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刀でダンジョン攻略目指してます!  作者: 赤月ヤモリ
第一章・連れてこられて異世界へ
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coming this world

 俺はそっと自分に問いかける。


 この世界で何が楽しい?


 ……なにも楽しくない。


 この世界で何が嬉しい?


 ……なにも嬉しくない。


 親も兄弟も同級生も先生も誰も俺を見てくれない。


 くそっ!くそっ!

 今まで頑張ったのに……。

 勉強すれば楽しい人生がおくれるって言ってたのにッ!

 なんも楽しくねぇ!


 小学校の時百点取っても、楽しくない!

 中学の時学年首位を取り続けても楽しくないッ!

 高校でも、学年首位を取り続けたッ!なのにッ!


 俺はまったく楽しくない。


 だから、俺に勉強すれば楽しい人生をおくれるといった人物に会って、言った。

 その人は小学校の先生、小学一年の時の担任。


 覚えていなかった。記憶の片隅にも無いと言われた。


 くそっ!死ね!死ねよ!全員死んじまえよぉ。

 返せよ俺の努力!


 あー、どっか楽しいところに行きてぇ。



 パソコンのモニターから発せられる光だけがこの部屋の中を照らす。

 窓をカーテンで覆い、薄暗くした部屋で真昼間から大学にも行かず俺は引き籠っていた。

 俺は東京にあるアパートで独り暮らしをしている。


「うわ、ついに来た!meidoの新作動画」


 パソコンのモニターに映っているのはエロ動画。


 ちなみに引き籠ってはいるが俺はオタクではない。

 定期的に美容院に行って誰に見せれでもないがセンスの良さそうな店員の兄ちゃんに『お任せで』と言っている。

 お任せを頼む客が少ないのかその兄ちゃんにはもう顔を覚えられている。


 話はそれたが本当に俺は二次元には興味がない。

 可愛い絵だなあとかは思うが、まあ、アキバとかにいる人たちとは違うと自分で思いたい。


 現に今見ている動画も三次元の物だ。


 これは俺のお気に入りのサイトである。(もちろん十八禁である)

 このサイトは一般人でも動画を投稿することが可能で今見ているのが俺のお気に入りの投稿主meidoである。

 一言でいうと、エロい、とにかくエロい。


 名前の通りメイド物が大半だ。

 メイド服を着た淫靡な雰囲気を放つ美女が主人に対してご奉仕と言って行為に持ち込んでいる。

 ……他にも、お仕置きなどのものもある。


「今回の作品もなかなか……ん?」


 meidoの動画を見ていると俺のアカウントに通知が来ていた。

 通知のアイコンをクリック。開くと、『メールが一件届いております』と書かれた文が表示された。その文をクリックすると届いたメールが出現する。


『いつも、meidoの動画をご視聴いただきありがとうございます。

 突然で申し訳ないのですが、以下のURLの質問に答えていただけますか?』


 これは運営か?

 いや送り主のアカウントは運営ではなくmeidoとなっている。

 おそらく本人からだろう。

 どうやって、大勢いる視聴者(リスナー)の中から俺のアカウントを見つけ出しのかはわからないが、まあ、来たものは仕方がない。


 今、まさに目の前の画面で淫らに男と絡み合っている人物からのメールだ。

 俺は貼られていたURLを躊躇なくクリックしそれを開く。


『質問1

 名前、性別、職業、家族構成。』


 おいおいふざけすぎだろう。

 誰がこんなものに答えるというんだ。

 幾らファンにとはいえ、こんなことを聞いてくるような人物だったとは。


 下にスクロール出来たので、行う。まだあるのかと思いながら……。


『質問2

 もし別の世界に行けるとすればどうしますか?』


 今度はなんだおかしな宗教にでも誘っているのだろうか?

