教育とかがあったから、そりゃ翌日からとかは無理だよ。

 長期不在で迷惑をかけたことと、生産量やラインナップ増加の説明とかがあるから、再開初日は私も子供達と一緒に取引先のお店廻り。新人の紹介もしなきゃならないしね。これからは子供達だけでお店廻りをしてもらうのだから。

 恭ちゃんも顔見せのために同行してるけど、経営者側なので、微笑みながら軽く頭を下げる程度。さすがに、子供達のように元気良く叫んだりはしない。


 そして、販売可能数の増加とか、新しい商品ラインナップの説明をして、改良品とか新規製品とかの見本品サンプルを長期不在のお詫び代わりに無料で提供して、次の店へ。

 表の商売での取引店は、まだほんの数店だ。それくらい、すぐに廻り終える。

 生産力が激増したから、もっと取引先を増やそうかなぁ。


     *     *


「レイコ、ちょっと頼まれてくれない?」

「……何?」

 うん、レイコはいくら私や恭ちゃんからの頼みであっても、内容や条件を聞く前に了承したりはしない。

「ミーネとアラルが働かされていた商店トコの様子を確認してきて欲しいんだ。

 今更どうこうというわけじゃないんだけど、逆恨みしてふたりに危害を、なんてことになると大変だからね。

 多分、リュシーを買った店と同じようになってるんじゃないかとは思うんだけど、念の為にね」

「了解! やっぱり、『石橋を叩いて砕け』だよね!」

「砕くな!!」

 全く、コイツは……。

 叩いて砕くのは、鉄の悪魔だけで充分だよ!


「じゃ、早速行ってくるね!」

 そう言って、そのまま玄関へと向かうレイコ。

 悪いけど、この役目にはレイコが一番の適任だ。

 奇襲や素早い敵には弱く、移動速度はハングに乗っても人並みである私。そして船がなければただのか弱い少女に過ぎない恭ちゃん。レイコが単独行動を取るのが、一番早くて安全なんだよねぇ。

 ……適材適所。

 レイコも、それは分かってくれている。だから気軽に頼めるし、ふたつ返事で引き受けてくれる。

 うん、私達は友達、『KKR』だもんね。

「頼んだよ~!」


 よし、そして次に……。

「イリー、フリアとリュシーを連れて、配達をお願い。品物を渡すだけで、お金は受け取らない。

 手紙を付けてあるから、説明の必要もないからね。ただの配達だよ。

 ……届け先は、領主邸」

「領主邸に届けるなら、『ただの配達』であるものですか!!」

 ありゃ、イリーに怒られた……。


「いや、勝手口から厨房の使用人に渡すだけだから、本当に、ただの配達、子供のお使いだよ」

「…………」

 イリーはまだ、納得いかない、というような顔をしているけれど、まぁ、いくら勝手口とはいえ、孤児が領主邸に行くなんて、考えられないか。下手をすれば泥棒扱いされて、牢屋入り、とかもあり得るかも。

 ……でもそれは、『孤児であれば』の話だ。

 今は、みんなちゃんとお風呂で磨き上げて清潔にしているし、普通の衣服を着けている。

 そして正規の事業所からの届け物を渡すために訪問するのだから、何の問題もない。


「大丈夫。今のあなたは『孤児』ではなく、『事業所リトルシルバーの従業員、イリー』なのだから。そして、私の名代みょうだいとして、我が『リトルシルバー』の看板を背負っての訪問だから。

 もしそれに文句を付ける者がいたとすれば、……ソイツは、私達の『敵』よ」

「分かりましたッ!!」

 びしぃっ、と姿勢を正し、直立不動でそう返事するイリー。

 ……気合入ってるなぁ……。

 とにかく、完全に納得してくれたようなので、ヨシ!


