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刀でダンジョン攻略目指してます!  作者: 赤月ヤモリ
第一章・連れてこられて異世界へ
5/23

ロード

 掃除は朝のうちに終わった。

 大体元からそこまで散らかっていなかった。


「暇だー」


 つまり俺は昼から夜まで完全に暇人となっていた。


 何をしようか?

 リリアナは八十九層に潜りにいっているし。


 九十層、に言ってみようかな?

 いや、この世界がゲームのと同じならおそらく階層が低い方がモンスターも弱く高くなるにつれ強くなっていくだろう。

 さらに、赤蛇は一日に一回しか使えないおそらくボス部屋にたどり着く前に死ぬ。

 高い層では魔剣サタンがどれほど強いかわからないがあってもおそらく無理だ。

 一発攻撃を受ければ初心者の俺は死ぬだろう。



「んー外は気持ちいい!」


 迷っていても仕方がないので、魔剣サタンを持って街に出た。


 昨日はいろいろとあってあまり街を見れていなかったのでいろいろと見て回る。

 見ていて気が付いたのだがこの世界にも時計があった。

 日本のものとまではいかないがかなり見やすいものだ。


 盤面には二十四の印がしてあることからこの世界も一日二十四時間というところは日本と同じのようだ。

 異世界なのだからもっと針の棒がグニャグニャな奴とかが良かったのだ……まあ、見やすさを重視するよなあ普通。

 腕時計との時間にはほぼ誤差はなかった。


 しばらく歩いていると、ある場所に着いた。


 商人の男に連れてこられた場所だ。

 なにかの建物の入り口。

 よく見ていると、転移と言って消えていく人が多くいる。


 ここがロードの入り口なのだろうか?

 一度ロードにも行ってみようかな?


「転移」


 ためしに言ってみる。

 すると、あの感覚。

 

 来た。

 周りの風景が一瞬で変わりロードのロビーに出た。


「おおおおおお」


 やっぱり不思議な感覚だ。


 とりあえずいろいろ歩いてみる。

 モニタリングをするといろいろな人がいた。

 いや人だけではなくエルフや、ドワーフまでいた、極めつけは狼人族、火人などというものまでいた。

 火人は聞いたことがないな。

 見た目は完全に普通の人間だ。


 人間観察だけでなくいろんな武器も見た。


 武器に集中すると性能までよく分かった。

 それで気が付いたのだが、赤蛇や魔剣サタンはかなり強い武器のようだ。


 百人ほど見た限り三千を超えた攻撃力を持つ武器を持っていたのは一人しかいなかった。


 なるほど、だから赤蛇は規格外刀というおかしな名前なのか。

 攻撃が八十万もあれば確かに規格外だ。


 ジョブも見たがやはり冒険者が圧倒的に多かった。


 さて、いつの間にか冒険者鑑賞会となっているが、一度どこかの層に入ってみよう。

 リリアナは八十九層に行くと言っていた。


 もともと行く気はないが、サボっていると言われて追い出されても困るので鉢合わせしないように行動しよう。


 あれ?そういえばどうやって各層に入るんだ?

 周りを見るすると明らかに地名ではないことを言っている人物がいた。


「五十層へ」


 その人物はそういうとその場から消えた。

 なるほどそうするのか。


「一層へ」


 そう言うと壁は同じだが廊下のようなところへ出た。

 しばらく歩くと、分かれ道。


 おお、本当にゲームみたいだ。

 右に曲がってしばらく行くと。


ゴブリン LV1


 敵は漢数字じゃないのか。

 こっちの方が読みやすいから人間もこうしてほしい。


 とりあえずサタンを抜く。


 ゴブリンが右手に持つ棍棒を振り上げ殴りかかってくる。


 ブサッ!


 横に一閃すると一撃で死んだ。

 弱い!

 どうやら第一層ではサタンは強すぎるようだ。


坂上 雅紀 HP、百

装備品、規格外刀 赤蛇

ジョブ、勇者

持ち物、魔剣サタン


 装備品はサタンになっていない。

 装備品ではなくても使えるのか?

 それとも、本当にここでは強すぎるのか。


 だか、どうしても装備品を赤蛇から変えることは出来ない。


 なぜだ?


 この時俺は完全に油断していた。

 ここはロード、人を襲うモンスターがいる場所。


「ぐぁ!」

 

 何だ!?