 でももし、行けるなら、か……。

 こんなに面白くない世界よりもっと面白くて、そうだなぁ……スリリングなところだったら行ってみたいかもしれない。

 あくまでもし、の話だ。


 カップを右手に持ち紅茶を口に含みながら質問を見ていく。


『質問3

 この世界で今のあなたの生きる楽しみをmeidoでの自慰行為以外で答えてください。』


 ブッフォッ!

 おもわず口に含んだ紅茶を吹き出してしまった。

 いけないいけない。


 急いで吹き出したものを手元にあったティッシュで拭く。

 なぜ手元にあったかは、状況から察してほしい。


 袖で口元を拭いながらもう一度読む。


 この世界で今のあなたの生きる楽しみをmeidoでの自慰行為以外で答えてください


 なんてことを聞いてきやがる。

 meidoでの自慰以外でもいくつもありますぅ!

 えーっと……。


 すいません。ありませんでした。


 というか、本当に何を聞いてくるんだmeidoは!?


「これは、どういう意味ですか?っと送信」


 送信とほぼ同時に返事が返ってきた。

 返ってきたメールには質問に対する答えが書いてはいなかった。

 その代り、


『あなたにこのゲームをお勧めします。』


 という文章と、一つのURLが貼られていた。


 なんだこれ?

 URLをよく見ると……


「か、カミング、ディス、ワールド?」


 URLのアルファベットを読む。


 meidoはこのURLをゲームと言って送ってきた。

 もしこのURLがゲームサイトのものだとするなら、なんて安直な名前なのだろうか。


「これは、なんだ?っと」


 ピコンッ

 またすぐに返信が来た。


 早すぎだろ。

 開く。


『ウイルスの類は入っていません。プレイしてみてください。


  あなたの人生が楽しくなりますよ。』


 この言葉でURLを開きたくなるのは俺が厨二病患者だからなのだろうか。

 まあそれでもかまわない。

 だまされて、ウイルスを流されても構わない。

 もう、俺は楽しい人生をおくれる可能性が一パーセントでもあればそれを選ぶ!


 カチッ


 ガーガーとパソコンが大きな音を立てる。


 やはり何かのウイルスだったのだろうか。


 そんな疑問を抱きつつページが変わるのを待つ。

 ガーガー…音が静かになり、画面が変わる。


 -coming this world-


 なんだかファンタジーな絵を背景にゲームの画面が現れる。


 どうやら本物だったようだ。

 適当にカチカチと画面を進めていく。


 内容を見ている限りではなかなか面白そうだ。

 絵も綺麗なようだし。

 偽サイトだったらここまで凝らないだろう。


「面白そうなゲームを紹介してもらった。ありがとう。っと」


 またすぐに返信。


『いえいえ質問はもういいのでぜひプレイしてください。あなたが好きな面白く てスリリングな世界ですよ。』


 なんだ質問はいいのか。


 いや待て?

 ……俺、スリリングな世界がいいって答えたっけ?


 まあいいか!わからないことを考えても仕方がない!あとでmeidoに聞けばいいだけの話だしな!


 さて、ゲームを始めてみようか。


 『ゲームスタート』と大きく書かれてあるところをクリック。

 パッと画面が変わり『キャラクター設定』と書かれた画面が出てくる。


 あれ?アカウント登録とかはいらないのか?


 俺はネットゲームをしたことがないから知らないが、こういうものはアカウントがないと出来ないと聞いたことがある。

 まあ、俺の情報が間違っていただけだろう。


 特に迷わずキャラ設定を進める。


氏名・(苗字)(名前)  性別・


 どうやら、名前は苗字も入れるようだ、こういうものなのか?

 何となくかっこいいのを考えてみるがいいのが思いつかなかったので自分で本名を入れる。

 特に困ることはないだろう。

 むしろ慣れ親しんだ名前だ。逆にこっちのほうが良いということもあるかもしれない!


 ……身バレしなよね?


