9話『同族』
「お……大須賀、君!?」
「蕾ちゃん!?」
あまりにも突飛な再会に2人とも目を見開いて立ち尽くす。
そしてしばらくそうしていると、ノアが公園に飛び込んできた。
「ん、いたいた! ……お? 同業者?」
「ノ……ノア! おい、同業者って、どういう……もしかして死神は、俺だけじゃないのか……?」
「ごめんね言い忘れてた! そうそう、そっちの子も死神だね」
「は……?」
帝人が絶句しても、ノアは淡々と続ける。
「帝人……天使が一体何匹いると思ってんの? とても君1人で捌ける量じゃない。不幸なことに日本には未練を残して死ぬ人が多くてね」
「大須賀君も……死神、だったんだね……!」
蕾は喜々とした様子で帝人の手を取り上下に振るが、帝人は未だに状況が読み込めていないのであった。
今でもたまに天使関係の事件がTVにて放送されているが、あくまで『たまに』程度の頻度なのだ。そこから、天使の数はそこまで多くはないと、自分1人でこの世界を救えると、帝人は勝手に思っていた。だがその考えは今この瞬間、音を立てて崩れたのである。
死神が自分だけではないという事は、他にも死神がいるということを表している為、相対的に死神に駆逐される天使の絶対数も増えていく訳で。日本がそんなに恐ろしい事になっていたなんて、予想だにしていなかった。
そんな事を思っていると、蕾が口を開く。
「わたし……なんだかんだで1年くらい死神をやってきたけど、まだ天使は3匹しかやっつけてないんだ……血、苦手だし、遠くから狙うときも手が震えちゃってうまくできないの……」
苦しそうに、虚しそうに言葉を紡いでいた蕾は、ここで区切ると、今度は顔色を少し明るくしてこう言うのだ。
「でも……でも、大須賀君を、守りたいって思ったの……! 優しくて、強くて話してると楽しくて……これからも、仲良くしたいな、って……そう思ったら! これを倒せたのは、大須賀君のおかげだね」
白い歯を見せて無邪気にはにかむその顔は、さっきひとつの命を奪った後になんて見えない、眩しすぎるものだった。
そして蕾は、自分を過大評価しすぎている。と帝人は思った。『優しい』だなんて、天使への憎悪に燃える自分には相応しくない言葉だ。
──けれど、蕾に貰ったその言葉はとても暖かくて、身を委ねたくなるほどに心地良いものだった。
女の子に守ってもらうなんて情けないな、なんて思いながら、
「うん、──ありがとう」
帝人は、色々な意味のこもった感謝を口にする。