 いきなり後ろから攻撃を受けた。

 モニタリングの効果がまだきれていないので自分のHPがわかる。


坂上 雅紀 HP、二十四


 なに!?

 今一撃受けただけだぞ!?


 振り返る。


 そこにいた生き物。

 尖った牙。

 大きな角。

 日本人なら誰でも知っている。

 昔話にも登場した、そう鬼だ。


「グルルルルルル!」


 大きな金棒を持ってそこに立っていた。

 その金棒には血。

 俺のものだ。

 今、それで殴られたんだ。


 鬼はもう一度金棒を振り上げる。


 まずい!

 痛みで動けない!


やっぱり元引きこもりが調子にのったのが悪かったんだ。

 指もなにも動かない!

 なんで!

 嫌だ!こんな所で死ぬなんて!


 それでも体は動かない、もう、痛みで動かないのか恐怖で動かないのかわからなくなってきた。


 最悪だ。


「ファイア、エクスプレスッッ!」


 突如、目の前の鬼が烈火の炎に包まれる。


 な、なんだ!?


「大丈夫ですか!?」


 燃え盛る鬼の横を通って一人の女の子が現れた。

 おそらく年下だ。

 結構、というかかなり可愛い。

 黒い髪は肩のあたりで切られていて両目は薄紫のきれいな瞳だ。

 服はファンタジーの世界でよく見る、というかロビーでも多く見た革製のコートのようなものを羽織っている。

 何ていうか、日本だったら厨二乙!と言われそうなものだが、この世界に来てそれは集団心理の一種だったのだなと実感していた。


「あ、ああ、大丈夫だ。……ッ!」

「ひ、ひどい怪我じゃないてすか!速くこれを飲んでください!」


 そう言って差し出されたものは何かの瓶だった。

 これは?


モニタリング


大回復ポーション


 ポーションか。

 ありがたく貰っておこう。

 一気に飲み干す。

 味は、うん。飲み物じゃないしな。


 自分のHPが全回復する。


「ありがとう、助かった、でも今の攻撃は?」

「私、冒険者と魔法使いのジョブを持っているんですよ。あとお礼はいいですよ、ロード内なんですから、困ったらお互い様ですよ」


 優しい人だな。

 モニタリングで見てみる。


ユイノ、火人族 HP二百/三百四

 装備品、神木の杖、暗黒ローブ

 ジョブ、冒険者、魔法使い


 二つ目のジョブが見えたのは、リリアナ以来初めてだ。

 どうやら、近づかないとわからないようだ。

 武器の性能がわかるのも集中したときだけだから、おそらくそうだろう。


「一度、ロビーに戻りましょう。襲われたら一度気を落ち着かせるのが良いですよ」

「そ、そうだな。すまない、って、あれ?足が、はは、おかしいな」


 ダメだ、腰が抜けて立ち上がれない。


「大丈夫てす。落ち着いて、深呼吸してください」

「すーはー、すーはー」

「手に捕まって、一気に引きますよ。せーの!」


 た、立った!雅紀が立った!


「さっきから、本当にすまないな」

「だから、いいですって」

「じゃあついてきて下さい。って、手、離してもらえますか?」


 言われて自分でもびっくりした。

 差し出された手を強く握り続けていた。


 離さないと。


 でも、手は力を緩める気配はない。


「ご、ごめん!でも、離れないんだ!」

「わかりました。でもロビーまでですよ」

「あ、ありがとう、迷惑かけてすまない。俺はマサキだ。君は?」


 名前は知っているが聞いてもいないのに名前を呼ぶのはおかしい。


「私はユイノと、言います」

「ユイノ、本当にありがとう、俺、ロード初めてだったから」

「そうなんですか。でもロードに来るのに防具無しは危ないので次からは気をつけてください」

「そうだな、気を付けるよ」


 他愛も内話をしているとあっという間にロビーについてしまった。

 本当は重要な話もしていたが。


「何度も言うけど本当にありがとう」

「そうだね、じゃあ今度何かおごってください」

「わかった」

「それじゃあ」


 そう言ってユイノは消えていった。


 ……しまったー!恥ずかしい!

 年下に対してあんな……。

 くあッ!

 やばい!

 うおおおおおお!!


 ふぅ…

 過ぎたことでもだえていても仕方がない。


 これからどうしようか?