氏名・坂上(さかがみ) 雅紀(まさき)  性別・男


 カーソルを次へ動かすと、


年齢・


 年齢なんてものも入れるのか。

 もうこれがアカウント登録じゃね?


年齢・18


 と打ってふと思った。

 急いでカレンダーに近付き今日の日付を見る。


 今日って俺の誕生日じゃねえか!

 マジかよ……。

 はあ……やんなっちゃうぜ。

 誰からも祝われないというのは別に珍しくない。

 でも、自分で自分の誕生日忘れてたっていうのはなぁ。

 まあいいか。

 おめでとう俺!


年齢・19


 本当にこれはアカウント登録ではないのだろうか?

 年齢を書き換えながら再度思う。


 キャラクター設定を完了する。


 ありゃりゃもうこれで終わりかよ……。

 アカウントというのはは設定はこれだけなのかと疑問を抱きつつもそのアイコンをクリックする。


 すると、


 初回ボーナス!


 ……?なんだこれ?


 ネットゲームをプレイしたことのないあなたに初回ボーナスプレゼント!


 おあ!あれか!

 あまりに弱いと序盤で進めなくなり、やる気がなくなってしまうというものを 阻止するためのものか。

 こういうのはもうちょっとわかりにくくしてほしいものだ。

 だが、せっかくなのでもらえるものは何でももらっておこう。

 何があるのか、カーソルを動かす


「ボーナス武器、ボーナススキル、……ってこれだけかよ!」


 もうちょっと鎧とか防御系も欲しかったな……

 まあ、ぜいたくは言うまい!


 ボーナス武器のアイコンをクリックすると十個ほどの武器の性能が書かれた文と画像が出てきた。

 どうやらひとつ選べということのようだ。


 攻撃力八十万とか、俊敏性十倍とか実際にプレイしていないからよく分からない物が多い。

 これは……初心者を思ってのことだろうが、別のものに運営は変えるべきだと思う。

 それか、せめてチュートリアルを終えてからするべきだ。

 まあ、こうすることで、ずば抜けて強い物を選べなくしバランスをとっているということなのだろうか。


 とにかく攻撃力八十万がずば抜けて攻撃力が高い。

 デザインも長めの日本刀といった感じで非常に好みだったのでこれを選択する。


 次はボーナススキルを選択する。

 攻撃力二倍、防御二倍、目のゲーム化、仕事(ジョブ)の取得方法の判明、などわかりやすいものから、わかりにくいものまで、幅広く存在した。


 この中から二つ選べと書いてあった。

 二つもくれるのか、運営太っ腹!


 スキルを一つ一つ事細かに見ていく。

 この世界にはジョブというものがあるのか、確かにそんなゲームがあると聞いたことはある。

 取得方法かググってもいいが……一回一回面倒かな。


 俺はめんどくさいものが嫌いだ。

 よし!一つは仕事の取得方法の判明というものにしよう。

 あと一つ選択できるが、攻撃力はもういらないだろう。

 となると問題の防御力だな。

 防御力を強化しようと防御力二倍にカーソルを合わせようと思ったら。


 ピンポーン


 びくっ!

 カチ。

 あ、ああああ!

 目のゲーム化というものを選択してしまった。

 急いで戻さないと……。

 もう一度カーソルを動かそうとして気づく。

 右上にタイマーがあった。

 おそらく選択が可能な時間を表すもの。


「……一、ゼロ」


 なぜか、一とゼロだけ音声を発した。と同時に画面に『選択を確認しました。』


 くそぉ!