「じゃ、行ってきます!」

「うん、……って、待て、待て待て待てええええぇ~~っっ!!」

 私が呼び止める間もなく、駆け出していったイリー。

 いや、フリアとリュシーも連れていくよう指示したはずだし、そもそも、まだ届け物を渡していない。

 ……まぁ、すぐに気付いて戻ってくるだろう……。


     *     *


 そして、予想通りすぐに戻ってきたイリーに、フリアとリュシーを付けて、用意しておいた領主様への届け物……干物、ジャーキー、漬け物、お酒数種類、飴玉等を始めとした、貢ぎ物の数々……を渡した。

 いくら子供とはいえ、3人いればそこそこの荷物は持てる。領主様への貢ぎ物は、いくら多めではあってもそんなに膨大な量というわけじゃないから、3人で大丈夫だ。

「あ、新人ばかりだと、うちの者だということが分からないだろうから、持ってる荷物狙いのチンピラたちに対する抑止効果がない……」


 こりゃイカン。

 ヤバいヤバい……。子供達を危険に晒すとこだったよ。抜けてたなぁ……。

 以後も、気を付けなくちゃ……。

「私も、一緒に……」

「その必要はありません」

「え?」

 私の言葉を遮って、ミーネが割り込んだ。


「私達は、元々街の人達にはある程度知られています。孤児院時代にはお駄賃目当てで半端仕事を求めて毎日街をうろついてましたし、畑で採れた野菜を売り歩いたり、孤児院が寄付を集めるためのイベントを行ったりしていましたから……。

 戻ってきてから私とアラルが絡まれそうになったのは、アラルは街の人達に知られていなかったし、孤児院がなくなっているところに戻ってきた私は、どこにも所属しておらず、誰にも守ってもらえないただの浮浪者だと判断されていたからです。

 でも、既にここの現状が街中に知れ渡っている以上、戻ってきたイリー達がここに所属していると判断されるのは当然のことだし、そしてここを敵に回すことの危険性は、充分に知れ渡っています。

 まぁ、念の為に私が一緒に行けば、全く問題はありません。少なくとも、カオル様がわざわざ腰を上げられるほどのことではありません」


 おお、ミーネがこんなに長い台詞を喋ったのは、初めてじゃなかろうか……。

 そして、その主張は論理的だし、充分に筋が通っていて、納得できるものだ。

 イリー達も、せっかく自分達に与えられた初めての『付き添いなしでの重要任務』に私達がついていくことになるよりも、ミーネがついていった方が達成感があるだろう。

 そして、ミーネが一緒に行けば、その間、私と恭ちゃんがアラルと遊べる。

 恭ちゃんは子供と遊ぶのが好きだけど、まだアラルとあんまり遊べていないからね。レイコが不在の今、私が譲れば、恭ちゃんの『ショタ天国』が実現できる。

「「承認!!」」

 私と恭ちゃんの声が揃った。


     *     *


「うりゃ! うりゃうりゃうりゃ!!」

「きゃはははははは!」

 恭ちゃんの、アラル相手の馬鹿騒ぎが止まらない……。

 そんなに子供と遊びたかったのか……。

 そして私は、少々顔色が悪くなっていた。


 イリー達、新人3人組が貢ぎ物を届けるために領主邸へと向かってから、既に1時間半は経過している。そしてそれは、ただ届け物をするだけの用事で領主邸まで往復するには、いくら荷物を持った子供の足とはいえ、いささか時間が掛かりすぎている。

 ……駄目だ。もう、我慢の限界だ!


「恭ちゃんは、アラルと留守番! 私は、ちょっと領主邸まで行ってくる!」

 そう言って飛び出す私を、ぽかんとした顔で見ているアラルと恭ちゃん。


『ハング、緊急出撃用意!!』

 玄関から飛び出した私は、少し離れた草地でのんびりしていたハングを大声で呼び寄せた。

 そして……。

『セットア~ップ!』

 アイテムボックスの中に入れてあった鞍を呼び出して、直接装着。

 アイテムボックスの中では時間が経過しないから、収納した時のまま、つまり馬体に装着した形状のままだから、これが可能なんだ。形が崩れていたり、紐が解けていたりすれば、こんなことはできない。


 鐙に足を掛けて、乗馬。

『目標、領主邸。出撃!』

『おおおっ!!』


 ふざけた真似をする奴は、許さない。

 たとえ女神が許したとしても、この私が……。


『俺は? 俺の出番はああああぁ~~っっ!!』

 後ろから、バッドの悲痛な叫びが聞こえてきた。

 しかし……。

 小さいことは、気にしない!

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― 新着の感想 ―
バット置いてかれちゃったねまぁカオルちゃんは一頭にしか乗れないからね〜で初めてのお使いですか
[気になる点] 感想欄が昭和世代ホイホイになっている件
[一言] カオル「ハイヨー、フレンダー」 ハング「誰!?」
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