 帰ってもいいのだが……

 ロードに入って年下の女の子に助けられてビビりながら出てくる。


 こんなのは俺のプライドがこれを許すはずがない!

 というのはただのいいわけだ。

 実は、先ほどユイノと話していて五十層には、面白いモンスターがいると言われたのだ。

 ユイノは強いパーティーメンバーを仲間に入れてから行ってみてくれと言っていたが。

 無理です!行ってみたいです!


「五十層」


 そう言って俺は興味本位で五十層へ飛ぶ。


 ロード五十層、廊下


 壁やほかの作りがまったく一緒だから飛んだかどうかは不安になってしまう。


 装備を見る。

 規格外刀 赤蛇の文字がしっかりとある。

 試してみるか。


ジョブチェンジ!


 そう強く意識すると、


 勇者から次のどれかにジョブを変更しますか?

冒険者、商人、剣士。

 

 これも、ユイノと話していて気付いたことだ。


 装備が、変更できないと言ったら、一瞬よく分からない、といった顔をされたが、答えてくれた。

 ユイノ曰く、ジョブが関係する時があるらしい。

 噂程度の、話らしいのだが。


『ロードの入り口で自分のステータスを確認する際に装備品に持っている武器とは別の名前が表示されるという話は聞いたことがあります』

『ロードの入り口でステータスが見れるんですか!?』

『え!?』

『え!?』

『知らなかったんですか?』

『なにぶん、田舎者なので』


 そうなのか、あの建物の入り口のようなところでステータス確認ができたのか。

 まあ、知っても俺にはモニタリングがあるからあまり関係ないが。


『そ、そうですか、でその時にあったことなんですけど、ジョブを変更したら持っていない武器の名前が消えて、持っていた武器の名前が表示されたというのを聞いたことがあります』


 なるほど、そういえばジョブ取得方法の判明というのをあんまり使っていないな。

 ジョブ変更はメルクスがどこでもできるようにしたと言っていたから普通は出来ないのだろう。

 俺、なんか優越感!



 ためしに冒険者を選択してみる。


坂上 雅紀 HP百

  装備品、魔剣サタン

  ジョブ、冒険者


 本当だ、規格外刀がどこかへ、きえて……


 って、どこ行った!?


 ジョブ変更をもう一度する。


ジョブ、勇者


坂上 雅紀 HP百

  装備品、規格外刀 赤蛇

  ジョブ、勇者

  持ち物、魔剣サタン


 よかったぁ。

 俺は心底安堵する。


 どうやら勇者の時のみ出現するようだ。


 ジョブを冒険者、装備をサタンにして五十層を進んでいこう。


 出てくるモンスターは強くなっていた。

 強くなっていたが気をぬかなかったらサタンで数発だ。


 やっぱりこの剣は強い。

 面白いモンスターとはどういうものだろうか?


 しばらく、歩いていると、見たことのないモンスターが出てきた。


「ぶふぉ!」


 ダメだおもわず吹き出してしまった。


 スカートをはいた全身真緑のおっさんだ。

 見た目は本当にそうだ。

 かなり、おかしな恰好をしている。


「おっぱいどーん!」


 なんかしゃべった!

 股間を触りながら何かを叫んでいる。


「おっぱいどーん!おっぱいどーん!」


 日本、いや地球ならpから始まる治安を守る正義の味方に捕まっていただろう。

 変態だ!

 ユイノめ、これを面白いというからにはあいつ下ネタオッケーな感じの奴か!


「おっぱいどーん!」


 さっきから叫ぶばかりでまったく攻撃してこない。

 なんだこいつ?

 すると、


「ガルルルルル」


 後ろから、うなり声が聞こえてきた。

 振り返ると、オオカミのようなモンスター。カノンウルフ。

 背中に銃口のようなっものが付いている。

 攻撃はそこまで早くないので避けてからサタンでとりあえず沈める。


 どうしてこのタイミングで……。


 まさか!?