 悔しいが終わってしまったものは仕方がない。

 少し落ち込みながらチャイムのなった玄関へと向かう。


 宅配便だった。

 誰からかと思えば、妹からだった。


『誕生日おめでと。私が選んだのじゃないけどコレあげる。つけたら写真送ってよね。もう一度言うけど私が選んだんじゃないんだから!』


 あ、なんだか嬉しい。

 妹でも自分の誕生日を祝ってくれたのは嬉しかった。

 おもわず泣きそうになる。


 中身は俺の好きなメーカーの時計だった。


「これ……」


 知っている。

 この時計はまだ一緒に暮らしていたころに俺が欲しいとぼやいていたものだ。

 値段は今では7、8万円したはずだ。

 女子高生の妹が買うには高すぎるものだ。


 俺の誕生日を覚えていてくれて、それで祝ってくれる人がいた。たとえばそれが妹でも……。

 あぁ!嬉しい。本当に嬉しい。

 すぐに埃のかぶったスマホを起動させる。


 その時パソコンのモニターをチラリと見るとロード中と書いており。

 数字は五十パーセントにもたっしていない。

 かなり時間がかかるようだ。


 スマホで写真を撮りありがとうと、一生大事にする。という文章を付けて送った。

 自撮りはなかなか恥ずかしいものだということがわかった。


 撮った写真を見ると泣きそうなくらい喜んでいる俺。


 うわ!ぶっさいく!

 それでも……ほんとに喜んでんな俺。


 返信はすぐに帰ってきた。


『これで、夕凪とお揃いなんだから!』


 夕凪は妹の名前である。


 どういうとだ?と思いながらも添付された写真を見ると恥ずかしそうに顔を赤くし送られてきた時計と同じものを腕に付けている妹。


 ぐっはぁ!これは萌えるやろ!


 最高画質で印刷してラミネート加工をする。

 そして、その写真を持ったままスマホでもう一回写真を撮る。


 この写真を宝物にさせてもらう。と文を打ち写真を添えて送信。

 すると……。


 ピリリリリ、ピリリリリ

 設定をいじっていないので初期設定のままの着信音が鳴る。

 もちろん妹から。


「はい、もしもし?」

『もしもしじゃない!い、いったい何のいやがらせよ!』


 マイクの近くで叫ぶな。


「えー別にいいじゃんかー、減るもんでもないしー、あと、兄ちゃんとおそろでそんなに嬉しいか?」

『な、ば、馬鹿なこと…ま、た、確かにそうだけど……じゃなくって!……あ、そ、そういえばもうすぐゴールデンウィークだね!』


 もうそんな時期か、引き籠っていると季節を忘れてしまう。

 というか、話題の変え方が急すぎるだろ。

 おそらくゴールデンウィークに何かあるのだろう。


「そうだな」

『そ、それでさ、その時、あ、兄貴の家、泊まってっていいかな?』

「え!?」

『や!違うからただ着替えとかを持っていくついでに観光したいだけだから!』

「そ、そうか」

『そ、そうだよ別に兄貴と一緒の部屋にいたいとかそういうんじゃ、な、ないんだから!』

「わ、わかったから夕凪。じゃあ待ってる。うまい店が近くにある。連れてってやるから待っとけよ!」

『う、うん、それじゃあ!』

「ああまた今度」


 ピッ


 終始テンションが高かった妹。

 ドクンッ、ドクンッ


 なんでだよ!相手は妹だぞ!?

 何で……何で緊張してんだ俺!


 ピコンッ


 パソコンから無機質な音が出る。

 モニターを見ると、ロードが完了しました。


 おいおい、今までずっとロードしてたのかよ。

 少し、呆れてしまった。


 部屋全体を見渡す。あちこちに散乱するカップ麺やコンビニ弁当の容器。


 はあ……。

 自分の部屋にも少し呆れてしまった。

 このゲームが終わったら部屋を少し片づけるか。

 べ、別に妹が来るからではない。ないったらない!


 画面には『冒険に出る。』と書かれたアイコン。


 じゃあ、ま、最初の一歩は大きくこの世界から飛び出すように……。


「ゲーム、スタートだ!」


 カチ、

 直後まばゆい閃光が視界をすべて埋める。


「な、なんだこれ!」




 そして、気が付くと俺は知らないところにいた。


 ここは……どこだ?

不定期更新です。

次、できるだけはやくします。

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