「おっぱいどーん!おっぱいどーん!」


「クルクル、クルクル」

「ガルルルルル」

「ジー、ジジ」


 五十回層で倒したモンスターだ近くにいたのがおびき寄せられたのだろう。

 この、変態おっさん、(名前は、イケメンボーイと表示されている)はモンスターを引き寄せるのか。


 まずい!とにかく変態をサタンで真っ二つにする。

 五十層で戦ったモンスターは常にうなり声か、音が何か出ているので不意打ちされる心配がなく動きが遅いのでだいぶ楽に戦っていると思っていたがこれはまずいかもしれない。

 やっぱ、ユイノの言うことを聞いて強い仲間を手にいれてからくるんだった。

二度の奇跡は起きない。

 ここで死ぬかもしれない。

 でも、


「それでも!ここで死ぬわけにはいかねーよ!」



「はぁ、はぁ」

 

 何とか、勝った。

 一回かすっただけでHPの半分持っていかれてビビったが大丈夫だった。


 意外と、何とかなるもんだな。


 そう安心した直後。


「おっぱいどーん!」


 少し離れたところから、イケメンボーイの声が聞こえてきた。


「だ、誰か!近くにいるなら!近くに誰かいるなら助けてください!」


 誰かが、襲われている!?

 助けに行くべきか。

 でも、助けに行ってもし数が多くって俺まで死んだらどうする?

 赤蛇を使えば何とかなるかもしれないが、HPが一の俺をほおって行かないと、いう確信も得れない。

 ここは、悪いが見捨てさしてもらおう。


「誰か!、いや!近づかないで!」


 ダメだ、流されるな!

 自分を律しろ!

 そうだ、夕凪のことを考えろ。

 俺は、あいつに会うために生きなきゃいけないんだ!


「やだよ……死にたくないっ!助けてください……!」


 くそ!

 見捨てるなんてやっぱできるか!

 俺はジョブを勇者にし魔剣サタンを握りながら声のした方に向かう。


 向かうと行き止まりの壁に一人の女の子、っていうかユイノだ。

 ユイノの周りにはざっと三十ほどのモンスター。

 多すぎだろ!

 魔剣サタンでは無理だ!

 捌ききれない!

 やはり勇者にしといて正解だった。


 しかし、助けに来てよかった。

 助けにきてなかったら、俺は後悔していただろう。


「ユイノ!大丈夫か!」


 大きな声でユイノの安否を確かめる。


「マ、マサキ!?何してるのですか早く逃げて!」

「女の子おいて逃げれるか!助けてやるから待ってろ!」

「な!あなたでは無理です、命は粗末にしてはいけません!」


 俺だってこんな危ないことしたくはない、でも、もう知り合った人間を見捨てるほど俺は落ちぶれちゃいねぇ!


「黙ってろ!それより、ポーションまだあったら用意しといてくれないか?」

「え?」


 あいつなら、大丈夫だ!

 HPが一になっても見捨ててくれるなよ!


「出てこい!規格外刀 赤蛇!」


 覚悟を決めろ俺、痛くても二十秒間耐えて動くんだぞ!


「行くぞ!」


 勢いよく抜刀する。


「ガアァァアアアァアアアッッ!!」


 痛い、またあの感覚。

 でも、今回は前回のように運に左右されるようじゃだめだ。

 痛くても!


「動けえええええええええ!!!」


 横に一閃。

 赤蛇はリーチが長いので当たるには当たるがギリギリという感じだ。

 だけど……。


 ブシャッ!

 かすっただけでモンスターが次々と破裂していく。


 ほんと、この刀は規格外だな!

 だけど……さいっこうだぁ!


「うらああああああああああああああ!!」


 無茶苦茶に振り回す。

 そうだ、急所に入れる必要はない。

 二十秒以内にすべてのモンスターにこの刀が触れればいい。


 どんどん破裂していくモンスター。

 生暖かい返り血で濡れてしばらくすると寒くなり、それを補うように次々と血が降り注いでくる。


「うわ!」


 しまった!

 目に入ってしまった!


「ユイノ!あと何匹だ!」

「あ、あとは、イケメンボーイ一匹です!場所は真後ろです!」


 赤蛇はあと五秒をきった!

 一か八か。


「死ねぇ!」


 真後ろに突っ込んでいく。

 刀を振り回す。


 すると、


 サクッ


 あ、当たった!


 い、急いで鞘に納めないと。

『二十秒以上鞘から抜いていると死ぬから、気を付けて。』


 神の言葉を信じるなら急げ!


 俺は自分でも驚くほどの速さで左手に持っていた鞘に納める。

 まるで何十年も修行した達人のような軽やかな動きだ。


 ペタペタと体中を手で触る。

 体に変化はない。


「……あー、死ぬかと思った!」

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